プロローグ
カツカツカツと軍靴を鳴らして大理石の廊下を行く。表宮殿にはあまり良い思い出がない。だから長居したくない。
後数十メートルは先にある、巨大な両開きの扉を軍帽の下から睨みつける。
憎たらしい小娘め。私が既に皇家と絶縁状態なのを知った上で態々必要もないことで呼びつけやがって。
大広間へ続く扉だ。今はあのうざったらしい小娘の為の、開く必要もないパーティをそれはもう豪勢にやっているのだろう。
アレに付き合わされている兄上もなんと可哀想なことだろうか。
しかし、あの先こそが私の人生最大の戦場なのだ。今日漸く、父との、兄弟たちとの因縁を終わらせるのだ。降って湧いたような、願ったり叶ったりの大チャンスを逃すつもりはない。
今まで何度も死線を潜り抜けてきた。
つい数時間前までも緊急要請による出動で前線にいた。応急手当てとして包帯だけ巻いてきた腕がズクズクと痛む。傷口も開いているだろう痛みだが、こんな外傷にはもう慣れてしまった。
本当はきっと慣れない方がいいのだろうが、幼い時の心の痛みよかずっとマシに思えてしまう。
でも私は生きている。生き残っている。どんな痛みにも耐えて。だから今回も大丈夫。絶対に上手くやれる。
兄上もきっと褒めてくださる。母上も雲の上で初めて私に微笑みかけてくださるはずだ。
私のことをどんなに誇りに思ってくださるだろうか。恥だなんて言わせてたまるものか。
土埃に汚れた軍服が、ところどころほつれた右肩の外套が、己の誇る勝負衣装だ。
なんて言って、今まで一度もパーティドレスなんていう煌びやかな衣装に腕を通したことはないんだけどな。
でも何も臆することは無い。堂々と行こう。
そして扉がガチャリと、ゆっくりと開く。
私は歩みを弱めることなく、目が痛むような光の中へと入っていった。
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