第34話 〜もう何やねんコレ?〜
「……」
瑠偉氏はキツめの目を更にキッと吊り上げて俺を睨み付けてくる。こういう時に野球しとった頃の癖が出て俺も一切視線を逸らさない。ここで逃げたら負けや、何と言うかマウンド度胸的なもんが体に染み付いてしもとるな。
「君結構生意気だね」
「やめんか瑠偉、喧嘩吹っかけたんはお前の方や」
睨み合ってた(俺は見返しとっただけや)俺らの間に八杉氏の仲裁が入る。瑠偉氏は邪魔すんな的な顔しとったけど俺は視線を八杉氏に移す。
「済まんな徹平君、瑠偉は少々前衛的な性格しとってな」
また上手い言い回ししおったな。
「いえこちらこそ失礼致しました」
まぁこれ以上揉めるんは面倒臭いんで取り敢えず矛は収めることにする。
「食事の支度が出来ましたえ、ごゆるりとお召し上がりください」
クソ親父もとい店主がある意味完璧なタイミングで懐石レベルの昼食を運んできた。にしてもそのビミョーな京都弁風情何とかならんか? 京都の人が聞いたら多分怒り狂うで。
「ご安心ください有岡はん、あばずれ娘にはさせませんよって」
それ何ていう種類の気遣いやねん? なら最初から店に出すなやと思うが俺が言える立場ではないので黙っておく。ぶっちゃけてしまえばむしろ出てきてほしい、この店彼女で持ってそうな気さえするわ。
「仕事にブランクがありますさかい粗相したらあきまへんし」
「そう言えば久しぶりに見たからな」
「へぇ、行きずり男と結婚してからまともに顔も見せん薄情な奴やで。旦那が死んでやっとや」
結婚したんなら行きずりと違うやないか、その言葉が喉元まで出そうになったので俺は温くなったお茶を飲んだ。旦那さんが亡くなられたんならお一人で子供育ててはるんやな、親コレやしご苦労してそうやなぁと余計な心配が付きまとってしまう。
並べられた料理はまぁ評判ほど不味そうではなかったけど美味そうかと言われるとそうでもない、豪華なんやけど上品やないと言いますか……こういうの案外人が出るんやなという印象の見た目(盛り付け)やなと思う。
「ほな早速頂こか、冷めんうちに食べた方がええやろ」
八杉氏に勧められて俺たちは料理に箸を付ける。ひと口入れたがう〜ん美味いとは思わん、食えなくはない程度。八杉氏は平然と食うとるけど瑠偉氏はかなり嫌そうにしとる。うん、俺あんたのこと嫌いやけど味覚に関しては同意するわ。けど残すんは食材に対して失礼やと思い、完全に消化試合気分で完食したため腹だけ膨れて気持ちはかえって重くなった。




