6話 同行者
オレが助けたイフェルという少女。
一応武器を持っているみたいだし、魔物が出ると知っていてこの洞窟に入ったみたいだ。
オレにはこの場所の知識がない。
なので彼女からこの場所について話を聞いてみることに。
「ここってどこ?」
「最近迷宮が発見されたみたいで、禁域に指定されていた地区にある洞穴よ。
迷宮に繋がっているかと思って探していたのだけど……どうやら先駆者が居たみたいね」
「そーいやまだ道が続いてたな。
あの先に行くのか?」
「そうね……足をケガしてなければ行くんだけど、一日くらい休んだ方が良さそうね」
「足の方は大丈夫そうなのか?」
「ええ、大丈夫だと思うけれど……。」
そう言ってはいるが、足の痛みはかなり苦しそうに見える。
俺は多分、足を怪我しても力場で強化して負担を減らせるだろうが、彼女の場合、足が動かなければ死に直結するだろう。
「一日で完全に治るならいいけど、そうじゃないなら引き返すべきだろ。
さっき倒したジャイアント・ゴブリンとか、多分回避出来なきゃ最悪死ぬぞ?」
力場がある俺と違って彼女は生身。
見たところ革の鎧や鉄の胸当てくらいはしているようだ。
だが、頭部にあの一撃を喰らえばひとたまりもないだろう。
「そうね……せめて洞窟の外で野宿でもするべきかしら」
「ちゃんと眠れるとこの方がいい。
外がここより安全とは限らないだろ?」
「一刻も早くこの迷宮をクリアしたいけれど……仕方ないわね」
「そうするべきだ。
せっかく助けたのに死なれちゃ寝覚が悪いぜ」
「何それ……まあいいけど。
じゃ、私は街に帰って休養するわ」
「それがいい」
納得してくれたようで助かった。
彼女を守りながら戦うのは、素人の俺じゃ無理だ。
「じゃあ行きましょうか」
「へ?」
いきなり同行を求められ思考が止まる。
「そこまで言ったんだから、勿論一緒に来てくれるのよね?」
この女、なかなか図太い……!
まあ俺も一度落ち着ける場所に行きたかったし、丁度良かったのかもしれない。
「抜け駆けなんてさせないわよ?」
「げ、ばれてたか」
「ふふっ、顔見れば一発よ」
実は誰も踏破してない迷宮を攻略したいと思っていたのだが、バレていたようだ。
「じゃ、よろしくな!イフェル!」
「ええ、よろしくね。レイジくん」
こうしてオレとイフェルはダンジョン脱出を目指して動くことになったのだった。
あんなゴブリンの数を倒してしまったからか、大群らしい大群には出くわさなかった。
ちょくちょくでてくるゴブリンを千切っては投げ、千切っては投げ。
斬るたびに
何なのその剣?
その剣の刃はどうなっているの?
とイフェルが質問攻めしてくるので、そのたびにリティに聞いて、それを教える。という謎の会話を繰り広げていたわけだが。
実際この刃がどういう構造で、どんな仕組みで敵を斬っているのかオレも知らなかった。
リティが言うには、
この世界の物質には、微量の魔力が含むようだ。
その魔力が物体の強度を高めているという。
このライトセイバーの刃は、その物体の強度を高める魔力を吸収し、原子同士の結びつきを弱める。
そして、脆くなった部位に、物体の強度を強めるのとは逆の働き、破壊をする魔力の働きを利用して切断するとのことだった。
イフェルがいうには、この事実を学会で報告すれば、天地がひっくり返るほどの発見らしい。
まあ、あいにくとオレはそんなことしている暇はない。
というか、じゃああの場合はどうなるんだ。
魔力を纏うゴブの剣は、破壊出来なかった。
それはどういう理屈になるんだ?
《解答します。
それは、他者の意思で操作された魔力は、こちらの魔力吸収の干渉を弾くからです。
同様に、自ら魔力を発し、纏う武具も魔力吸収を弾きます》
じゃあどうやって魔力の膜を破っていたんだ?
《魔力の膜にはそれぞれ固有の振動波を持ちます。
ニュートラル状態や他の型を使う際は、力場の持つ波形が振動波と干渉し互いに中和、少しずつ消耗していきます。
攻撃重視型では事前に固有の振動波を解析し、力場に逆位相の振動波形を発振させて破壊します。》
なるほどな。
何やらムズカシイ話をしているように聞こえるかもしれないが。
要は簡単な話、敵の防御の弱点を突くように、ライトセイバーの性質が変わるってことだ。
ゲームでいうなら有利な相手にのみ発生する特攻ダメージみたいなものだろう。
しかも、それを相手が変わるたびに弱点特攻ダメージを与えられる、みたいな。
《概ねは正しいかと》
だそうだ。
だとしても攻撃重視型は火力が高過ぎるように思う。多分ジャイアントゴブリン、訳してジャイゴブ相手でも過剰火力だ。
《対象のエネルギー量が多量な場合、魔術や特性、スキルによって強力な防御障壁を展開している場合等には、攻撃重視型が最も適切かと思われます》
だろうな。
ゴブもジャイゴブもそんな障壁を持っていた覚えはない。
これは過剰火力だったかもな。
もっとバランスのいい型にすべきだったか。
少しだけ後悔した。
と、少しだけ相棒に詳しくなったところで。
丁度迷宮に続く洞窟の出口に辿り着いたのだった!
外は森。木々の生い茂る光景が飛び込んでくる。
草むらのカーペットは日光を反射して青々と輝いている。
至って普通。
3DRPGのディスプレイに映る画面と同じだ。
まあ、それが今は実際に目の前に広がっているわけだが。
「イフェル。ここから街までの道案内は頼むぜ」
「ええ。任せて頂戴」
一応イフェルには、ライトセイバーの発する強化力場を怪我した足に纏わせている。
俺が近くにいないと動きに合わせられないとリティは言っていた。
これで負担を減らせるなら安いものだ。
そうして俺たちは、街へ向かうのだった。




