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第21話 〜児玉の見解〜

コダマ視点のお話です。

 人の心というものは、一度拗らせると訳の分からない展開を呼び起こすものなのかも知れない。


 ‎陣殿とてっぺの再会は案外殺伐としたものとなった。彼はあの頃と変わりなく接したが、てっぺにはそれがどうも収まりが悪かったのであろう。態度が悪いと言えばそうかも知れぬが、ガサツ女がいきり立つ程のものではないだろう。それでもてっぺは完全に突き放さなかった……恐らく突き放せなかったのであろう、もう少し遼生(うじ)を感じたいと言った時の返答にそれが集約されていたように感じられた。

 ‎ガサツ女は最後までぶちぶちと文句を垂れていたが、彼が姿を消したその後をほとんど見てこなかった身勝手な言い分と言えるだろう。陽平、剛太、啓輔は私よりもてっぺを見てきている分彼女の言い分には賛同出来ぬといった表情を浮かべていた。特に陽平はてっぺにとって最も気の置けない幼馴染であり親友とも言える存在だ、私の知らないことも彼なら知っている可能性もある。

 この中で唯一陣殿を知らないルミ嬢は何だか居心地の悪そうな顔をしていた。高校生は多感な人種であり、ましててっぺに懐いている彼女には彼の存在そのものが不自然なものであったのだろう。後で聞いてみると『どこかで成長が止まってる印象で生っぽさに欠ける人やなと思った』と何とも的を得た答えが返ってきた。


 ‎確かに陣殿にはてっぺが確実に成長している姿をきちんと見せる必要性があった、何を期待していたのかは知らないが、少なくとも彼の中でてっぺは十五歳どころか十歳以下のままで止まっているのではないかという印象すら受けた。それはガサツ女にも共通して言える事なのだが、子供の頃しか知らない者が陥りやすい感情なのであろう。

 ‎その点では私も人の事は言えないのだが、同い年である点と多少の連絡は取り合っていたところが差として出たのであろう。たったそれだけの繋がりでもてっぺの成長、変化はしっかりと感じられるものである。

 このところの奴はすっかり俗っぽい環境に馴染んでしまった感もあるのだが、地方公務員として生きていくには致仕方ないのであろうとも思う。けれど根本的なところは相当純粋な男であり、そこまでは腐っていない事に安心したのでもうしばらくてっぺという男を観察しようと思っている。

 中学の頃から感じていたのだが、一見どこにでも居るごく普通の青年なのに不思議と飽きのこない奴なのだ。私はそんなてっぺが可愛くて仕方がない。近いうちにまたパンを作らせてやるとするか。

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