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5月1日+3日

5月1日


「行ったぞ!アオト!」


ズダッ!と特有の射撃音で誘導して目の前に敵の首が躍り出る。そこを慣れた手つきで真っ直ぐサバイバルナイフを振り下ろす。


力を込めるのは一瞬。装甲の隙間を通すように刃先を滑り込ませ握り込んだ手から肩まで鉄骨が入ったように真っ直ぐに、体重を乗せて振り抜く。


思考回路のまとまった頭部と胴体を切り分ける事で敵の攻撃性能を極端に下げる。


「トドメぇッ!」ヒュボッ!


音が聞こえると同時に敵の動力炉が弾ける。首を無くした胴体には胸部に丸く穴が空き回路が断線してパチパチと火花を散らす。


「ピピッ」と耳に付けた通信機に少し離れた所から状況判断をしていたリリサ〈R1r1-sA〉から全体通信が来た。まだ何が起きたのかわからない。というように敵の体は宙を泳いでいた。


『みんな、お疲れ様。ナゴは少し先走り過ぎ』

「あれっくらい調整出来るだろ」


ナゴ〈NAg-0〉は答えるが、その目には反省の色よりも好奇心の色が強い。評価を焦る気持ちもあるだろうが倒した敵が珍しい巨獣種〈グランド〉のグリフォンタイプだったのもあるだろう。


『アオトとメーコの対応は完璧だったわ。ナゴもあれぐらい落ち着いて行動して』

「うるせぇなぁ。小言はそれくらいにしてもう少し稼ごうぜ」


と元気よく返事をするとナゴはまた次の獲物を探しに行ってしまった。そんな様子を見てリリサは少し呆れながらも言う


『……まぁいいわ、もうノルマは残って無いし希少種〈レア〉でも見つけてくれれば御の字ね』

「お疲れ」「お疲れ様です」

『アオトもそろそろ敬語外しなさいよ。戦況把握の指示型とは言え同期じゃない。メーコには敬語使わないし』


確かに同じチームになり活動が1ヶ月にもなるが、通常では敬語を使っている。咄嗟の判断や報告では省く場合もあるがそういう時に敬語を使うと上官にも怒られる場合がある為だ。ちなみに1カ月も経っているが未だ前線を一歩外れた安全圏である。いわゆる拠点防衛の安全圏拡大の為に周囲の機械擬獣〈アーマード〉を処理しているのだ。前線では武装持ち、つまり戦闘用に改造された雑種〈モブ〉が4機編成で12部隊の大隊クラスが居る。まだ戦力としてはひよっこがいい所なのだろう。


『アオトがそう言うのに拘る理由もわかるけどね……ん?』

「どうした?」


リリサの反応がいつもと違い少し遅れたので気にかかる。言い方が悪いがリリサは誤報告だろうと真っ先に前線に共有する。レーダー情報系で分かる事は全て報告してくれるので前線が情報を修正すれば良い。この辺りはリリサはかなり優秀だ。レーダー系の効きづらい森林区域だが相変わらず動物系は見た事が無い。巨大化したトウモロコシやラグビーボールのような大豆。捕食関係が成立せず好き放題成長すると植物は巨大化するらしい。なので食事に困った事は無い。ただ花粉を運ぶ虫を見た事が無いのでどのように繁殖しているのかかなり謎である。


『変な反応がその辺りにあるわ。帰り道。回避は可能だけどかなり大回りになるわね。雑種〈モブ〉のモンキータイプ?でも情報量がおかしい。計器の故障かしら?本当に希少種〈レア〉でも引き当てた?とにかく周辺に気をつけて、今まで気づかなかったのが変なくらい近くに反応があるわ。多少の異変でも報告して』


リリサの通信がしつこく、脳内に響く。


『本当に希少種〈レア〉なら一度でも捕獲したいわ。通常タイプのアンドロイドとは違い思考能力や人格があるらしいから』


リリサのこの発言は珍しい。確かに希少種〈レア〉と呼ばれる個体は今まで発見された事がないが、それはあくまで人間側の認識で、実際には存在するという報告も上がっているし、そもそも人類側に敵対的な行動を取る個体は確認されていないのだ。


『アオト?聞いてる?』

「あ、あぁ……うん。そうだね……」


ぎちり……と可動域の広さを感じさせる音が鳴る。特殊なセンサー系をしているのかカメラアイがキュイイとフォーカスを合わせる音がした。頭部からドレッドヘアのようにチューブが垂れており捜索系電波が当たるたびに独特な色を放ち相殺しているのが見てわかった。


間違いない。コイツは、希少種〈レア〉だ!


『ちょっとアオト。どうしたの?』


リリサの慌てた声が聞こえるが、返事をする余裕がない。まずはこの馬鹿みたいに多量な情報の嵐を処理して何を最優先で処理するか決める必要がある。だが考えるよりも実行だ!目の前の脅威を排除する事が先決だ。


「メーコ!情報収集優先!リリサは緊急応援対応!応援が来るまで耐えるよ」

「ラージャ!キミと居ると退屈しないね!」


現場指示を叫ぶと同時に声のした方に向かって高速で走る。異音をセンサーに捉えると取り回しの良い汎用追跡銃から対獣弾を数発放つ。狙った場所に着弾すると構成材質を解析して追尾用の発信器にもなる優れ物だ。


落ち着いてライオット教官から聞いていた対応を思い出す。


私達と敵対する機械擬獣〈アーマード〉は大型になればなるほど強力になる。この辺りはより強力な動力源を有していたり、重武装を装備していたりと見た目で強さが分かるから楽な相手だ。我々には戦術と武器がある。


しかし機械擬獣〈アーマード〉の中でも希少種〈レア〉と呼ばれるものには気をつけろ。所有している情報量が桁違いだから見ればすぐにわかる。コイツらは小型なのに強い。通常大きさは強さであるのに対しコイツらは共食いをする事で相手の動力や武装を取り込み学習している場合がある。


だから小型なのに情報量が多いんだ。遭遇したら安全に撤退が第一。ただし相手に見つかっていた場合、そのまま逃げるのは下作だ。単純に逃げ切れる保証が無いし、何より相手から目を離すなんてのは後ろから撃って下さいと言ってるようなものだ。


「よって対応としては応援が来るまでの時間稼ぎの第二が優先!」

「Me-Ek0、カラーアクション!」


メーコは腰に下げた小瓶を片手で砕く。すると事前に装備していた籠手に色が付く。パッションピンク。彼女の最大戦力だ。


カラーアクション、それは切り札と言い換えていい。「最後の」と付かないのは人によって発動可能回数が異なる為だ。それぞれ色の違う液体を個人の有する装備にかける。すると液体が力を持ち装備に能力を付与する。パッションピンク、その能力は


「そこォ!」


接触点の爆発だ。メーコが装備した籠手からパッションピンクの光が溢れる。そして接触点の爆発が起きると機械擬獣〈アーマード〉はバラバラに崩れて行った。


「アオト!大丈夫!?」

「あぁ、ありがとう」

『ピピッ!』


リリサからの通信だ。どうやら応援が来たらしい。しかしこれは……本当に希少種〈レア〉なのか……?


『こちらライオット少佐だ、状況は?』

「はい、対象撃破しました。残骸を解析班に回したいので引き続き応援を……」


残骸が、無い?


『報告は正確に頼む、どんなタイプだったんだ?』

「は、はい。心臓である機関部は球状で直径1メートル前後、そこから伸びる八本のマニュピレーターの触腕はそれぞれ別の武装をしている特徴からオクトパスタイプの希少種〈レア〉だと推測し」


そうだ。希少種〈レア〉は知性があるタイプがいる。例えば


「アオトッ!!」


触腕を切り離して爆発させる事で倒されたと、偽装するタイプとか。


咄嗟の事で見えたのは僕を庇って突き飛ばしたメーコの両腕が電熱線のような触腕に切り落とされる所だけだった。


「アオト、大丈夫!?」

「問題ないよ。メーコは?」

「アタシは何とか……!」


嘘だ。そんなもの通信器に届くアラートが活動限界を告げる聞いた事の無い音を聞けば分かる。しかし……場所が悪い。メーコのカラーアクションは両腕を起点に発動させる。換装すればなんとかなるだろうがこの戦闘中メーコを戦力と数える事は出来なくなった。本当に何者だコイツら……


まるで自身の武器を解析されないようカウンターを狙ってきているようにすら感じる。これは恐怖ではない、と必死に言い聞かせる。このオクトパスタイプの希少種〈レア〉は何を持ってしてこんな行動を取っているんだ?どうやってこちらの装備を学習したんだ?とりあえず時間を稼ぐ。敵の観察に全力を注げ。


「問題はこの状態でも私の方が強いって事なのよね」

「悲しい事にね」


そう、僕のカラーアクションは唯一無二の特殊なものだが戦力にならない。例え両腕とカラーアクションが使えない状態のメーコですら簡単に僕を倒せるだろう。


ガバッ!と何かが通り過ぎたと思った時には床に転がっていた。咄嗟にメーコが敵の触腕を蹴り上げていなければ床に転がっていたのは頭だけだっただろう。いや、それも甘かった。


「二本同時使用することで範囲の広がる武装……不覚ね」


メーコは右足の腿から先も無くしていた。慌てて右側を支えて立てるようにする。もう次は避けられない。


ぎちち……と照準を定めるように自立に使っている二本と最初に爆発させた一本を除いた五本の触腕がこちらに矛先を向ける。


『ピピッ!』


リリサからの通信に反応して咄嗟にしゃがむと、その頭上を何かが通過する。それは……


「忘れてたかよぉ?!このオレを!」


ナゴは僕の方を見て言うが僕はそれどころじゃない。あのオクトパスタイプは知性を持つ。最初のメーコの一撃を最小限の犠牲で抑えたのだ。


「NAg-0!カラーアクション!」


ナゴはモスグリーンの小瓶を膝で叩き割る。すると小麦粉をぶちまけたように真っ白な煙で視界が完全に効かなくなる。しかもこの煙は一種のチャフの役割を果たしセンサー類を無効化する。


たまらずオクトパスタイプは触腕を振り回して全方位の攻撃に出る。それが間違いとは知らずに。


「A-0t0カラーアクション」


ナゴのカラーアクションの煙幕の中で、そっと呟く。本来、僕の能力は発言が必要無い。ただし味方にもこの能力の本来の意味が分かると困るのだ。サバイバルナイフを肩から引き抜き親指の腹を数センチ切る。当然赤い血が出る。


「いつ見ても不思議よね。アナタ体内の冷却にカラーアクションを使ってるなんて」

「まぁ僕からすると小瓶なんて分かりやすい弱点を見える位置に付けるのもどうかと思うけどね」

「そう?小瓶がカラーアクション用のトリガーなんて敵には分からないわよ」


敵ね。とりあえず話をしながら能力を発動させる対面的にはブラッドレッドを名乗っている。

両腕は完全に近いが守りの装甲は必要無いので省かせてもらい右足は最低限立てるレベルまで。

そしてまだ煙幕の中で触腕を振り回すオクトパスタイプに向けて一直線に躍り出る。


「足と両腕の分ッ!」


メーコは敵の動力炉である頭部に向けてカラーアクションであるパッションピンクを叩きつけそのまま右ストレートで殴り抜ける。

威力を殺さずに拳一つ分めり込んだ所で爆発が起きてそのまま後ろの装甲まで吹き飛ばす。残った動力でメーコの身体に触腕をまとわり付かせるが出力が足りずにビチビチと装甲を叩く音が虚しく響き、そして力を失いだらりと地面へ落ちた。


そう。僕の能力は修理である。しかもかなり質量の法則を無視したもので、ある程度なら修理する箇所も取捨選択出来るのだ。


「ナゴ、メーコとりあえずお疲れ。急な戦闘だったけど欠ける事なく済んで良かった。リリサ、応援はあとどれくらいで着く?」

『そうね……そう言えば連絡の続きが来ないわね』

「は?」

『アオト!後ろ!』


リリサの悲鳴に近い通信が聞こえると同時に背中に衝撃が走る。そのまま吹き飛ばされて壁に叩きつけられる。


「がはっ……!」


肺の中の空気が全部吐き出される。そして、目の前には……

『アオト!大丈夫!?』「ちょっと、何よコイツ」「おいおいマジかよ……」

3人の声が遠くなる。あぁ、これは死んだなとどこか冷静に思う自分がいた。オクトパスタイプの希少種〈レア〉だ。しかも2体。


『ピピッ!!』「キュイイ!」


電子音と特殊な触腕が独特な音を立てて迫ってくる。もう駄目かと目を瞑った瞬間だった。上から声がすると思いうっすら目を開くと……


「アオト!無事か!?おい!大丈夫か!?しっかりしろ!」


姉さんがオクトパスタイプを殴り飛ばしていた。


「……ねえさん?どうしてここに?」

「今は生き延びる事に専念しろ。他に応援は来ない。私もかなりムリをして来ている」

「キヨカ中隊長、オレ達は見捨てられたって事ですか?」


キヨカ中隊長、姉さんの名前だ。姉さんはサッと周りを見渡し即座に状況確認をするとリリサとの回線を繋げて撤退ルートを探す。


「リリサ、動けるか?支援はいらない。全力で撤退する。現在地は?」

『ちょっと!ふざけないで!撤退ルートを追跡された場合、最悪拠点防衛が難しくなるわよ!』


と無線の先から怒鳴り声が聞こえるが姉さんも僕も気に止める事はない。現場に居ないリリサにはわからないだろうが拠点まで撤退して応援を頼んだ方がいい。限界だ。


「200m程西へ直進で最高速度で逃げられる直線が続いています」

「そこの壁を爆破して敵を散らす。私が先導する、メーコ、ナゴいけるな!」

「もちろんよ!道を塞ぐのは任せて!」

「あいよぉ!時間稼ぎは得意分野だぜぇ!」


2人は僕の両脇を抱えながら移動を開始する。2人のカラーアクションのおかげで煙幕を撒きながら追跡しづらいように壁や地面を爆破させる。しかしオクトパスタイプは速度は無いが八本の足は走破性が高く障害物を物ともしない。

どうにか姉さんの支援とメーコとナゴのカラーアクションもあり撤退に成功すると姉さんとリリサの言っていた事をようやく頭が理解した。


「この報告を受けて必死になって撤退支援に来たのだ」


僕たち4人の所属する森林区域前線構築用の第三中間拠点は屋根が吹き飛んでおり東棟の三階は元の形が分からないほど消し飛んでいて、防衛拠点ギガントフォートレスへ撤退を余儀なくされた。

僕たちがこの一ヶ月戦闘して来て初めての拠点への撤退だった。


5月3日


「これはどういう事かね」


これが防衛拠点ギガントフォートレスの拠点第一会議室で聞いた第一声だった。第一会議室は広いが、それでもこれだけ錚々たるメンバーが揃うのは初めてだろう。


「はい。まず今回の戦闘において応援を要請しましたが到着せず。また敵勢力の戦力分析が不十分で撤退支援も遅れました」

「ふむ……それが我が森林区域第三中間拠点を手放すほどの案件だと?」


ギガントフォートレスのトップ五色の新緑巨王のグリーン〈GREEN〉さん。見た目は様々な太さのパイプが重なり合い絡み合い大男の見た目を形作っている。ギガントフォートレス稼働当初から居る最古参であり専有する中間拠点も多く一番権力がある。と言われているが侵攻指示はあまりせず防衛設営の指揮を担っている。

姉さんは淡々と報告を続ける。いつもの姉さんならもっと感情的になるはずだから不思議に思った。


「アオトクン、どうした?何か言いたそうだネ。キキキ」

「……いえ、何でもありません。続けて下さい」


改装桃姫のピーチ〈PEACH〉さん。身体が所々透けている女性型のボディは自身の装甲を視覚センサー系から完全な隠蔽をする為に真っ先に実験している。だいたい150cmくらいの全身を自身が作った装甲で作ったクラゲ型の包み込む椅子のような物で覆っている。最新装甲の大部分を彼女が開発しており自身が使った物を量産用に卸しただけだというが、彼女が居なければ未だ装甲は二世代は古いままだったろう。

色々と思案する僕の様子を見て姉さんは不思議そうな顔をしたがそのまま話を続けた。


「敵勢力の解析はこちらで行いましたが……改めて敵戦力が判明いたしました」

「ふむ、聞かせてくれるかね?」

「はい。まず……計4体の希少種〈レア〉が確認されました。3体のオクトパスタイプとフクロウナギタイプです」


沈黙が走る。それはそうだ。こんなタイミングで違う変異種が現れるなんて予想出来る訳がない。しかもフクロウナギタイプは初耳だ。


「なるほど。それで?我がギガントフォートレスまで撤退の判断をさせた理由とは一体なんだネ?キキキ、まさか希少種〈レア〉だからと言う訳でもないだろう?仮にも戦闘用員がまさか情報の一つも持ち帰れないなど責任問題もいい所だ」


ピーチさんは姉さんに鋭い視線を向ける。しかしそこで意外な人が庇った。


「まぁいいじゃあない。こっちの被害報告も聞いてない訳じゃ無いんでしょ?」


兵器蒼天のブルー〈B1-UE〉さん。兵器開発でこの地位に上り詰めた一番の新参者だ。右に二本と左に六本の腕を持ち腰の左右にも二本ずつ腕を増設し十二本の腕をそれぞれ並列操作出来るように巨大な演算装置を胸部に取り付けた女性型だ。身長の高いメガネの似合うスラリとしたタイプだ。


「砂漠区域第一中間拠点、山岳区域第二中間拠点、森林区域第三中間拠点、海洋区域第五中間拠点、そして市街区域前線中間拠点。無事だったのは氷雪の第四だけか」


黄金色のゴールド〈G-01-D〉さん。カラーアクションの開発者であり個人に合った色を選び使いやすいよう識別化し戦いやすいよう加工する。前任のイエロー〈YELL-0-W〉さんの技術を引き継いでおりトップ五色という単語が出来たのはこの人が来てからだ。四つ足の巨躯に大型の二本角がある男型だ。珍しいのは右前脚のあたりに絵の具のパレットのように虹色の扇のような物がある所。

そこまで被害が大きかったとは流石に驚きを隠せない。


「わからないかね?我々はもう侵攻出来ないんだよ。都合のいい作戦でも無い限りはね。キキ」

「……はい。申し開きもありません」

「ふむ、素直に認めるのはいい事だ。また防衛に集中すれば良い。では代案はあるのかな?」

「今の所は……」


姉さんは口を固く結ぶと肩を落とす。そう言えば、と思い素直に疑問を口にする。こういう時発言を渋るのは愚策だ。


「僕たちの直属の上司に当たるライオット少佐はどうしたのでしょうか?」

「あらぁ気付いてなかった?被害報告聞いてないんだっけパープルの担当でしょ正確な被害報告は?」

「ジジッそうだな。正確な情報を共有しよう。全員傾聴してくれ」


紫電響報のパープル〈PURPLE〉さん。情報収集と自身のカラーアクションにより情報の暗号化と敵の通信傍受、速やかな前線構築と侵攻指示などおよそ情報と名のつく物は彼女の武器だ。ちなみに頭頂部から足元まで続くケーブルを身体中に巻き付けており、もはやそれを服のように着こなしている。そのせいで声が電波干渉していて言葉始めにノイズが走るのだ。しかし電波を通すと干渉しないため通信の方が綺麗に聞こえる。


「ジジッ戦没者は確認出来ているだけで243名だ」

「あの、ライオット少佐は……」

「……キキキ。通信兵が応援要請をして応援が来なかった。これで本気でわからんのかイ?それからパープル、報告はまだあるだろう?」

「ジジッ3体のオクトパスタイプ。内1体の撃退。それが今回の戦果だ。敵の希少種〈レア〉は計8体。砂漠のゴートタイプ、山岳のスネークタイプ、森林のフクロウナギタイプ、海洋のリザードタイプ」


そんなに?!いや気になったのはそこじゃない。希少種〈レア〉は確かに強いがそこまでじゃない。実際メーコ、ナゴ、リリサ、僕の4人でオクトパスタイプ1体倒せたのだ。明らかにやられすぎている。データが少ないとはいえスネークタイプとリザードタイプは聞き覚えがある。


「パープル。中間拠点を襲った4体。オクトパスタイプが3体。市街区域前線中間拠点を襲ったのはどうした?」

「ジジッそれについては映像がある。グリーン、この映像はここだけにとどめてくれ」

「ふむ。確かに機密情報だ。良いだろう。全員いいな?」


会議室中央に設置されたモニターを指差すとその映像が再生される。

そこには……


「これは……」「嘘でしょ……?」「ほウ」「あらぁ、これは予想外ねぇ」


そこに映っていたのは轟轟と燃える市街区域の逆光によりドス黒く彩られた人影。紛れもなく僕に似た姿の希少種〈レア〉いや、これは


「ジジッこれが我らの敵の希少な映像記録。名前を、『人間』というらしい」

あとで完成したら途中補完したい

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