9話 迷宮、挑戦!
迷宮につづく道は、相変わらずゴブリンばかりだった。
もう見飽きた相手だったので、動きを読んで回避と同時に斬り、最小限の動きで倒す。
流石にこの程度の相手は、アシスト無しスタイル無しで倒せないとな。
スタイル有りの時の動きを覚えておいて、イメージトレーニングを繰り返すだけの簡単な行為。
あとはそのイメージ通りに体を動かすだけだ。
ちなみに。
ライトセイバーのアシストは、俺の手に流れる電気信号から行動を先読みして、動きを作って力場にフィードバックするみたいだ。
道理で体がイメージ通りに動かせるわけだ。
型を使わない方は"通常アシスト"で、
型を使う方は"強化アシスト"というらしい。
イフェルに獲物を譲り練習しながら、休憩を挟みつつ半日近く歩くと。
奥の緩やかなカーブを超えた先に、巨大な扉が見えた。
いかにもな雰囲気にテンションが上がりそうになるが、そこは女性の前。
必死に耐えて、しかし扉の目の前に辿り着いた瞬間、ワクワクから口角が上がったのをイフェルに見られ「落ちつきなさい」と言われてしまった。
気を取り直し、二人で扉を押すもビクともしない。
《お知らせいたします。
この扉は強固な魔力結界による封印が施されております》
魔力による結界。それは、魔力付与による強化と同じ。
強度や効果の差こそあれ、攻撃重視型の防御貫通機能で破壊可能だ。
俺は即座に攻撃重視型を起動し、出力上昇と防御貫通機能を用いて扉を破壊した。
「嘘……迷宮の結界は、魔術師にしか解除できないのに……!?」
「あー、解除用の魔術とかあるのね。
まあ、マスターキーみたいなもんだ。
さ、入っちまおうぜ!」
俺はイフェルの手を引き迷宮に入った。
………
……
…
中は石のレンガで作られた地下室みたいだったが、下を覗き込んでみると、真っ暗な闇が広がっていた。
「中は思ったよりきれいだな」
そう言ってみる。
気弱な金髪君が「もう帰ろうぜ…」と返してくるかと思ったが、俺が一緒に入ったのは緑髪の美少女。
それに入ったら出られなくなる洋館じゃないので、安心していい。
まあ化け物は出るだろうけどな!
「そうね。
ただ、魔物の反応がそこら中にあって落ち着かないわね」
「確かにな。青色ならシチュぴったりだが……」
ガタ、と物音がした方に、二人息ぴったりで振り返るが、そこに居たのは少し苔むしたゴブリンだった。
「キシャァ!」
「ま、そりゃそうだよな」
手慣れた動きで体を両断し、続く道へ進む。
複数に分かれた道があり、両隣の通路の影からゴブリンが飛び出してきたり。
石のレンガひとつが罠のスイッチになっていたりと、なかなか楽しませてくれた。
強化力場があったおかげで、不意を突かれて背中に攻撃を受けても大したダメージにはならなかったし、巨大な丸太が降ってきた時は両断して破壊した。
流石は迷宮と言ったところか。
正面から破壊して進んでいる最中。
イフェルは口を大きく開いて驚いていた。
確かにあんな危険なトラップは、索敵魔法などを使って事前に調べ、解除するのが普通なのだろう。
ま。俺とリディにかかれば子どものいたずらに等しいもんだ。
いや、最近の子どもの悪知恵はなかなかだ。気を付けなければ………。
とにもかくにも、俺たち三人(うち一人はライトセイバー)は迷宮の奥へと進んでいく。
時折ジャイアントゴブリンが現れたりしたが、彼らは武器を持っていなかったため、ライトセイバーの餌食になった。
仕方ないね。魔力による防御ができないなら、防ぎようがないのだ。
いかに肉体を鍛えようとも、魔力操作が出来ないと勝てない。
それがこの世界のルールみたいだ。
とはいえ、生半可な魔力防御なら、それこそ攻撃重視型の『防御貫通効果付与』で一方的に破壊し、そのまま倒してしまえるわけで。
俺は思った。このライトセイバー。
チートじゃね?
そんなチート武器を片手に、俺たちは迷宮攻略を進めていく。
ふつうは緊張とかするだろうけど、残念ながら初期武器が強すぎる俺には恐怖とかはなかった。
それよりも、戦っていて楽しかった!
倒したことがあるのはキノコ、ゴブリンくらいだが、それでも自分の力で敵を打ち倒すことができるのは、爽快かつ非常に心が満たされた。
そうだ。ゲームと同じだ。
強敵と戦い、勝利することに快感を覚える。それを、自分の体で出来る。
仮想世界に入ってアバターを動かす、とかそういうのじゃない。
本当に、自分の体を、命をかけて戦う。
恐怖を乗り越える成長が、楽しくて堪らない!
俺の動きを助けてくれるリティの存在が頼もしい。
そんな相棒と共に、まだ見ぬ世界へ、俺よりも強いやつを倒したい!
幸い運動神経は悪くない方だ。もっともっと学んで鍛えて、強くなってやる!
オレは、迷宮の中でそう自分に誓った。
戦いを楽しみ、成長すると。
「いくぜおらあああああ!!!」
心躍る心地のまま、オレは魔物の群れに向かって走り出した。
切り裂き、回避し、隙をついて一撃を叩き込む。
ブレードを警戒する奴には、フェイントに利用して殴り飛ばし、着地と同時に首を断つ。
延々と魔物の大群を捌き続ける中で、オレの意識は快感、本能のままに戦い続けていた。
「……ふぅ。」
気づくといつの間にか、大群は全滅していた。
《素晴らしい戦いぶりでした!》
お、嬉しいね。
だがまだまだ無駄が多いな。もっと成長できる証だな!
《はい。お供いたします!》
とまあ、そんな調子で戦い続けること数時間後。
俺たちは大きな扉を発見した。
そして、その大扉の前にいるのは、巨大な鎧。
地面に巨大な幅の広い剣を突き刺し、こちらを睥睨している。
「なんだあれ。見ただけ分かるぞ。
ゴブリンよりも明らかに強いだろ」
なんなんだこの迷宮。
明らかに弱かったゴブリンは大量に配置して、門番は強そうな鎧。
難易度のアンバランスさがすごいな。
「この迷宮を作ったやつは、リソースの無駄遣いだな。
あんなに大量のゴブリンを配置するくらいなら、あの鎧をもう一体用意すべきだろ」
「え、あなた今、迷宮を作ったって言わなかった?」
「うん。言ったけど」
そもそもの話、迷宮に天然などないだろ。
迷宮が自然発生するなんて、それはあり得ない。
砂漠に時計が落ちていても、自然発生したとは考えない。それは同じだ。
その話をすると、イフェルは驚いていた。
「確かにそうね………当たり前すぎて気づかなかったわ」
「だよな。ま、それは置いといて」
問題は鎧だ。
背丈は3mくらいありそうだ。
ゴーレム系か、中にゴブリンが入っているのかわからないが、なかなかに強そうだ。
……ふむ。ダメだな。
強敵を相手にして、オレは心の高ぶりを抑えられなかった。
ブレードを起動し、身を隠していた物陰から飛び出てしまったのだった。
だって、楽しみすぎるんだもの。仕方ないだろう、うん。




