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第40話 〜サキちゃんについて〜

 彼女がお隣に住む二つ上の幼馴染である事はお話したと思うが、俺にとっては誰よりも身近な女の子で子供の頃はほのかな想いがあったんも否定はせん。

けど当時から俺やない別の男の子を好きなんは知っとった。彼に勝てる気が全くせんかった俺は、何をするでもなくその片想いを心の中に仕舞う事にした。


 サキちゃんが中学に入った頃から殆ど口を利かんくなった。その頃から彼女の周りにはひっきりなしに男がおって、俺の記憶では中学高校と彼氏が途切れた事が無かったん違うんかなと思う。彼女もその頃からベランダの高架を渡ってくることが無くなり、ルミちゃんが自由に歩けるようになるまで長い間使われんかった。


 高校は別の学校やったからますます縁遠くなり、俺は野球一筋な生活を送っとった。ご両親がおかんにぼやいとった程度の話しか知らんけど、一方の彼女は演劇に目覚めてしょっちゅう都会に出歩き、学業よりもアルバイトを優先するような感じの生活をしとったらしい。学校の単位もいっつもギリギリで退学勧告まで出とったっておばちゃんが泣いてはったんは見た事がある。

 ‎一度歳上の恋人がおった時、彼をそそのかして駆け落ちまがいの事をして補導された事もあった。どこでどうやって知り合うたんかは知らんが彼は首都圏近郊の方で既に社会人やったらしく、誘拐レベルの話に発展してしまった事で彼は仕事を辞める事態に追い込まれたそうだ。彼が言うにはサキちゃんが両親にきちんと許可を取った上で出て来たと聞いてると主張してきたらしいが、いくら事実やとしてもそれは大人としてあかんやろという世論が勝って主張は退けられる形となった。

 ‎一人の男の人生を無茶苦茶にしてもサキちゃんは平然とした顔でまた別の男と付き合い始めた。そいつは同じように芝居好きやったようで、ギリギリの成績で何とか高校を卒業してそのままその男と上京した。その頃になると俺の中で彼女は思いを寄せる相手から嫌悪する女の象徴となり、可能な限り見ないよう努めとったようにも思う。


 ご両親としてはもうサキちゃんを勘当扱いにしてルミちゃんを大事に育てとった。しかし忘れた頃にひょこっと帰ってきてしばらく何もせんと家に居座り、見慣れた頃にまたぷつっと居らんくなる。その頃俺は大学生で地元を離れとったし、幸い順当に就職もしたから彼女の事は次第に頭から抜けていった。代わりにルミちゃんが成長し、思いのほか懐いてくれて今では本当の妹のように思える。

 ‎一昨年サキちゃんは女優を辞めて地元に戻ってきた。それで性格が変わるわけでもなく、またどこで知り合ったんかも分からん男と結婚を決めて家を出て行った。

 ‎あの人お姉ちゃんやなかったら絶対関わりたない。高校受験の時期にそんな事をしおったからルミちゃんの心は相当掻き乱されとった。模試も芳しくなかったみたいで高校行かれんかも知れんと相当落ち込んどった時に出た彼女の言葉やった。

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