表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/131

第8話 〜ちょっとした事やけど〜

 ルミちゃんとコダマが居らんくなり、パンの焼けるいい匂いが充満するキッチンに一人残された俺はすっかり疲れ切って指定席に腰掛ける。


「はぁ〜何か疲れたぁ」


 俺はダイニングテーブルに体を預けると玄関の開く音が聞こえてきたが迎えに出る元気なんぞ残っとらん。


「辛気臭い顔しとんなぁてっぺ。ほれ、あんこ」


 一旦自宅に戻っていたサキちゃんはさらの粒あんを持って再訪してきた。まぁ持って来たんはええねんけどガチで投げ付けるんはやめてくれ。幸い上手くキャッチ出来たが業務用やからずっしりと重みが伝わってくる。


「どうも」


「ちゃんと持って来たったんやから不味いん作ったら承知せんぞ」


 徒歩一分以内の自宅からあんこ取ってったってだけで何でそこまでのドヤ顔が出来んねん?


「なら脅すんやめてもらえません?」


「その前にええ加減敬語やめろ、いつまで中坊気分やねんワレ」


 そう言や中学に入ると変に年齢を気にして妙な縦社会が暗黙の了解であったなぁ。全国的な事なんか俺らの通うてた中学だけやったんかは分からんけど、当時一つ上の幼馴染陽ちゃんこと河合陽平(かわいようへい)と普通に会話しとっただけで名前も知らん先輩に睨まれた事もあるしな(注釈しとくと陽ちゃんには敬語で話さんとってくれって事前に言われとった)。サキちゃんは二つ上やし異性やから、目ぇ付けられんよう意識して敬語で話しとるうちにすっかり慣れてしもてたわ。


「一応先輩なんで」


「今更もうええわ、てっぺに敬語使われるんモヤモヤすんねん」


「どういうことです? そない変でもないでしょう」


 まぁサキちゃんみたいに身近過ぎる相手に敬語って最初は嫌やった憶えがある。何と言うか変な隙間が出来てしもたような寂しさと言うか……一気に遠い存在になった様な感覚があったように思う。


「そういうことやのうて下手にガキん頃から知っとる分違和感が取れへんねん」


「あぁそういうこと」


 多分サキちゃんも似たような事思ってたんやな。

 

「そういやてっぺ」

 

 ん? 俺は発酵出来たっぽいパン生地を炊飯器から取り出す。


「ルミがコダマを部屋に入れとったけど何する気なん? JKの考えとることはよう分からん」


 JKもそうやけどコダマの考えとることもよう分からん。俺は知らんと答えながら生地を八等分に切り分け、円型に伸ばしてからサキちゃんが持ってきたあんこを包む。


「ルミ居らんから手伝おか?」


「一人でやった方が早い」


 俺はその申し出を断り、作業の手を休めない。


「歳下のくせに態度悪いな」


 家事力壊滅的なサキちゃんにかかったら折角の料理が台無しになるやないか、頼むから食う以外触るな。


「それが気に入らんのなら敬語に戻します?」


「あ”ぁ? 今やめろ言うたとこやないか」


 敬語取っ払うんはええけどさっきからガラ悪すぎひん? 子供の頃はもうちょっと可愛かった思うんやけど幻覚やったんやろか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ