第3話 〜寄生するコダマ〜
「久し振りやなコダマ君」
おかんが帰ってくるまでにコイツ追い出したかってんけど。
「ご無沙汰してます妙子さん」
「立ち話も何やから上がっていきんか。てっぺ、お茶」
おかん(妙子)は俺の気持ちなど全く無視でコダマを家に上げる。一旦家に上げたら確実にひと月は居着くぞこの男、おかんかてそれは知らん事とちゃうやろが。
「あぁそれと冷蔵庫にたい焼き残ってんねん、それもチンして持ってきて」
「へぇへぇ」
息子を顎で使うなバリケードババァがとまでは言わんが、この人マジで人使いが荒い。使える者なら誰であろうが容赦無くコキ使う、それ考えたらコダマもここに長居せん方が身の為やぞと思うが教えてやらん。俺は帰れ言うたぞ、聞かんかったお前が悪い。
俺はたい焼きを冷蔵庫から取り出し、ガスコンロのグリルにアルミホイルを敷いて並べていく。コダマは痩せ型な見た目とは違い結構な大食漢やからこんくらいすぐに無くなるやろ。電子レンジでもええんやろけど俺はグリルで焼く方が好きや、ふにゃふにゃにならんし熱の通りがキレイなんがええねん。ただ弱火にしとっても中の温度はオーブン以上に上がるらしいから出来を気にしてやる必要がある、タイマーセットも出来るけど放置するんはあんま好ましくない(と経験上思う)。
「てっぺー、久し振りに出前取ろか?」
「それは構へんけど何にすんの?」
「寿司とピザ」
食べ合わせは問題無いやろけど主食に主食やないか。
「寿司屋は電話するさかいピザ屋頼むわ」
「俺は忙しい、自分でやってくれ」
おかんの命令で茶の準備してんの俺やぞ。
「僕がしますよ妙子さん」
「相変わらず優しいなぁコダマ君、家んとこの使えん息子よりよっぽどええわぁ」
いやいや俺結構甲斐甲斐しく動いてまっせ、自分で言うんもアレやけどどっちか言うたら使える息子や思うで。
「はぁ〜子供の頃はそれなりに可愛かってんのになぁ」
おかんは都合が悪うなるとちょいちょいこういうことを言うてくる。いちいち相手にするんも面倒臭いんで敢えて無視させて頂くが。
「てっぺよ、母君様は大事にせねばならぬぞ」
「お前いつの時代の人間やねん」
お前こそここに寄る暇あったら実家に帰れ。
「俺は現代人だ、つい何日か前までチベットで修業してたから多少のタイムトリップ感はあるがな」
修業? 何の悟りもせんとよう修業を終えられた……いや破門されたと考える方が自然の流れ……。
「破門されてないぞてっぺ、非常に優秀な成績で悟りを開いてきた」
修業を学校感覚で語ること自体駄目僧侶やろ。