第2話 たんぽぽの足治療
あたしが目覚め、たんぽぽを抱いた時には、パパが獣医さんの所で治療を終わらせた翌朝だった。
あたしはたんぽぽを抱き抱えようと頑張った。お腹から背中からお尻から引こうと「う〜ん」とうねるがたんぽぽは動こうとしない。
「たんぽぽ待ってて」
あたしは農屋から玄関に周って入るとパパを探した。
「ママぁ、パパはどこ?」
「農屋にいなかったぁ?」
「パパいない」
あたしは首を横に振った。ママも首を振る。
あたしはパパがいそうな所を頭の中でクルクルしてみる。
あっ
あたしはくるっと向きを変え玄関を出ると農屋に行った。壁に立てかけてあるロフトの梯子をうんしょっうんしょっと運んだ。
「パパぁ、ご飯できたよぉ〜」
するとロフトからひょっこり顔を出したパパがいた。
「パパ見っけ」
「すみれ嘘ついたなぁ」
パパは上半身を起こしロフトからうわっと乗り出してきた。
「うわっ!」
あたしは尻餅をつき藁敷の絨毯に寝転んだ。
「パパいけないんだ。驚かしたらいけないんだぁ♩あ〜らら♩こ〜らら♩」
人差し指を振り振りパパを指刺した。
「パパ驚かしちゃった。ごめんごめん」
パパはパーとパーをくっつけあたしに向かってお辞儀をした。あたしはうんと頷きパパに用がある事を思い出した。
「パパぁ、たんぽぽが動かないの」
「たんぽぽはまだ足が痛いから動けないんだよ」
「え〜、こまるぅ」
あたしは藁敷の絨毯の上で手足をばたばたさせパパを困らせる。
「それじゃあ、ももちゃんのパパさんの所に行こう」
「もものパパさん?」
あたしはももにたんぽぽを見せたくない。ももにはあたしがたんぽぽに颯爽と乗る姿を見せたい。歩けないたんぽぽは見せたくない。
「ももに会いたくない」
「ももちゃんと会いたくないのか?」
「今ももと会いたくない」
パパはう〜んとうねるとパーにグーを叩いた。
「ももちゃんのパパさんだけに会おう」
あたしは渋々《しぶしぶ》頷く。たんぽぽはパパのよんだぶりゅでぃ(4WD)の後部座席に乗せられ、もものパパさんに会いに行く。
もものおうちのドアにはライオンさんがいる。ライオンさんが咥えている輪っかを持ちコンコンコンと3回叩くと誰かが出てくる。
「は〜い」
あたしはパパの後ろに隠れ顔だけ出す。もものパパさんがドアを開けた。
「おや、すみちゃんこんにちは」
あたしはサッと出て丁寧にお辞儀をする。
「パパさんこんにちは」
「今日はどうしたの?」
「たんぽぽの足が悪いの。パパさん助けて」
「うん。良い子だ。よく言えたね」
パパさんはパパと何か話している。あたしはももがでて来ないか気が気でない。パパさんの足の隙間からちらちら中を覗いても「もも」の姿が見えない。
「はぁ」
あたしはほっとして小さい胸を撫で下ろした。
「分かりました。やってみてましょう。すみちゃん?ももと遊びたいの?」
あたしはパパさんを見上げ頭を横に振る。今はももと会うわけにはいかない。
パパさんはママさんと何か話し治療方法を決めたらしい。
「治癒魔法で治療して強化魔法で足腰を強化しましょう」
「勇司さんよろしくお願いします」
あたしもパパと一緒にお辞儀をした。
パパさんはたんぽぽの足に手を当て青白い光を当てる。暫くすると今度は両手をたんぽぽに当て白い光を当てる。
すると、たんぽぽは立ち上がり飛び跳ね始めた。あたしはたんぽぽを捕まえようと追いかけるが一向に捕まらない。はぁはぁ息が上がりしゃがみ込んだ。
たんぽぽはあたしを見てしゃがんだ。
「勇司さんありがとうございました。ほんの僅かですが」
「浩介さん、受け取れません。今度一杯奢って下さい」
大人の世界が終わるのを見届けるとあたしのお家に帰った。
これから、あたしとたんぽぽの修行が始まる。
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次回は「たんぽぽ初めてのお散歩」だよぉ。
次回をお楽しみに♪