第3話 たんぽぽ初めてのお散歩
もものパパさんに見てもらい元気になったたんぽぽと悪戦苦闘の毎日を過ごしている。
う〜 たんぽぽ待ってて!
そうは言っても大人しくしてくれない。あたしが走り出そうとするとたんぽぽも走る姿勢であたしをみつめる。
せ〜の
たんぽぽが走り出した時、あたしはにやけていたに違いない。くるっと回転してたんぽぽへ向かって走り出す。
気がついた時には目の前にたんぽぽがいて
「はっ!」
「ピュッ!」
お互いに走る姿勢のまま固まった。
唾を飲み込む。たんぽぽは耳を立てる。
「おすわり!」
たんぽぽはゆっくり膝を折った。あたしも腰を下ろしたんぽぽと向き合う。
ピュウ
たんぽぽと目が合いにっこりするとたんぽぽがピュウピュウ言って応えてくれた。
あたしはたんぽぽの首に抱きつきほおずりをする。たんぽぽも同じ。仲良しになった。
今日は土曜日。
あたしの後にたんぽぽがついてくる。
「おはようございます」
「おはようすみちゃん」
「すみれ、おはよう」
いつもの朝ご飯。たんぽぽは草。
たまにはお菓子上げたい!
「ママぁ、お菓子ダメ〜?」
「ご飯食べてからにしなさい」
パパとママの視線があたしに集まる中あたしはたんぽぽに目を向け
「たんぽぽに上げたいの。ダメ?」
「すみれ、たんぽぽにお菓子あげたらお腹痛い痛いになってしまうよ」
「え〜」
あたしはたんぽぽに何もしてあげられない悔しさでもうご馳走様した。
「すみれ、たんと食べないと大きくなれないぞ」
「あたしもたんぽぽと同じ草食べる!」
「はぁ?」
「すみちゃん、たんぽぽが可哀想なのわかるけど。すみちゃんが大きくなれないとたんぽぽが悲しむわよ」
「え〜そうなのぉ」
あたしはたんぽぽの頭を撫でていい子いい子する。
「そうだ。そろそろ散歩に行きたいだろ。すみれとたんぽぽにパパとママからのプレゼントだ」
パパから大きな袋を受け取り恐る恐る中身を見る。あたしは大きな瞳を更ら大きく見開きすぐにへなっと微笑む。
「パパママありがとうございます」
あたしは袋の出口を下に向け上下に振る。カタンとパサッと音がして床に落ちた。
真っ赤な首輪に銀色のネームプレートが付いていて『たんぽぽ』と掘られている。もう一つは綱?紐?革製の物だ。
「すみれ、パパが着けてあげる」
「うん。はいっ、お願いします」
パパが首輪を着けて革製の物をつける前にママが持ってきたベストの様な物をたんぽぽに着せてから革製の物をつけた。
お〜
なんと素晴らしいんでしょう。わんちゃんとお馬さんを合わせたような装備品。あたしは早速手綱を引きお家の中をたんぽぽと歩く。あたしが走るとたんぽぽも早足になる。
うん息ぴったり
「ママぁ、お外行ってくる」
「気をつけなさいよ」
「パパも一緒に行こうか」
「いい。パパいらない」
パパは苦い顔をしてう〜う〜唸っている。
あたしはたんぽぽともものお家まで歩く。ゆっくりゆっくり。たんぽぽは道端の草に目が行き脱線する。
「たんぽぽ行くよっ!」
わんちゃんの散歩とあまり変わらない。わんちゃんより力強いとこらが違うのだけれど。
もものお家に着いたのはお昼過ぎ。
「お腹すいたぁ。あたしも食べる」
たんぽぽが食べている草を一口。
「ぺっぺっ」
苦くてとてつもなく美味しくない。
「たんぽぽぉ、おいしいの?」
たんぽぽはあたしに顔を向けピューと鳴く。
そっかそっかとあたしは頷きもものお家のライオンさんに手を伸ばすが届かない。
ジャンプする。木の枝を引っ掛けてみる。意外と難しい。
う〜む。お主なかなかやるのぅ。
顎に手を当て首を傾げているとたんぽぽがあたしの足の下に首を突っ込み首を持たせようとする。そっかぁ。
あたしはずるずるとたんぽぽの首を滑り背中に乗るとたんぽぽが立ち上がった。
ちょうどいい!
バッチリライオンさんの輪っかに手が届きトントントンと三回叩いた。
「は〜い」
もものママさんだ。ドアが開くとたんぽぽの背中越しにご挨拶する。
「こんにちは。すみちゃんです」
「ようこそすみちゃん。上がって」
あたしはたんぽぽに乗ったまま入ろうとすると「めつ!」された。
「すみちゃん。お家に入る時はたんぽぽから降りるのよ」
「ごめんなさい」
あたしは颯爽と乗る姿をももに見せたかったが仕方ない。
たんぽぽから降りお家に入る。パパさんとももがご飯を食べていた。
「こんにちは」
「すみちゃんこんにちは。たんぽぽ元気そうだね」
「ありがとうございます」
あたしは元気いっぱいお辞儀をした。
ぐぅ〜
お腹がなった。
なんとタイミングがいい。あたしがお腹をさするとママさんが微笑み
「すみちゃん食べてく?」
ここが子供の素晴さしい所だ。
俯むき気味お腹をさすると「さあさあ」と手を引いてくれる。
やったぁ
ももとお揃いの椅子を用意して貰うととあたしは椅子に座りももを見る。
今日はミートソースだぁ。
ももの口の周りはトマトケチャップ色に数倍唇が厚くなっている。またそれをぺろぺろ舐めている。
可愛い。
ママさんがよそってくれたももとお揃いのプレートにスパゲッティミートソースが山盛りに巻かれている。
ママさんはお料理がとってもお上手。時にはくまさんのハンバーグだったり、うさぎさんのオムライスだったり、さかなさんもいた。
今日は旗が付いていた。
「これなぁに」
「これは国旗だよぉ」
「こっき?」
「すみちゃんが住んでいるところの旗《はた」》
「そっかぁ」
お腹一杯になると瞼が重くなる。座りながらうとうとうと。ガンっとプレートに頭を打ちつけたがそのまま夢の中へ。
あたしとたんぽぽ、ももと夢の冒険の夢の中へ。ももと夢はゆっくり進みあたしとたんぽぽは早い。あっという間にももと夢が見えなくなり深い森の中へ。森は暗く、中にはお化けがいっぱい。
あたしはたんぽぽにしがみ付き更に奥へ進む。
森を抜けると開けた野原に。綺麗なお花が咲き、蝶々《ちょうちょ》が舞、鹿が草を食べている。
あたしはたんぽぽから降りお花を摘み、お花の冠を作った。
「おみやげ。おみやげ」
あたしはお花の冠に夢中になり、気がつくとたんぽぽがお母さん鹿の側で耳を傾け鼻をクンクン鳴しあたしを見ている。
「たんぽぽ、たんぽぽ?」
たんぽぽはお母さん鹿と一緒に行ってしまった。
たんぽぽぉ〜
目が覚めるとあましはたんぽぽに抱っこしていた。反対側にはももがたんぽぽに抱っこしている。
あたしはたんぽぽにぎゅっと強く抱っこしてしくしく泣いた。
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次回は「たんぽぽと水遊び」だよぉ。
次回をお楽しみに♪