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第47話 〜松田という男の話〜

 俺らが高校時代に好成績を残せたんはこの男の存在が不可欠やったと思う。松田は外部枠で源泉高校に入学、父方のお祖父さん宅から学校に通うようになった。奴は元々野球が盛んな地域で育ち、中学時代まではクラブチームで主力を張るほどの男やった。

 ‎そんな奴が何で? と思うやろけど、当時まだ中坊やった訳で親の事情ではどうにもならん。松田がかつて住んどった所では公立高校でも二月中に入試を終え、私立やともっと早う終わっとる。当然のように全国的に有名な野球名門校の入学が決まっとったにも関わらず、親父さんの経営しとった会社が倒産して学費が払える見込みが無いいう悲しい事情で諦めざるを得んかったらしい。

 ‎んで入試の遅いこの県で、お祖父さんの自宅から通える唯一野球部のある学校で他を選ぶ事も出来ず、しゃあなしに入った高校で野球を続ける選択をした。

 ‎他県出身やから方言とか地域性の常識とかに慣れるとこから始めんとあかん中で、野球は場違いなくらいに超一流やったから一年の夏から背番号九を付けて試合にもバンバン出とった言うても初戦敗退やけど(俺は背番号十八やったいうんはあくまでも余談)。


 ‎敢えて難点と言えばぎっちょやったことくらいか。元々ピッチャーやったんがバッティングセンスを買われてライトのポジションに収まり、左打ちやったんも田舎の高校にとっては貴重な存在やった。

 松田は決して体格に恵まれとった訳やない、身長こそ百七十後半くらいやけど体の線が細い。けど関節と筋肉が柔らかくて器用に左右に打ち分けられ、守備もそつ無くこなし足も速い男やった。兎にも角にも田舎の高校球児で居るんが勿体無いくらいの野球センスの持ち主で、甲子園どころか初戦突破が夢のまた夢の学校でくすぶっとかなあかんのはチームメイトの俺としても不憫にしか見えんかった。


 こういう奴って頭もええねん。勉強も学年トップクラスの成績で野球以外のスポーツも万能、都会っ子で見てくれも良かったからモテん訳がない、人気は陽ちゃんとほぼ二分しとったと思う。

 んで多分なんやけど、松田は一年の頃から倉橋の事気に掛けとったと思うねん。当時は俺と付き合うとったから遠慮しとったんかな? 俺と別れた後彼女から結構なアプローチがあったはずやのに不自然なくらいに見向きもせんかったもんな。んで結局高校時代は誰とも付き合わず、将来的に今の仕事に携わる事を見越しとったんか農学部のある大学に入り、そこの野球部に所属しとった。

 当然のようにそこでも奴は活躍しとった、在学中に神宮大会に出場してプロのドラフト候補にも挙がっとったくらいや。けどその誘いを蹴って大学院まで通い、野球はそこで辞めてしもた。

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