第37話 〜ホンマにやるんですか?〜
接客の手が空いたんかサキちゃんが俺らの席にやって来る。
「てっぺ、ここ来るん初めてやろ?」
いやあんたがここで働くまではちょいちょい利用してましたよ、とまでは言わんけど。
「いえでも結構久し振りです」
「へぇ、ランチやったら……」
「さっき食うてきました、コーヒーお願いします」
「ケチ臭いのうお前」
「それ他所で言わんでくださいよ」
言う訳無いやろ。そう毒吐きながらオーダーはちゃんと取ってる……と思う。
「私は貴女のオススメを頂こうかな?」
瑠偉氏はそれなりのイケメンスマイルでサキちゃんとの接触を図る。今の会話で喜多見さんは既に引いとるけどそれが普通の反応です。サキちゃんは畏まりましたとコロッと態度を変え、嬉しそうにオススメメニューとやらを瑠偉氏に伝えている。こういう時の顔はやっぱり可愛い思うけど今更ときめきは感じひんわ。
「では貴女のオススメを」
と女の子が好みそうなクリームパスタランチ、あんた最初違うの選んでたやんか。
「ありがとうございます、Cランチですね」
「貴女は私の好みを見事に読み当ててくださいますね」
嘘言えやコラ。
「うわぁ嬉しいこと仰いますねお客様♪」
サキちゃんはサキちゃんで三十二にもなってブリっ子を一発かまし、喜多見さんのオーダーも取ってから厨房に引っ込んでいく。Cランチoneコーヒーtwoと聞こえてきたのでひとまずはホッとする俺、注文はちゃんと通った。
「聞いてたほど酷い女じゃないじゃないか」
瑠偉氏は拍子抜けだとでも言わんばかりの口調だ。初見で分かるほど人いうもんは単純に出来とらん。
「猫っ被りの天才なんで、腐っても元女優です」
「通りで。この田舎には似つかわしくない美人な訳だ」
結局行き着くんはそこかいな。
「政治家の妻になるならある程度裏表を使い分けられる女の方がいい、素直な丸腰女だとメンタルが持たないからな」
あぁあんたのお母さん物静かで優しい方やったもんな。とおの昔に離婚なさってるけど確かに政治家の妻向きではなかったと思う、息子二人はどっちも強かやけど玲皇さんの方がまだお母さんに似てるとこはあるんちがうかな?
「ある意味良いんじゃないでしょうか、しかし先生が賛成なさるとは思えません」
喜多見さんは真剣な表情で言う。うん、昼飯前の車ん中で『顔以外クズや』言い切りおったからな。
「親父なら説得してみせるさ」
「私は加勢しませんよ」
喜多見さんはしれっと冷たく言い放つ。あなた結構気ぃ強い言われません?




