ケータイ
家に着いて、ふとポケットをまさぐって、ケータイがないのに気づいた。どこかで落としたのかな。誰かが拾ってくれているかも、そう願いつつ、家からケータイに電話をかけてみる。少し間を置いて、誰かが電話をとったようだ。良かった、誰かが拾ってくれている。ホッとしたのもつかの間。
「もしもし。」
それを聞いてゾッとして、私はすぐに受話器を置いて電話を切った。私が聞いた声は、まさしく私の声と一緒だった。他人の空似なんてもんじゃない。高さも、トーンも、全く同じ。結局、あまりに怖くて、私はなくしたケータイを諦めて、新しく買いなおしたのだ。
それから半年ほどたって、そんな事を忘れかけていた頃。学校の帰り道、ふと道端で馴染みのあるメロディーを聞いた。よくよく見れば、電柱の下に私のなくしたケータイがある。小刻みに震えるそれは、どうやら私に着信を訴えかけている。なぜか違和感も感じず、それを手にとって、ケータイに出てしまった。着信元も確認せずに。
「もしもし。」
それを聞いてゾッとして、私はすぐに受話器を置いて電話を切った。私が聞いた声は、まさしく私の声と一緒だった。他人の空似なんてもんじゃない。高さも、トーンも、全く同じ。結局、あまりに怖くて、私はなくしたケータイを諦めて、新しく買いなおしたのだ。