表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS能力で友達は救えるか?  作者: TSっていいよね
2/4

1-1 ツインヒューマン

TSって、やろうと思えば、生産性のあるBLじゃない?と知り合いの腐女子とやらに言ったら激怒された。

何……俺、何か間違ったこと言ったのか……

誕生日を祝われるというものは、何度となっても嬉しいものだ。

16歳の誕生日となると、15回目となるだろうか、高校生となって初めての誕生日だ。

だというのに、今のこの状況はなんだろうか、妹は両親に言われ、少しばかり不満な顔をした後に、自分の部屋へと送られ、両親は、ケーキの乗った机を挟んで、肩を並べて俺と対面していた。

真剣そうな表情だ、こちらも無言で茶化すことなく見返し、次の言葉を待った。


「ツインヒューマンって知ってるかしら?」


「あぁ、種族の?世界史でたまにでてくるよね」


そう言って思い出してみる、ツインヒューマンの特性として、性別を逆転さ せることができるらしい、そして逆転した姿は、とてつもなく美しいと書か れていた。


「性転換した後の容姿がすごい綺麗で、権力者がこぞって手に入れようとしていた、だったような……」


「えぇ、正解よ、ツインヒューマンは性転換能力を使うと、男なら美女に、女なら美男子に変わることになるわ、世界史をみれば、ツインヒューマンは捕まえられ、売り買いされていた歴史なんていくらでもでてくる、現代ではどうなっていると思う?」


「うん?歴史上のもので、全滅したんじゃないの?」


「生きているわよ、しっかりと、亜人の権利というものが法律に掲載されて から、ツインヒューマンは奴隷として売り買いされなくなったわ、でもね、 価値が高いのは事実よ、権力者は手に入れようとする、そこで国は一つ措置 を取ったわ、ツインヒューマンは名前の通り、性転換能力以外は人間と見分 けがつかないの、だから種族欄にはヒューマンと書けるようにした、そして 成人した時、性転換能力を手に入れることになるから、親の義務として、自 分の子には、己がそれであることを知らせなければならない」


「成人、ねぇ?」


「それで、ツインヒューマンの成人は16歳なのよ」


――え?

思わず母を見る、頬杖をついている、真っすぐ視線を送る俺に、ニッコリと 笑みを返した。

目が言っている


――――察した?



「い、いやいや、伝説みたいなものだ――」


言葉を待たずして、両親が目の前で変化した、音も何もなく、粘土で形作るようにぐねぐねと変わり、彼らは性転換した。

父は、妙齢の美女だ、色気というものが半端無く、思春期の心臓に悪い。

母は、街を歩けば、十人中十人は振り向くであろうイケメンだ、ガタイも良く、周辺がキラキラと光っているように見えた。


「わかったかしら」


母は、男の声でこちらへと問いかける。


「――はい……」


俺はそういうしかなかった。


「よろしい、それじゃあ性転換能力を扱えるようになること、ふとした拍子でそうならないようにすること、これが必須よ」


びしぃっ!と人差し指を突き付けて母は宣言した。


「できるまで学校はいかせない、今日は十分やってみましょう、美菜ちゃんも部屋で待っていることだしね」


「……わかった、で、どうすればいいんだ?」


「とりあえず私は、目を瞑って自分のベールを剥ぐような感じかしら?」


「脱皮ね」


「言い方の問題なだけだけど、ものすごく納得いかないわ……」


ぼやく母を無視して、父を見た。


「僕も同じかな、基本は、生物の羽化みたいなものを想像してほしい」


そう言われて、その通りに目を瞑ってみる、そして想像するのは、自分の体に皮が張り付いていて、脱ぎ捨てる自分――その瞬間だ、ぐにゃりと、痛みはないが自分が変わる感触がして、目をパチッと開けた。

――座高が低い、両親が少し大きく見えた。


「才能があるわね……」


「わぁ!かわいいね!」


下を見ると、胸から突き出たものが邪魔をして、膝が見えない、それを見て、やっと成功したことを実感した。

……二人の称賛の言葉は、普通にうれしくない。


「ちょ、ちょっと洗面所で鏡見てくる」


「美菜ちゃんには気をつけてね」


その言葉に頷いて、洗面所へと向かった。

そしてそのまま鏡の前へと立つ、見た瞬間に、ふっと頬が紅潮した。

美少女が、そこに立っていた。


「こここ、これ、俺か?」


ペタッと自分の頬を触ってみる、鏡の中の美少女も、同じく頬を触った。

腰まである黒髪、大きな瞳は二重でパッチリとしている、肌は透き通るように白い――


「でかいな!」


と、まぁ色々と考えた称賛は、一点で壊された。さすがは思春期、胸ばっかりだ。

着ていたワイシャツは、自己主張の激しい双丘に押され、苦しそうに皺をつ くり、今にもボタンがはじけ飛びそうだ。

そして隙間から、つわもの共の夢である、谷間が垣間見える、やばい鼻血吹き出しそうだ。

服越しに優しく押してみる、ゴムまりのような弾力が伝わり、涙が出そうになる、


――こ、これが、男が求める理想郷――!


と、エベレストの到達くらいの感動が(したことはないが)俺を襲った。

両こぶしを握り締めて、頭上に持ち上げる、無言の勝利のポーズ。

そしてふと、脳裏によぎる、天才的な発想――!


「俺の体だし見てもいいよね?」


誰に行っているのかよくわからない言い訳をして、ボタンへと手をかけた。

そのままプチリ、プチリと外していく、布が擦れる音が聞こえた。無言で、 真剣に、鏡の中の美少女は、その美を崩して、ぐへへと笑っているが。

その時、洗面所の扉が開け放たれた。


「お母さん、時間かかるようならお風呂先はいっちゃうからね?」


ノックもせずして、妹がご入場なされた。


「うおぉっ!?」


「ひゃぁ!?な、……だ、誰!?」


「え?あ、あぁ――」


俺だよ、俺、と言おうとして止まった、このことは成人するまで秘密だ。

つまりは、隠し通さなければいけない、そうなると――


「久しぶりですね、とはいっても、あったのが四歳くらいのころですから、私も記憶があいまいですよね?香奈と申します、貴女は……美菜ちゃんでいいでしょうか?」


知り合い設定で、話を進めていく、


「え、えぇ……」


呆然としながら、美菜は俺の言葉に頷いた。どうやら成功したようだ。

ほっと心の中で息をついていると、美菜は俺の体を上下に見た。


「あ、お、お風呂ですか?なら出ていきますね……あれ?お兄ちゃんの服……?」


――ヤバイッ!


「あ、あぁ、お風呂に入らせてもらいまして!引っ越しで遠くに行ってたんですけど、近くにまた、引っ越してきたんですよ!それで挨拶しにきたんですけど!引っ越したばかりで服がこなくて!それでお兄さんの服を借りたんですよ!」


「は、はぁ……そうなんですか……」


剣幕に押されて、美菜は納得したように頷いた。

何故、中々に危ない橋を渡ってはいるが、言い繕えるのかわからない、頭の中は『フォォォォ!フォワッフォワッ!』という意味不明な言語を話す、役立たずなのだが。


「そういえばお兄さんの誕生日ですね!ご両親に聞きました!」


「はい、でも……少し部屋で待っていろと言われまして」


「美菜、もう大丈夫だって」


「お父さん?」


洗面所から顔を出すと、父が廊下の向こうから声をかけてきた。

ナイス!父さん!母さんの尻に敷かれている日々を見る俺としては、久しぶりに尊敬してる!


「あ、お湯、ありがとうございます」


「気にしないで、ほら、美菜は幼かったから覚えてないかもしれないけど、親戚のお姉さん、安国香奈さんだよ」


「すいません、覚えてなくて……」


「いえ、いいんですよ!」


覚えてるなら逆に頭を心配するわ、と心の中でツッコミを入れつつ、笑顔で対応していく、そしてチラッと洗濯機の上にかけられている、小さな時計を見た。


「あぁ、私、もう帰らないと!引っ越し業者がもうすぐ来るんです!」


パンッと手を叩いて、焦った声でそう言い放つ、そして二人に一礼をした。


「それでは、帰らせていただきますね」


「ケーキ、食べていかないのですか?」


「美菜、用事があるようだし、仕方がないよ、先に行ってなさい、私はお見送りするから」


父の言葉に、美菜は少し考えてから頷く、


「うん、わかった、また会いましょう、香奈さん」


「えぇ、またね?」


そして、俺の返答を聞くと、礼をして廊下の奥へと向かっていった。

危なかった……と、いつの間にか吹き出していた、額の汗を拭って、父を見た。


「ありがとう父さん……」


小声で礼を言うと、父は頷いた。

そしてピッと私の胸元を指した。


「扇情的な恰好、ただでさえ美人なんだから、そういうの気にしないと」


そう言われて、胸元を見る、第三ボタンまで外されている、其れを見て、羞恥心が沸きたち、ボタンを即座に占めていった。


「あと、元に戻るには、脱いだベールを着る、これで大丈夫、性転換はできたし、こっちもできるんじゃないかな?」


そう言われて、先ほどと同じように目をつぶり、言われた通りに想像した。

すると、女の姿に変わる時と同じ感覚がして、目を開け放ち、洗面所の鏡をまっすぐと見ると、いつもと同じ自分がそこに居た。

こうして夜の騒動は終わりを告げた、あとは誕生日祝いをするだけだ。

この時ばかりは、この能力なんて、あまり使うことはないと思っていた、男として生きるだけだし、女の体を使いたい、なんて思うこともないだろう――

その考えは、次の日の幼馴染の言葉により、打ち砕かれることとなる。





いつも通り、眠気で重たい眼をこすり、朝食を食べ、学生服を着て、学校へと向かった。

学校へは約30分、電車通学だが、自転車でも向かうことができる場所にある、地元で有名な、共学共種族制の高校だ。

校門前では、白い翼の生えた天使族と、蝙蝠こうもりのような翼の生えたヴァンパイア族が、笑顔で挨拶を交わす、種族間の垣根を越えた景色を見ることができる。


「はよーっす」


「おはよう、いつも通り眠いみたいね?」


教室へと入って、机の最前列に見知った顔を見つけ、挨拶をする。

真里菜はこちらへと挨拶を返し、呆れた口調で言った。


「うん、まぁ……ちゃんと寝てるから、授業は眠らないけど」


ふぁぁ、と欠伸が自然に漏れ出した。


「そう、まぁそれならいいんだけどね」


「じゃ、俺自分の席で、移動教室の教科書ひっぱりだしてくるわ」


鞄を肩にかけて、そう言って歩き出した。

少し歩くと、見知った顔、暁が座って本を読んでいるのが見えた。


「はよーっす」


「あ、あぁ……お、おはよう」


どもり、かすれた声であいさつを返す暁、最初のころよりは進歩した……と思いたいが、そうは思えない、こちらへと目を合わせてもくれず、少し悲しくなってきた。


「暁、放課後遊ばないか?久しぶりに」


「塾、あるし……」


「おお、塾行ってるのか!どこどこ?」


「岬塾……」


「おぉ、岬塾か、有名だな!俺も勉強やれー!って親がうるさいし、行ってみようかな?」


「えっ、い、いや、その――」


暁が少し顔を顰めた……やっぱ、嫌なのかね、そう考えるとさらに悲しくなってきた。

今日は、もう引こうか、そう考えた時、頭をペチリと叩かれた。


「はいはーい、大沢くん困ってるでしょうが」


真里菜の声が聞こえ、振り向く、手を手刀にして、こちらへと向ける真里菜が立っていた。話を聞いて近づいてきたようだ。

ぐい、と腕をひかれる、来いということだろうと考えて、一緒になって歩き出した。


「んじゃ!」


「う、うん……」


手をピシッとあげて、別れの言葉を投げかける、暁が小さくうなずいてくれた。

そのままぐいぐいと引っ張ってくる真里菜に、遠くにある自分の席へと連れて行かれると、はぁと大げさにため息をつかれた。


「……大沢君と、達也の関係はわかるけど、昔とは違うわ」


「昔のように元気になってほしいんだけどなぁ……」


「話は聞いてるし、そうは思うんだけど、あぁも拒否されているのを突っ込んでいけば、普通に逃げられるのよ、というか……大沢くん、昔の自分を知っている人と一緒に居たくないと思うわ」


真里菜の言葉に、むっとした。


「……なんでだよ」


「昔明るくて、元気な時代があった、そして今、落ちぶれてしまった……酷い言い方だけどね、それで、その明るい時代を知っている人に『変わったね、昔は元気だったのに』と言われるとする……嫌じゃないかしら」


そう言われて、すんなりと吸収されてしまった。

嫌だ、それは嫌だ。


「達也と居ると、言われなくたって、昔と比較してしまうのよ……そうなると、あまり一緒に居ないほうがいいんじゃないかしら、傷、えぐるだけよ……」


自分のことのように悲しそうに、真里菜はそういった。

そう言われて、やっと気がついた。――でも、納得はいかなかった。


「……母親に傷つけられて、ほっとくのは、なんていうか……」


「嫌なんでしょう?……でも、達也じゃ……他人なら、まだ大丈夫だと思うのだけど……」


――俺は、他人にはなれな――うん?


「それだぁ!!」


バァンッと机へと勢いよく身を乗り出し、思わず大声でそう言い放った。

教室中の視線がこちらへと集まり、真里菜がビクリと肩を揺らした。


「え、あ、ご、ごめん、怒らせちゃった?怒らせるつもりなかったのよ?私達也を助けられればと思って――」


ぐわしぃっと、慌てる真里菜の肩をつかみ、真っすぐと視線を向けた。


「ナイスアイディア!」


肩から手を放し、出入り口のドアへと向かう、後ろから真里菜が「ちょ、何なの!?」という声がかかったが、返さずに歩き続け、スライド式のドアを開け放った。


(この時間なら理科実験教室あたりに人がいない……)


そう考えて、そちらの方面へと足を運びながら、制服のズボンのポケットから携帯を取り出し、電源ボタンを押した。

そしてロックを解除し、電話アプリケーションを開く、周囲を見回し、人がいない場所で、父へと電話をかけた。

父は、一度目の着信音で出た。


『もしもし、達也?』


声を聞いて、すぐに本題へと入った。


「父さん?一つお願いがあるんだ」


『お願い?珍しいね、それで、何だい?』


「――俺を、岬塾に通わせてくれ」


『おや、アルバイトも週二日やってるけど……大丈夫かい?』


コンビニのアルバイトだ、5時から9時までやっている。

おそらく塾を始めれば、3、4日は奪われる、そうなると自分の時間はかなり削られるだろうことは予測できた。

しかし


「大丈夫、がんばれる」


『なら、いいけど……じゃあ、明日にでも塾のほうに登録してこよう』


「あ、ごめん、一つ確認したいんだけど……安国香奈で登録できる?」


『あぁ、言っていなかったね、ツインヒューマンは、どちらでも生活できるように、両方の性別で戸籍を持てるようになっているから、そこのところ、大丈夫だよ』


その言葉に、電話越しに見えないだろうが、頷いた。


『つまり?』


「あぁ――俺は、安国香奈として、岬塾に通う」


そして、暁を助ける……!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ