第14話 〜疑いを晴らしたい〜
俺はそんな彼女の姿が悲しかった。『人の話をちゃんと聞け』幼稚園で習う事が何でええ歳したオッサンに出来ひんねん? 自分の言葉で訴えかけてる彼女の覚悟を何で勝手に踏みにじんねん? 例え親やからって、どこぞの議員先生やからって何してもええんか? うちの親がそんなんやのうて良かったと思うけど、人として基本的な事も出来ん大人が子供に何を言うても説得力なんかあるかいや!
『結局憶測を出てない言うことですよね?』
俺の中で何かが切れた、そっちがそうするんならこっちかて好きにさしてもらう。
『せやな有岡。派手なプリントの半袖シャツってだけで桐山やと決めつけるんは早計でしょう』
先生の意見はごもっともやな。
『桐山以外に誰や言うねん! 今三月やぞ!』
そもそもあんたあの人を知ってんのか? 金子さんがどこの人かは知らんけど、仮に隣町(高校の制服で推察)としてたかだかちょっと変人の十九歳男の知名度が峠を越えるとは思えん。
『しがない田舎町言うたかて余所から来る人もおるでしょ、案外待ち合わせの男かも知れませんやん』
おかんもあの人やと思ってないみたいや、あの人の性格知ってたら繁華街で財布盗むなんてあり得ん。
『これは立派な窃盗事件であり傷害事件なんやぞ。顔見知りやから言うて感情論を持ち出すんは感心せんなぁ』
『せやから警察入れろ言うてるやないの、肝心の本人の言葉を遮るんも感情論違いますのんか?』
八杉氏の言い分をバッサリ切り捨てるおかん、感情論を持ち込んでんのはむしろあんたや。そこまであの人を犯人に仕立て上げたい理由は一体何やねん? とは言え今それを考えてもしゃあない、俺は金子さんの話を最後まで聞きたい。
『金子さん』
そう思うと同時に彼女の名前を声に出していた。彼女は顔を上げて俺の方を見る。
『犯人の顔、見てない仰いましたよね?』
『うん、暗がりん中やったし身長差もあったから。それにシャツのプリントの方がインパクトあって』
金子さんは犯人像を一生懸命思い出そうとしてるようやった。
『記憶が褪せてる可能性もある思います。桐山陣の画像、見てみませんか? 何か思い出せるかも知れませんよ』
俺はポケットからケータイを出してあの人の画像を探すと、初詣に行った際に撮った集合写真があった。最近のもんやとこれになるがいかんせん小さい。あとは秋祭りん時に撮ったハッピ姿のあの人、これやと割かしキレイに写ってるから分かり易いと思う。
俺は立ち上がって金子さんの元に歩みを進める。これを見てからあの人が犯人かどうかを判別してもらおう、そう思っていたのだが八杉氏に道を阻まれケータイを取り上げられた。