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5話 邂逅

 この世界に来てから半日ほどが経過した。

 あれからはゴブリンと会う事もなく、歩き続けているわけだが、一向に出口が見つからない。


 どこにあるんだよ。出口。

 半日歩き回っても見つからないって。

 どんだけ広いんだよ!


 これはもしや、迷宮(ダンジョン)というやつなのでは!?


 だったら好都合だ!

 敵を倒せば戦闘訓練にもなるし、ライトセイバーの新しいスタイルの解放にも繋がるしな!

 

 だが問題は、食料だ。

 ゴブリンは人を食ってそうだから嫌だし、流石に人型は食いたくないし。

 てか魔物は食えないしな。倒したら魔力になって霧散するみたいだ。


 どうしたものか……。

 

 途方に暮れるが歩くしかない。

 幸い散歩好きだったので、歩くのとか走るのとかは得意だし好きだ。

 

 これもトレーニングの一環!と自分に言い聞かせるのだった。


 ………


 ……


 …


 それから数分後のことだった。


 ばたばたばたばた、と歩いている方向から聞こえた。

 何やら異音が混じっているが、これは足音からするに、おそらく……。


 大群でこちらへ向かってきている。

 そんな気がする。


 嫌だなあ、戻りたくないなぁ。

 だってさ、こんな歩いたのにまた走って元の位置に戻るんだぜ?

 二度手間じゃねーか。


 と、毒付いていると。

 大量の足音に紛れて、カッ、カッ、という甲高い音が紛れているのに気づいた。

 さっき違和感に覚えていたのはこれだったのか。


 なんだなんだ……?


 《足音を解析しました。

 女性のヒールを履いた時と一致します。

 また、大量に響いているのはホブ・ゴブリンの足音で間違いありません》

 

 なんてこった。誰かが追われてんのか。

 これは助けてやらないと。


 《警告します。

 攻撃重視型(バスター・スタイル)では手数が足りず、押し切られる可能性がございます》


 そうだったな。さて、どうしようか。


 《提案します。

 (スタイル)を使用しないニュートラル状態ならば、強化アシストは起動しません。

 通常のアシストのみとなり、威力は下がりますが連続攻撃が可能となります》


 それならちょうど良さそうだな!

 ぶっちゃけ、攻撃重視型(バスター・スタイル)程の火力は過剰だろう。


 じゃあ、スタイルの機能は一旦解除してくれ!


 《かしこまりました。マスター》


 そう聞こえたと同時にブレードの色が元に戻る。


 そして数分待ち構えていると、目の前から誰かが走ってきていた。

 

 「おーい!」


 始めての現地人との邂逅。

 オレは少し興奮していたのだ。

 だが、それは最悪なものとなった。


 走っているヤツの背後には、大量のゴブリンが。

 多少さっきの奴らより小柄。

 だが、数が尋常ではなかった。


 え、数多くね。

 オレ、精々十二匹とかその程度だと思ってたんだけど……。


 予想に反して地面を埋め尽くすほどの数。

 びっちりと通路を端から端まで。


 《総数五十八匹》


 言わないでくれ!絶望が現実味を帯びる!


 ひとまずこっちへ逃げてきているヤツに話を聞かなければ。

 幸い、オレ一人じゃ厳しかったかもだが、二人なら行けそうだ。


 「……っ!? ごめんなさいっ!」


 俺は女性の声を聞くや否や、並走するべく走り出す。


 「なあ君!いまどういう状況!?」

 「見てわからないの!?こういう状況よっ!」


 と、後ろに指を指す。

 大量のゴブリンに追われている。確かに見てわからないわけがないか。


 「どうしてこうなったんだ!?」

 「一本道だと思ってたの!でも脇道からゴブリンが大量に出てきたの!

 その脇道が何個も有って、引き気味に戦ってたらこんな数になっちゃったのよ!」

 「なっちゃったって……」


 2度あることは3度あるものだ。

 流石に気づけよ……。


 てか、なんでオレこの子の言葉が分かるんだ?

 というか、なんでこの子にオレの言葉が通じるんだ?


 《私か翻訳しております》


 おっけー!こんな状況でも動じないリティの図太さがオレに安心を与えてくれるぜ!


 なんだか落ち着いてきた。

 よし、打開策を考えよう。

 ひとまず横を走る女性に聞いてみるか。


 「なぁ、アンタ……って、あ」


 話しかけようとした瞬間。

 目の前にあった小石につまづいてぶっこけていた。


 そしてその小石。俺が何度か試し斬りした石だ。


 まずいな。ゴブリン達との距離が思ったより近い。


 「キッシャァァァァ!!!」

 

 今から走り出しても加速中に背後から攻撃を受けるだろう。

 

 よく見てみると、軽い捻挫のような曲がり方。

 これじゃ走り続けるのは困難だ。


 この子が転んだのはオレが試し斬りしたせいだ。

 だったら、こんなところで魔物に殺させるわけにはいかない。


 「ちょいと失礼。」

  

 オレはアシストを起動した。

 強化力場の出力が上がるのを肌で感じる。


 身体能力を向上させた。

 彼女を抱えてそのまま走り出す。


 「ちょっと走るからしっかり捕まってろ!」


 何やら抗議の声が聞こえたが、今は命が大事。

 というわけでガン無視猛ダッシュだ。


 力場に物言わせてさらに速度を上げた。


 ゴブリンたちが見えなくなった。

 彼女を丁寧に下ろしてライトセイバーを構えた。


 「今のうちに逃げろ!オレが時間を稼ぐ!」

 「だ、だめよそんなの!私も戦うわ!」

 「その足じゃ無理だろ。いいから逃げろって!」


 似たような会話の応酬を繰り返していると、足音が近くまで来ていた。


 「近づくなよ。マジで危ないから」


 真剣にそう言うと彼女はこくりと頷き、間合いを取る。

 剣を振った時の範囲内、つまり刃圏内から離れてくれれば思う存分に戦える。


 「よし、やるか!」


 オレはブレードを構えてゴブリンを待つ。

 

 「何その剣……!?」

 

 何やら驚いているが今は無視だ。

 今の状態ではアシストが弱い分体を自由に動かしやすいだろう。


 気を引き締める。


 ゴブリンの群の先頭が唾液を撒き散らしながら飛び掛かってくる。


 すかさず強化力場のアシストを使って加速し踏み込みながら真っ二つにする。


 そのまま左右から同時に飛び掛かる二匹を、片方を避けもう片方を斬り、その軌道のまま振り抜いて残った方にも命中。


 と言った具合に、頭で作ったイメージのまま動かしていると、いつの間にかゴブリン達を全員倒していた。


 少し疲れた。というか喉が渇いた。


 「……まさか、あの数を一人で……!?」


 目の前で倒していたのに、信じられないと言った顔で驚いている。


 「なあアンタ。飲み物無い?」

 「あ、はい。どうぞ」


 フード付きのマントに身を包む彼女から水をもらうと、ごきゅごきゅと飲んでから返す。


 「てか、あなた何者?」

 「オレはカモトレイジ。アンタは?」

 「私はイフェル。助けてくれてありがと」


 イフェルは名乗りながらフードを外す。

 緑色の髪が特徴的な、顔立ちの整った少女だった。

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