『あばれ拳銃児』#1
道端で拳銃を拾った。
玩具だと思って、近くの電柱に背中を預けて弾倉を見てみる。
すると、なんか本物っぽいから驚いた。
驚きすぎて、すぐそばの塀の上を歩いていた全裸のおっさんと「まじかぁ」と言い合った。
警察に連行されていく全裸のおっさんを見送りながら、俺はその拳銃を「拾った」と言って警官に渡した。
その警官は「おほォ〜ン」というようなヘンタイな声を出しながらその拳銃を受け取ってくれた。
家に帰ってから弾丸の一つがポケットの中から出てきたから「まずいよなぁ」と思いながらその弾丸をケツにしまった。
そんな事を経験してから二ヶ月後……。
その日は夏だった。俺は女装がシュミの小学六年生に「かわいいネ」と言わなければキンタマかケツを蹴られるバッド・イベントが今月も発生してしまったので俺はお土産のケーキを買ってからその小学生の居る家に向かっていた。
その家は地元でも有名な呆れるほど地位の高い葛城家という──つまり、変な金持ちである。
俺のような高校一年生のお小遣いで買えるケーキだなんだというのは、金持ちからしたら三時のおやつにもなりゃしないだろうけど、「偉いねぇ」と言われる。
俺は褒められるのが大好物だから毎回ケーキを買っていく。
その道中だった。俺は簡単に言うと誘拐された。
どうやら拳銃の落とし主だったらしく、手には新しめの包帯が巻かれていた。俺を後ろの席に乗せ、俺の隣にはデブのおっさん。おっさんは派手な柄シャツで、口にはタバコ。俺は運転席の小指のない男が運転に集中しているのを確認すると、デブの首にヘアピンを刺した。
そして、どうやら目的地に到着したらしいのを確認すると、デブの懐からナイフを取り出し、小指のない男の頭の後ろを刺した。男が何かを言おうとするのを、「死にはしない所を刺した」という言葉で遮って、車から出る。
そこはどうや、山奥の倉庫だった。
そこには男がいた。拳銃を持っている。その拳銃についている傷からして、俺があそこで拾ったものと同じやつだとわかる。
「車に二人乗ってたはずだが?」
「死なないように無力化したよ」
「そうかい」
その男は俺に拳銃を渡した。
拳銃には小さな巾着が付いていて、男が車に乗って帰っていくのを見送り、「置いて行かれたぜ」と思いながら、巾着を開けてみた。
そこには紙切れと大量の弾丸。
「まじか」って思ったね。俺は一時間かけて下山し、すぐ近くの交番にその拳銃と弾丸巾着を押し付けた。
そして、屋敷に行く。
「遅い!」
とか言われたって困っちゃうんだからな。
俺だって遅れたくて遅れたわけじゃねーもんで。
しかし言い訳なんかした暁には金玉が四つに事業を分割させてしまいかねない。
金玉の事業分割なんてデメリットしかない。
そんで、程度の低い女装を見て、心のこもっていない「かわいいネ」を連発しすぎたので、俺はケツを叩かれた。
「お前みたいなバカタレ、もう知らない!」
「えー」
そんな事があった翌日、家にあの拳銃が届いた。俺は両親のいないうちに回収して、ゴミに出した。しかし、その翌日、家に帰ってきた。それを何度か繰り返したぜ。
そして、諦めた。これって捨てたら戻って来るタイプの拳銃らしいから、ほんとうの恐怖展開だなって思った。
「まったくけしからんオハジキだ」
全長二百七十ミリ、装弾数六発。
重量はおよそ一キログラムくらいかな。よく知らんが。
とにかくしばらく持っているだけで腕の疲れる銃。
この呪いの拳銃は、家に置きっぱなしにして学校に通ったら、学校に出現してしまったりもする。
もう立派なストーカーだよ、と思いながら変なところに出てもらっちゃ困るので、俺は常にそいつを持ち歩くことにした。
しかしなぁ、銃砲刀剣類所持等取締法がなぁ。
俺は十五年前に成立した法律が気がかりでならなかった。
しかし不思議なことに俺がその拳銃を持って外を出歩いても、誰も何も言わなかった。
認識していないとか、不思議な力と言うより、許してくれているらしい。なんか怖いなぁ?
と思ったので、俺は此処に大昔から住んでいる葛城家に話を聞きに行った。ダンナさんは俺がその拳銃を見せると、「今度は君か」という話をした。
「その拳銃はな、たびたび現れては人の手に渡るんだ。そして、その拳銃を手にした人間はたいてい早死にするんだ」
「えー!? 俺この世に未練とかないんで死んで良いんですけど、他に誰が死んじゃったんすか」
「長田の所の長男や、私の妻だ」
俺は何も言えなくなって、葛城家から逃げて出た。
ダンナさんは「君は死なないでくれ」と言われたぜ。その依頼承っちゃうぜ。俺は死なんぜ。
シャンゼリゼ通りで好きな女と珈琲飲む夢があるからね。