第2話 〜渡来人の襲撃〜
俺の人生は多分こんな感じなんやろな、多少の波風は立つやろけど平穏無事につつがなく過ごせるんは案外幸せな事なんかもな……なんて思とったのに思わぬ形でそれがぶち壊された。
今日も無事に過ごせましたわぁといつもの様に仕事を終えて帰宅すると玄関先に座っとる一人の男、コイツの顔を見るんは十五年振りやけど中学時代の同級生でひと癖もふた癖もある変わった男である。
コイツは中一の途中で首都圏のどっかから転校してきて卒業と共にまだ首都圏のどこぞの街に引っ越していった。住んどった地区も違うけど芋づる式に俺の幼馴染たちともつるむようになった。社交的な性格かと言われると全然違う、学校では俺以外の人間とは一切親しくせず、教師をも馬鹿にしとる感じやった。俺かて皆とそう変わらん程度の人間やと思うんやけど何故か俺には懐いてきた、理由は未だに分からんが興味が無いというより聞くんが怖い。
「久し振りだなてっぺ、連絡くれないなんてつれないじゃないか」
何言うとんねん? 音信不通になったんお前の方やろが。
「連絡も何も繋がらんけど」
「あぁそうか、その番号のやつインド洋に沈んでるんだった」
お前一体どこで何をしてきたんや? 気にはなるけど聞いてはやらん。聞いたら最後、一旦話し出したら長いから確実に居座られる。
「ケータイ出せ、新しいの入れてやるよ」
「いや別に要らん」
どうせまたどこぞの海に沈めるんやろ? 何回同じ事すんねん面倒臭い。
「まぁそう言うな、俺に会えて嬉しいだろ?」
嫌ではないが格別嬉しくもない、ってか何しに来たんや? コダマ……児玉雄仁はニヤッと笑って右手を差し出しケータイ出せと催促してくる。この男案外しつこいところがあり、こっちが意地を張ると多分一晩越すくらいは粘り続けるだろう。それもまた鬱陶しいのでポケットからケータイを出してコダマの掌に乗せてやる。
「てっぺったら照れ屋さん♪」
「……」
相変わらず何が言いたいんかさっぱり分からん。中学時代からちょいちょい意味不な事を言うてくるので最初の頃はよく振り回されたが、多少慣れてきて受け流せるようにはなってきた。いずれにせよ面倒臭い事に変わりはないしこの会話に慣れるんは正直嫌や。コダマはケータイをちゃちゃっと操作すると一分もせんうちにそれを返してきた。俺はさっさと受け取って奴をスルー、玄関の鍵を開けると一緒に家に上がり込んできた、招いた覚え無いんやけど。
「帰れあほんだら」
言うだけ無駄やとは思ったけど俺お前を相手する時間なんぞ持ち合わせちゃおらんのや。
「てっぺ、パン焼いてくれ」
せめて会話してくれや。