第5話 たんぽぽと森探検
昨夜は農屋でたんぽぽと添い寝。
ふぁ〜
大きく腕を広げ伸びをする。あたしの肩がたんぽぽの顎の高さに丁度よく、顎を乗せたたんぽぽはあたしに頬ずりをする。気持ち良い。
「たんぽぽ。朝ごはん行こっ」
あたしはたんぽぽの背に乗り農屋を出て玄関へ。よいしょっとたんぽぽから降り手綱を引き中に入る。
「おはようございます」
「すみちゃんおはよう」
「パパは?」
「朝からお仕事よ」
「ふ〜ん」
食卓には既にお皿が並べてある。あたし用の椅子に座りお行儀よく手は膝の上に。
今日はポトフとマーガリンで焼いたミニパン
ポトフから美味しい香りがしてよだれがたれそう。ズズズとよだれを吸い上げフォークに熱々《あつあつ》のウィンナーを刺して一口。「ふぁふ」もぐもぐ美味しい。ジャガイモ、ブロッコリーもあつあつで美味しい。お腹も体も温まりふぁ〜と一息。パンはポトフに浸してもぐもぐ。マーガリンの甘さが丁度良い。
「ご馳走様」
「はい。お粗末様でした」
「ママぁ、出かけてくる」
「遠くに行っちゃダメよ」
「は〜い」
今日は牧場の裏山を冒険するのだ。あたしとたんぽぽのお弁当も持って出かけた。
もものお家を通って牧場を上がっていく。
ももがうしさんを連れてゆっくり牧場を散策していた。
あたしはももに手を振り一気に牧場を駆け上がった。
たんぽぽは森の柵をぴょんと飛び越え、あたしは柵の下をよちよちはって抜けた。
よしっ!
お手手をぱんぱんしてたんぽぽの背に乗ると出発だぁ。
暫くは整備された山道を歩く。たんぽぽとお友達になった時に歩いた道だ。
あっ!
あの銀色でギザギザのガブっていうやつ(トラップ)に気をつけないとたんぽぽが怪我しちゃう。
あたしとたんぽぽはゆっくり進んだ。あたしが下を見てたんぽぽがまっすぐ見る。良いコンビネーションだ。
暫らく歩くとたんぽぽがピューと鳴いた。
あたしの頭より少し高い木の枝に蜂の巣があった。
あたしはくまさんのリュックから七つ道具の一つを取り出した。
散弾水鉄砲だ。先端に複数の穴が空いていて引き金を引くと広範囲に水弾が飛ぶ。
あたしは散弾水鉄砲を片手にたんぽぽの首にしがみ付くと手綱を引いた。
たんぽぽは勢いよく走り蜂の巣を通り越した。手綱を緩め右に軽く引くとたんぽぽが反転して、来た方角を向く。蜂さんの追撃が無い事を確認して先に進む。
ふぅ
一息つく。
先に進むと道幅が狭くなった。
あたしはたんぽぽから降りくまさんリュックに散弾水鉄砲をしまい、七つ道具の二つ目の差し棒を取り出し棒を伸ばした。ここから先は歩いて行く。
あたしが先頭を歩き差し棒でぺしぺし草を叩いて道幅を広くする。
銀色のギザギザを叩くのにも最適だ。
暫く草をぺしぺしして歩くと急に道幅が広くなった。
あれっ?
あたしはくまさんリュックから七つ道具の三つ目の鈴を取り出し、たんぽぽの首輪に取り付け、散弾水鉄砲を再び手にした。
ゆっくり鈴の音だけにし足音を立てない。恐る恐る進むと後ろの草がカサカサとなり、あたしはビックとしてたんぽぽに飛び乗ると一目散に走った。
どこまで走ったか覚えていない。気がつくと森を抜け高台に出ていた。
高台にはたくさんの草や花が咲いていた。あたしのお腹がぐぅ〜となった。
日陰に入りたんぽぽに草を上げ、あたしはお弁当箱を開けた。ご飯にはくまさんの形の海苔が有って、タコさんウインナー、鶯豆、ナポリタンが詰められていた。
「いただきま〜す」
ドキドキ冒険をしてお腹が空いていた。
お弁当をあっという間に平らげおやつに手を出した。
おやつはポテトチップス。パリパリして美味しい。お手手からお口までポテトチップスのカスでいっぱいだったがばしばし何度か手を叩き終了。
お腹を満すといつもは瞼が重くなるけれど今日は大丈夫。まだまだ楽しい冒険がいっぱい。
草むらバッタを捕まえてたんぽぽに上げると鼻先でペシっとされ、イモムシやトカゲもペシっとされた。
「たんぽぽは虫さんが好きではないんだね」
高台の先に行くと眼下に村の全体が見渡せた。
あそこが牧場であそこがあたしのお家。
風が気持ち良い。今度はももも連れてこよう。
高台からジグザグに下る緩やかな坂があり、その坂をトコトコと下って牧場に戻って行った。
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次回は「たんぽぽと街へお買い物」だよぉ。
次回をお楽しみに♪