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第二曲 戦乱を誘う神子[下]


トレリアは一人、悲しそうに俯いていた。


「人々は、なぜ誤った歴史を伝えてきたのです?わたくしにはそれが理解できませんわ」


『先人は誤った歴史を伝えたわけじゃぇ。あえて正しい歴史を伝えなかった。それを勝手に解釈した奴等のせいで、今歴史はこんなにも現実とかけ離れちまってる』


ブルーレルは機嫌悪そうに言う。


『それについては、わたくしがご説明いたしましょう』


カリョがトレリアの前にすっと歩み出て、微笑んだ。


アルティアが存在するずっとずっと昔から、カリョたち、核珠は存在した。

それを発見したのが、八人の兄弟だった。

その兄弟は当時一番栄えていた大国の皇子・皇女であった。

国のために見つけた核珠の力を使い、国に未曾有の繁栄を齎した。

よって、国民は彼等兄弟を、宝玉の神子と謡った。

だが、神子にも、寿命が訪れる。

八人の神子が死したと同時に、核珠は八方へと飛び散った。


『それから、私たちはあらゆる主を持ち、沢山の主の願いをかなえた』


何千人もの主を持ち、何千という願いを叶えてきた核珠。


『そして私たちはアルティアと呼ばれる人物を中心に使える、四組の姉妹たちの手に渡った』


その姉妹たちは皆がみなアルティアを師としてでなく、一人の男として愛していた。

そしてついには核珠の力を使い、前面戦争へと発端してしまった。


『彼女達は、同じ願いを持ちながらも、争うことでしかアルティアへの想いを現すことが出来なくなってしまった』


「それが、なぜ歴史を伝えない事につながりましたの?」


『お前は、今まで国を守ってきてくれた信頼を寄せる者達が私情バリバリで起こした、戦争という国民への裏切りを伝えられるのか?』


ブルーレルの言葉は真っ直ぐにトレリアの心に突き刺さっていた。

例えば自分が現在の父の立場だったとして、国を守り続けてくれた信頼する者たちに裏切られて、自分はそれを国民に発表して彼等を斬ることが出来るだろうか。

出来ることなら、そんなコトはしたくない。

でも…もし、そうせざる負えない事態が起こったら…自分は、彼等を庇ってしまうかもしれない。

何千という国民を裏切ってでも。


『それからも、神子たちの争いは続いた。大地を腐らせるほどに。だから俺たちは、それを止めたい。そのために、今ココに来たんだ』


アオも、ブルーレルも、シャオも、カリョも皆の視線がトレリアに集まる。


「…お願いが、あります」


トレリアは今にも泣き出しそうに拳を握りしめた。


「この国を、無意味な戦乱の犠牲の地には、もうしたくありません」


もう大切な者を失うのは沢山だった。

シャオと出会ったあの村には、トレリアの本当家族が、住んでいた。

弟が生まれてすぐに、家族から引き離されて、王女として振舞ってきた。

トレリアは、本当の王女ではなかった。


「弟が、いたんです…シャオのいた、あの村に……もう、弟のような犠牲者は出したくありません」


シャオは今にも泣き出してしまうそうなトレリアの手を握った。


「大丈夫。私は、戦うために生まれたけど、戦うことは、守ることだから。だれも、殺させはしない」


シャオの顔から表情が消えたことに気付いたのは、カリョ一人だった。


『ではまず、グランディエに会いに行かれるのはどうでしょう』


カリョはその場の雰囲気を変えるように話題を変えた。

その意図に気付くことなく、シャオは呟く。


「グランディエということは、ファティマのところね。賛成だわ」


シャオの表情が戻った事に、カリョは微かに安堵した。

そして四人は、トレリア一人を残し、部屋を後にした。

残されたトレリアは微かに口元に笑みを浮かべて、紅い指輪を手に嵌めた。



「アルディオ…ゲームの始まりよ」



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