表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『太郎国の裏路地に、最強の処刑人が住んでいる件。~昼は小料理屋、夜はBAR、深夜は悪即斬。女神と魔王が常連客ですが、何か?~』  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/8

EP 6

DEATH 4 覚醒 ~蹂躙される魔獣たち~

 ドォォォン!!

 孤児院の庭に、重い衝撃音が残響していた。

 S級指定の魔獣『ポイズン・スパイダー』。その巨体が、龍魔呂のたった一撃の裏拳で、跡形もなく弾け飛んだのだ。

 飛び散ったのは血肉ではない。召喚獣を構成していた魔力が、黒い霧となって虚空へ霧散していく。

「な……なにが起きた……?」

 ナンバーズの下部組織、違法召喚士たちのリーダー格が、呆然と呟いた。

 彼らの足元には、まだ十体以上の魔獣が控えている。オーク、ガーゴイル、キメラ……どれも一個小隊を壊滅させる力を持つ化け物たちだ。

 だが、その化け物たちが、一人の人間を前にして震え上がり、後ずさりしている。

「おい、どうした! 行け! 食い殺せ!!」

 リーダーが杖を振り回し、魔獣たちを叱咤する。

 命令に抗えず、身の丈三メートルはある『オーク・ジェネラル』が咆哮を上げた。鋼鉄の棍棒を振り上げ、龍魔呂へ突進する。

「グォォォォオオ!!」

 地面を揺らす突進。戦車すらひしゃげる棍棒の一撃。

 龍魔呂は避けようともしなかった。

 ただ、ポケットから出した右手で、ハエでも払うかのように、横薙ぎに腕を振るった。

 パァンッ。

 乾いた破裂音。

 オーク・ジェネラルが棍棒ごと、胴体から上が消失した。

 上半身が弾け飛び、魔力の粒子となってキラキラと舞い散る。残された下半身が、数歩よろめいてから黒い霧となって消えた。

「……は?」

「つ、次だ! 空からやれ! ガーゴイル部隊!!」

 上空から数体の石像魔獣が急降下する。鋭利な爪が龍魔呂の頭上へ迫る。

 龍魔呂は空を見上げることなく、足元に落ちていた小石を拾い上げた。

「――『指弾』」

 親指と中指で弾かれた小石。

 ただそれだけの動作。

 だが、放たれたのは物理法則を無視した『対空砲火』だった。

 ズドォォォォン!!

 空気が裂ける轟音と共に、一直線に赤い閃光が走る。

 先頭のガーゴイルだけでなく、その背後にいた二体、三体までもが、小石の衝撃波に巻き込まれて粉々に砕け散った。

 石礫つぶてとなった魔獣の残骸が、パラパラと雨のように降り注ぐ。

「ヒッ……ヒィィッ!?」

 召喚士たちの顔から血の気が引いた。

 強いとか、速いとか、そういう次元ではない。

 これは『災害』だ。

 形あるものが、触れた瞬間に原子レベルで分解されるような、理不尽な暴力の嵐。

「……次」

 龍魔呂が、一歩踏み出す。

 その足音は死神の足音のように重く、そして静かだった。

 赤と黒のジャケットが風にはためく。その背後から立ち上る闘気は、夕暮れの空を赤黒く染め上げるほどに膨れ上がっていた。

「く、来るな! やれ! 全部行け! キメラも、ヘルハウンドも、全部ぶつけろぉぉ!!」

 半狂乱になったリーダーが、残る全ての魔獣を特攻させる。

 獅子と蛇の合成獣、地獄の番犬、触手を持つ異形の植物。

 数の暴力が龍魔呂を飲み込もうと殺到する。

 だが、龍魔呂は歩みを止めない。

「……邪魔だ」

 ボソリと呟き、両手を無造作に振るう。

 右掌底がキメラの頭を破裂させる。

 左肘打ちがヘルハウンドの背骨を魔力の霧に変える。

 回し蹴りが植物魔獣を根こそぎ消し飛ばす。

 パンッ、パンッ、ドォン!

 リズミカルな破裂音が続くたびに、S級魔獣たちがシャボン玉のように弾けて消えていく。

 防御力も、再生能力も、数も関係ない。

 龍魔呂の闘気に触れた瞬間、あらゆる魔獣は「存在」を維持できなくなるのだ。

「あ……あぁ……」

 一分も経たずに、庭には静寂が戻った。

 残ったのは、腰を抜かした召喚士たちと、呆然と立ち尽くすシスター、そして子供たちだけ。

 龍魔呂は、ゆっくりとリーダーの男の前まで歩み寄る。

 男は見上げた。

 逆光に照らされた龍魔呂の顔は、仮面などつけていなくても、まさに『鬼神』そのものだった。

「ひっ、助け……俺たちは雇われただけだ! ナンバーズの指示で……!」

「……子供が泣いていただろう」

 龍魔呂は低い声で遮った。

 胸ポケットから赤マルを取り出し、震えることなく火をつける。

「テメェらが笑いながらけしかけたバケモノを見て、ガキ共が泣いていただろうが」

「そ、それは……」

「俺は、子供の泣き声が大嫌いなんだ。……吐き気がするほどな」

 龍魔呂が紫煙を吐き出し、リーダーの眉間に指を突きつける。

 デコピンの構え。

 先ほど、小石一つで空の軍勢を消滅させた、あの構えだ。

「ヒィィィィッ!! ま、待て! まだだ! まだ俺には『切り札』がある!!」

 リーダーは泡を食って懐から黒い水晶を取り出した。

 それは、ナンバーズの幹部『ゼロ』から渡された、禁断の召喚媒体。

「出ろぉぉ! 物理無効の最強守護者! 『アダマンタイト・ゴーレム』!!」

 ズズズズズ……!

 地面が割れ、巨大な影がせり上がってくる。

 全身が黒光りする最強金属アダマンタイトで構成された、高さ五メートルの巨兵。

 魔法も、剣も、大砲すらも跳ね返す、絶対無敵の盾。

「ハハハ! 見たか! こいつは硬度が違う! 貴様の拳など通じな……」

 勝ち誇るリーダーの声は、龍魔呂の冷ややかな視線によって遮られた。

 龍魔呂は、見上げるような巨兵を前にしても、眉一つ動かさない。

「……硬い? それがどうした」

 龍魔呂は右拳を握りしめた。

 赤黒い闘気が渦を巻き、拳に収束していく。周囲の風景から「色」が失われていくような錯覚。

「豆腐だろうが金剛石だろうが、俺の前じゃ等しく『塵』だ」

 鬼神流の構え。

 次なる一撃は、魔獣だけでなく、彼らの絶望すらも粉砕するだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ