第12話 〜中坊にはきな臭過ぎる〜
『どないした有岡?』
担任の先生が俺の声に気付いてくれる。
『大事にされたないんでしたらこの三人は外すべきです』
本音を言えば俺かて巻き込まれたないけど残念ながら金子さんと接点を持ってしまっている。
『いや、なるべく証人が欲しい』
八杉氏の言うてる事は矛盾しとる。
『僕らでは証人になれません』
俺かて影みたいなもんしか見てないのに何の証人にさせる気やねん?
『何を言ってる、君たち現場に居合わせてたんやろ?』
『居合わせた言うか金子さんと面識あるんは僕だけです、三人にとっては多分寝耳に水の話やと思います』
『ホンマなんか?』
先生は三人に問い質す。頼むさっきみたいにとぼけるんはやめてくれ。
『そうですよ、さっきうちの子かて『その人のこと知らん』て』
良かった、助け舟を得られた。顔までよう見んかったけど多分上野のお母さんや、そのまま正直に知らん言うて出てってくれ。
『有岡の言葉に間違いは無いな』
『『『はい、僕らゲーセンから出てません』』』
三人共これ以上の面倒に関わりたない思うんは当然やろ、まるで口裏を合わせたかのように声を揃えて言い切りおった。
『その言葉を信じよう。金子さん、異論はありませんね?』
先生の言葉に金子さんは小さく頷いた。
『ほな有岡以外は生徒指導室に移動や、保護者の皆さんもお手間取らせますが……』
『まぁ無関係の話に付き合わされるくらいでしたら……』
誰かの保護者の呟きと共に三組の親子と担任の先生は第二会議室をあとにした。残された金子さん親子、生徒指導の先生、八杉氏、そして俺ら親子だけになった教室はがらんどうとしとって更に居心地が悪うなったように思う。
『話を元に戻そう』
『おたくが仕切んのかいな』
おかんは露骨に嫌な顔をしてため息を吐いた。
『いえいえ八杉先生に仕切ってもらうんが一番でっしゃろ、先生方やとご都合主義な展開に持ってかれそうですさかい』
金子さんのお父さんらしき男性が厭らしい笑みを浮かべながら八杉氏を擁護する。第三者を入れたい言う意向なんやろけど警察の方が絶対的ええに決まっとる。大事にしてほしないんならそう言えば秘守義務は守ってくれるはずや。先生らかてほぼ無関係やのに卒業生でもない高校生親子が政治家連れて学校乗り込んできた挙句ディスんのかい、生活指導の先生なんて嫌われてナンボやけどこれはあまりにも理不尽やと思う。
『そう仰るんであれば警察が一番公平や思います』
何か釈然とせん……自分でも思うが時々無謀な噛み付き方してまうわ。もう口に出してもたから回収するんは無理やけど。
『子供が余計なこと言うもんやない』
金子さんのお父さんは俺を見下したような言い方をしてくる。それやったら初めからここに呼ぶな、校則違反でこってり絞られてる方がよっぽどマシや。
『子供だろうが何だろうが彼にだって発言権はあります、そちらの希望で呼び付けてるんですからそんな言い方は無いでしょう』
『まぁまぁ落ち着いて先生、大人気無い』
八杉氏の仲裁気取りにも若干イラッとする。大人気も何も話し合いの場そのものが間違うとんねん。
『この状況で大人気も糞もありますかいない。時間の無駄ですよってその子本人に話してもらいまひょ』
おかんは先程から大人しく座っているだけの金子さんに顔を向けてそう言った。