偽物の涙を、宝に
涙すら飲み込む怒りとか、禍々しさとか、ままならない、
まっすぐに届かない理不尽な真実は。
わたしに種を及ぼす。
決めたんだ。
責任を果たすと。
だけど揺れる。
組織や世の中に、
自分が痛みを持って、
『良くしていこう』
と思う人なんて、
本当に本当はひとりも、
いないんじゃないかって。
みんな他人まかせの評論家。
評論家は戦わない。
土俵にあがらず、
側でたたずんでる。
このリングの中に、誰もいない。
審判すら。
それは絶望的疑惑。
夢を見ていた。
人は信じられる生き物だとか、
仲間が大事とか。
夢を見ていたのかな。
こんな夜には疑いたくなる。
録画した動画には、確かに残るんだ。
嗚呼、あたしも評論家のひとり。
嫌だな。
何も変わらないまま、
死んでいくのは、嫌だ。
同じ人間なのに人間に依存する。
そういう嫌らしさを憎む自分も確かにいるのに。
何故なのか。
みんな、痛くて。
痛くて、怒りで、
悲しみで、
笑うわたしは滑稽で、
わたしにしか言えない弱いきみも滑稽で。
みんなも、あたしも、腐ってる。
涙は出ない。
枯れてはいないけど。
封じて、しまったから。
いつか、気持ちを、封じてしまったから。
「頑張りたい」
と涙するきみの横顔があまりに美しくて、
わたしはふいに目をそらす事も忘れたんだ。
夕焼けも何もない、
物が雑然と散らかる淀んだ部屋とくすんだ僕らの脳裏を、
君の涙は貫いてやまない。
窓ひとつないその白い部屋に、
たいようが登る。
くじけてごめん。
君の涙がいつか嘘になっても、
許し続けたい。