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高校生のための世界史教室 1 ーゲルマン人の大移動からカールの戴冠までー

作者: 秋澤 えで

「日向?何してるんだ?」

「いや、今日からテスト週間なんだけど、世界史が重傷なんだよね…。」

「世界史なんて覚えるだけだろう?」

「覚えるだけ、だなんて言わないで!全く興味のないヨーロッパのことなんて昨日の瑞季くんの晩御飯並みに知りたくない!」

「なんだそれ、度合いがわからん。…どこやってんだ?」

「本当に最初の方だよ。ほら、カールマルテルとか…。」

「へぇでも俺の好きな辺りだな。語ってやるよ。」

「教えてやるよではなく?!」



「まずな、このフランク王国ってのは481にメロヴィング家のクローヴィスに統一された。んで、このクローヴィスってやつはなかなかの切れ者で、他のヨーロッパ諸国との関係も考えてゲルマンの奴らが信仰してた異端のアリウス派キリスト教じゃなくて、正当なアタナシウス派に改宗したんだ。まあこれのお陰で頭の弱い金のある貴族どもを支配して西ヨーロッパの中心勢力になった。…ここまで大丈夫か?」


「イエスサー!要はあれだね!メロヴィング朝はキリスト教のお陰で安泰になったんだね!」


「まあそんな感じだ。で、ちょっと飛んで、6世紀にはブルグンド王国を潰してガリアを統一。」

「閣下!ブルグンド王国ってなんでしたっけ!!」




「前回のテスト範囲じゃねえか!!…たく、まず四世紀頃アジア系のフン人がドン川を越えてきたせいで西の方にいたゲルマン人は耕地もなくなったとこだったから、フン人から逃げるついでに南に逃げることにした。それでそのゲルマン人の種族だが……一回しか言わねぇ、覚えろ。東ゴート人、西ゴート人、ヴァンダル人、ブルグンド人、フランク人、アングロサクソン人。これがゲルマン人の大移動。それを脇目にフン人はハンガリーに王国を建てた。アッティラ王ってやつだったかな?でも調子こいてたせいで451年カタラウヌムの戦いでゲルマン西ローマ連合国に負ける。それで帝国は崩壊だ。ざまあみろ。」

「フン人に対して当たり強いね瑞季くん!何?嫌いなの?」


「でもこのときは連合軍で仲良くやってたんだけど476ゲルマン人の傭兵のオドアケルに西ローマは潰されたんだ。」

「用済みだもんね。そりゃ邪魔になれば消すよ。」



「んで、東ゴート人はフン人に支配されてたけどテオドリック大王の時にオドアケルのたてた王国を倒して568年、ランゴバルド王国が成立。あ、言い忘れてたけど、ランゴバルド王国も東ゴート王国もイタリア半島に建国してるわ。ただイタリア半島ではこの順番で建国された、オドアケル、東ゴート、ビザンツ、ランゴバルド、フランク。」

「今それ言うの?頭のなかカオスだよ!」


「とりあえず王国の名前覚えときゃ何とかなる。ヴァンダル王国、ランゴバルド王国、東ゴート王国、ブルグンド王国、西ゴート王国、アングロサクソン七王国だ。」

「そんで?」


「…諦めてないよな?このゲルマンたちの側、小アジアにはビザンツ帝国がいた。こいつらからしたら力を付け始めたゲルマンの奴らが気に入らねえ。ってことで潰すことにしたのが、ユスティアヌス帝だ。こいつがとりあえずイタリアとアフリカにいた東ゴート王国とヴァンダル王国を潰した。派手にビザンツの奴らが叩いてるところをガリア北部のフランク王国が水面下に活動して、なんやかんやでブルグンド王国とランゴバルド王国を潰した。この時点でもう西ヨーロッパはほぼ統一だ。」



「ねえねえ、西ゴート王国は?ビザンツもフランクも潰してないよね?」


「おっ、覚えてたか、偉い偉い。西ゴート王国は711年イスラームのウマイヤ朝に征服されてンだ。ちなみにこれのせいで調子に乗ったウマイヤ朝は732年、フランク王国に喧嘩うってボコボコにされた。こえがトゥールポワティエ間の戦いだ。ボコボコにしたのはフランク王国のカールマルテルだ。」

「カールマルテル!!待ってたよ!」


「知り合いか。カールマルテルが好きなら少しランゴバルド王国はほっとくぞ。その方がお前は分かりそうだし。」

「ん、分かった!」

「こっからは統一に成功したフランク王国編な。」




ーフランク王国編ー



「一番上に話戻るぞ。メロヴィング朝のクローヴィスは確かに有能だった。だけどまあいくら有能だろうと人間ならいずれ死ぬ。だが親が有能だからって息子も有能とは限らねぇ。8世紀にもなるとメロヴィングは落ちぶれて宮宰のカロリング家が台頭になる。しかも追い討ちをかけるようにトゥールポワティエ間の戦いが起きた。ほら、そこでウマイヤ朝を追い払ったのは?」

「カロリング家のカールマルテル!」


「正解!だからここでメロヴィング朝はもう立つ瀬もなくなって結局カロリング朝が成立されちまった。」

「カールマルテルカッコいい!」



「悪いがお前の大好きなカールマルテルはここで退場だ。実質的にカロリング朝を建てたのは751年でカールマルテルの子供、ピピンだ。ピピンはローマ教皇にすりよりカロリング朝の創始の許可を得て、賄賂のためにランゴバルド王国を攻撃してラヴェンナ地方を奪ってローマ教皇に差し出した!」


「ランゴバルドが不憫すぎ!ほっとかれたと思ったらまさかの喰わせ役!」


「ランゴバルド王国の悲劇はまだ終わらない!ピピンの子供、カール大帝ことシャルルマーニュ。カール大帝は領土を広げるために攻めまくり討伐しまくる。ザクセン人、アヴァール人を討伐して…。」


「ま、まさか…」

「そうお前の想像通り、ここで、774年、ランゴバルド王国はフランク王国のカール大帝に滅ぼされた…。」



「可哀想!哀れすぎるよランゴバルド王国!…ちなみにこれからランゴバルド王国が登場する予定は…?」


「残念ながら、少なくとも高校の世界史には出る予定はない!」


「ちょっと愛着湧いてきたのにこの仕打ち!」

「どうせなら長い付き合いになるフランク王国を好きになれ。」

「無理!ピピンもカール大帝もやること汚すぎ!」



「今も昔も政治なんてそんなもんさ!そのきたねぇ賄賂のお陰でローマ教皇との関わりは深くなるんだからよ。それでカール大帝だが中央集権国家を目指した。全国を州に分けてそれをグラーフ、伯って呼ばれる地方行政官に治めさせた。もっとも妙なことをしないように巡察士を送り込んで見張らせた。まあアケメネス朝ペルシアの王の耳、王の目みたいな役割だ。」


「それは聞いたことある。壁に耳あり障子に目あり!」

「普通に覚えろ。この国家体制は成功。無事に栄えてカロリング=ルネサンスと呼ばれる学芸振興までできて、アーヘンっていう場所にブリタニアのアルクィンとかの学者たちを招待したんだ。」


「あ、そういえば、アングロサクソン七王国は潰されなかったんだね!」


「ああ、フランク王国とは確かに近かったけど、ユトランド半島を攻めるより、もっと南の国を征服した方が領土拡大に繋がってくからな。それとアングロサクソン七王国こと、ブリタニアはイギリスになるからこれからも大きく没落することはない。これから数百年後フランク王国と大喧嘩になる予定だ。」


「がんばれブリタニア!」


「まだカール大帝が続くぞ?賄賂のお陰でカール大帝はローマ教皇に見事に気に入られて800年、当時のローマ教皇レオン三世に西ローマ帝国の帝冠を受けた。これがカールの戴冠だ。」


「んん?ってことはオドアケルに潰されて以来の西ローマ復活ってこと?何で?」


「ああレオン三世の目的は三つ。西ローマ帝国復活によるビザンツ帝国への対抗。ゲルマン人・ローマ帝国・キリスト教の文化の融合。三つ目はビザンツ帝国の傘下にあったローマ教会の独立だな。教会は社会的地位はあっても武力がなかった。レオン三世からしたらビザンツからの独立に使えそうな駒を手に入れたつもりなんだろうよ。」


「なるほど、つまりは皇帝にしてやるから言うこと聞けってことだね。」


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