序 曲
今までの『青い空に両手を広げて』と小説の内容が変わっています。第一曲からご覧下さるようにご了承下さい。
五年前に、隣国で大きな戦争が起こった。
国同士の勝手な争い。それに巻き込まれた罪のない村人。
それでも、少年にとっては関係のない事ですんでしまう。
「戦争で、みんな消えてしまえばいい。男も…女も…人間という人類全て、何かに、罰せられるべきなんだ」
誰もが持っている感情や欲求を持たず、血のかようこの身体でさえも、温かみを持たない。
十二年前、実母に殺されかけたあの日から…。
何が引き金になってしまったのか、未だに分からないまま少年は自分という人間の価値がない事に脅えていた。
いつも自分なんかよりもずっと大きかった母が、その時はもっと、ずっと大きく感じて。
母から伸ばされたいつもは優しいの手が、首すじにひやりとまとわりついて、その時の母の嬉しそうな顔が余計に少年の心に苦痛を与え、いまでもまだその闇はその心に巣くっていた。
「人間なんて……消えてしまえば…」
ゆっくりと鏡に手を合わす。
「人間、なんて……俺なんて…」
鏡に映る自分を見ていた少年は急に顔をゆがめた。
母に愛されなかったこの顔。
愛されなかったこの身体。
母を愛すことの出来ないこの心。
少年は自分という存在全てが、嫌いだった。
それでも、少年は鏡に向きなおる。
鏡の中の自分も少年と同じようにゆっくりとそれを重ね合わせる。
まるでそこからなにか温かいモノが生まれるかのように、心地よい。
「…俺は、一体何のために生まれたのですか?」
愛されたい。
たった一人の少年のその願いが、大国を動かしれしまうほど大きく、強いことをまだ、誰も知らない。
ファンタジーは初めて書きます。
至らない点、などございますが、感想や批評などをいただけるとありがたいです。