幸せな国の、幸せなお話
――――幸福度指数
これは、どこかの国のどこかの団体が発表している数値である。
あるところに、悲しいことなど一つもない素晴らしい王国がありました。
王様は民のことを一番に思い、王様の行動は常に民と共にありました。
そんな素晴らしい王様に、民は全幅の信頼を寄せ、全ての決定権は王様にありました。
一見、独裁ともとれる制度ではありましたが、民のことを一番に思っている人が全ての決定権を持っているのですから、これは素晴らしい制度とも言えるのです。
でもその国は、決して豊かではありません。国土は狭く、農業もなぜかうまくいきません。
だというのに、民は食べ物に困ったことなど一度もありませんでした。
なので、みんながこう言います。
「王様のおかげで、みんな幸せです」と。
確かに、王様のおかげで幸せなのでしょう。
なぜなら王様は、巨額の援助を受けている隣の国に地べたより低く頭を下げ、各国の先進国の助けに礼を言い、温暖化により危機に瀕している国土を守るため、世界に向けて自分達がどれほど不遇かを訴えて同情を集める。
単に民は知らないだけなのだ。これほど惨めな王様を。この国の現状を。
この国のことは何も知らず、知る術もなく、知ることも知らない。
その様は、まるで動物園。世界に飼われた国。成長することを放棄し、先進国のための偽善に使われる。
そんな愚かで愉快な、可笑しい可笑しい、世界で一番幸せな国の物語。