表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

プロローグ:忘れられる私

田中さんは綺麗だ続編です。



また今日も、私の名前を誰も呼ばなかった。


出社して、挨拶して、会議に出て、書類を提出して、笑って帰る。


誰も、私の名前を口にしない。

もう慣れた。

私は、そういう人間だから。


最初は戸惑った。

あの人が、自分のことを覚えていないなんて。

でもそれが二度、三度と続いていくうちに、気づいてしまった。


私は、忘れられていく人なんだ。


友達も、恋人も、同僚も、みんな少しずつ私を忘れていく。

でも、家族だけは覚えている。

たぶん、そこだけは、世界が見逃してくれているんだと思う。


でも――

一つだけ、法則があった。


「私を好きになった人」だけは、私を忘れない。


最初は、偶然だと思ってた。

でも、何人も、何度も繰り返してきて、確信に変わった。


私はもう、誰にも強く関わらないようにしている。

誰も好きにならなければ、誰かに覚えられることもない。

それがきっと、穏やかに生きる方法。


それでも、たったひとりだけ。

私をまだ、覚えてくれている人がいる。


いつかの春、私に気づいた人。

私の名前を呼んだ人。


その人が、もう一度私の名前を呼んでくれたなら――


それだけで、生きていける気がする。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ