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プロローグ 〜嵐の前兆か?〜

『おにいちゃん、ぼくもたけとんぼやりたい!』


 とある冬の昼下がり、年齢一桁の男の子たちが河川敷で竹とんぼを飛ばして遊んでいた。その中でも特に体の小さな男の子が“おにいちゃん”たちの真似をしたがりそれをねだり始めた。


『ほなこの部分を両手ではさんで……』


 自身よりも大きな男の子たちに竹とんぼの飛ばし方を教えてもらい、早速飛ばしてみるがすぐにポトリと落っこちてしまう。


『なんでとばへんの?』


 おチビちゃんは悲しそうな表情を浮かべて落下した竹とんぼを見つめている。


『最初から上手くはいかんよ“てっぺ”、何事も練習や』

 

 真冬の寒い時期に半袖のアロハシャツを着ている男の子が笑いながら落ちている竹とんぼを拾い上げ、“てっぺ”と呼ばれたおチビちゃんに手渡した。


『れんしゅー? “じんちゃん”もれんしゅーしたん?』


『いや、オレはすぐに出来た』


『ほんま?“じんちゃん”すごいなぁ』

 

『やろ? もっと褒めてくれてええねんで』


 謙遜するという事を全くしようとしないアロハシャツの少年“じんちゃん”を羨望の眼差しで見上げる“てっぺ”。


『“てっぺ”、よう見ときや』


 うん! “てっぺ”は“じんちゃん”の手元をキラキラした瞳で見つめている。彼は手を擦り合わせて竹とんぼをクルクルと回すとふわりと浮いてグングンと高く上がっていく。“てっぺ”はそれを必死に追いかけ、右往左往しながらも落下してきた竹とんぼを見事にキャッチした。


『つぎぼくがやる〜っ!』


 “てっぺ”は竹とんぼを持つ手を掲げて“おにいちゃん”たちに見せてはしゃいでいる。


『川の方に飛ばしたらあかんで』


『ほなこっちむいたらええの?』


 川に背を向けて竹とんぼの軸を両手で挟む“てっぺ”を少々心配そうに見つめている眼鏡をかけた男の子、この二人はどことなく顔立ちが似ている。

 

『せやな、前に飛ばすんやで』


『うん!』


 “てっぺ”は“じんちゃん”の真似をしてみると今度は竹とんぼがふわりと浮く。ところがコントロールの方が上手くいかずあさっての方向に飛んでいく。


『えっ? なんでなん?』


 竹とんぼは子供たちの意図とは裏腹に川の方向に飛んでいき、全員でそれを追いかけていく。“てっぺ”の飛ばした竹とんぼは浅瀬にポチョンと落ちてしまった。

 

『あぁ……』


 “てっぺ”はそれを拾おうと川の中に入ろうとする。


『川に入ったらアカン! あそこなら浅いから兄ちゃんが取ってったる』


 眼鏡少年が“てっペ”を宥め、少年たちの中で最もぷっくらとしている男の子に彼を預けてジャバジャバと川の中に入っていく。


『止めとけ“りょうせい”! 昨日の雨で流れが早いかも知れんぞ!』


 年長っぽい坊主頭の男の子が眼鏡少年“りょうせい”の行動を止めるが、彼はそれを聞かず竹とんぼに向かって歩いていく。

 

『もどってきておにいちゃん! ぼくおとうちゃんとおかあちゃんにあやまるから!』


 “てっぺ”の引き止める声に対し“りょうせい”は余裕綽々の表情で竹とんぼの落下地点に到着した。彼はそれを難無く拾い上げて河川敷で待つ仲間たちにそれを掲げてみせた。


『思ってたよか流れ早そうや……“けいすけ”、“ようへい”、誰でもええから大人呼んでこい』

 

 分かった。浅黒い肌の“けいすけ”と色白赤髪の“ようへい”は川とは反対方向に走っていく。

 ‎河川敷に残っている四人は“りょうせい”が戻ってくるのを静かに待っていた。ところが戻り始めたところで足を滑らせ転倒してしまい、それに反応した坊主頭の男の子と“じんちゃん”が川の中に走っていく。

 

『おにいちゃんっ!』

 ‎ 

 ‎“てっぺ”も付いて行こうとするがそれは引き留められる。彼は泣きながら何度となく兄を呼び続け、三人ともが無事川から上がってくるものだと信じていたのだが……。

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