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18話 厄介ごとは楽しいこと!

 冒険者ギルドへ向かっていたオレとアウス。

 イフェルは異空間内でお休み中だった。


 その時、凄まじい轟音が鳴り響いたのだ。


 「なんだなんだ?」

 「わからない……見に行ってみよう!」


 アウスとオレは音の鳴った方へ向かう。

 

 駆け付けた先で見た光景。

 壁が破壊され、大量のゴブリンが街へ入って来ていた。


 「おいおいマジかよ…!」

 

 俺とアウスはゴブリンの対処をすることに。


 「そこの二人!はやく逃げて!」

 「それより衛兵を呼んでくれ!オレたちはここで食い止める!」


 聞こえた声にそう返すと、オレはライトセイバーを、アウスはビームシールドを展開した。

 

 「うそ、ライトセイバー?」


 そう聞こえ振り返ると。

 そこには、明らかに日本人顔の女性が居た。

 黒髪のセミロングに黒目。童顔。可愛い。


 「そうそう。ってか、アンタもこっちの世界に来ちゃった口か?」

 「そうそう。交通事故でね……って、それどころじゃない!」

 「たしかに数がヤベェな……アウス、いくぞ!」

 「ああ!僕は右を抑える!」

 「じゃあオレは左を」


 オレとアウスが構え、走り出す。

 そこに同郷の女性が追走してきた。


 「あたしは真ん中を抑えるわ!」

 「戦えるんだな? じゃあ任した!」


 アウスは盾加速攻撃(シールド・バッシュ)の加速でゴブリンを薙ぎ払い、そのまま右へ逸れて行った。


 俺はライトセイバーで逃げる人々を守りながら、左へ逸れて行く。

 その時に、同郷の日本人女性は。

 なんと、棒を取り出した。


 そんなので戦えるのか……?

 と思ったのを、俺は後悔した。


 女性は棒を構えた。

 すると、棒の先から、光の刃が生じた。

 どうやら彼女の初期武器は、ビームランスのようだ。


 「この件が終わったらちょっと話そ?」


 そう言い、凄まじい槍捌きでゴブリンを撫で斬りにしていく。

 

 オレも話してみたいし、さっさと済ませよう。


 オレたち三人は衛兵が到着するまでの間、ひたすらにゴブリンを食い止め続けた。

 アウスの武器は戦闘向きではないため不安だったが、それは杞憂だったようだ。

 

 剣状に変えたビームシールドでゴブリンを何匹も切り倒していた。

 ビームランス持ちの女性は素晴らしい槍さばきで、相当な技量を持っていることがわかる。

 

 衛兵が到着した後は前線を交代し、オレたちはその場を離れた。

 健闘を称えるため名前を呼ぼうとするが、名前がわからない。


 「ナイスファイト。アウスと………えーと、名前は?」

 「あたしはモリシロ・リナ。そっちは?」

 「オレはレイジ。カモト・レイジ。そっちのはアウス・ノーザクス」

 「レイジくんにアウスくんね。よろしく!」

 「リナさん。よろしくね!」


 挨拶を終え、オレたちは冒険者ギルドへ向かう。

 

 「やっぱりオレ以外にもいるんだな。異世界転生者」

 「いやーっ、凄い偶然だよね。

 この広い世界で、異世界転生者が出会うなんて」

 「だな。リナはこの世界に来てどれくらいだ?」

 「私は2年くらいかな……」

 「そんなに長く……。俺は5日目だ」

 「え!? そんな最近なのにあんなに戦えるの!?」

 「いやいや、俺はそんなに強くないぞ。たぶんアウスの方が強い」

 

 などという会話をしていると、冒険者ギルドが見えてくる。


 「そういえば、二人の目的は?」

 「オレは冒険者ギルドに登録に。アウスは付添いだ」

 「身分証明できるものは便利だもんね。運転免許がないといろいろ不便みたいに」

 「まあ、異世界で運転免許なんて意味ないけどな」

 「だね。代わりに冒険者登録証があればいろいろと楽だし」


 ギルドに入り、受付で新規登録手続きを済ませ、俺は晴れて冒険者となった。

 登録審査とかないのか。まあ楽でいいがね。

 それに、異世界転生して冒険者になるとか、徐々にこの世界になじんでいるような気がしてワクワクするな!


 さて。冒険者登録が済んだことだし、消耗品&ベッドを買いに行こうかな。

 

 そこでふと思った。

 リナは一体ここで何をしていたのだろうか、と。

 冒険者なのか、ただ旅をしているのか。


 聞いてみよう。


 「なあ、リナ。君は今、何をしているんだ?冒険者とか?」

 「あたしは…………」


 リナは顔を顰める。

 その時、大声が聞こえてきた。


 「おい! リナ! どこほっつき歩いてやがる!?」 

 「あ、ツルハラヤくん………」


 ツルハラヤ……どこかで聞いた名前だ。


 「ったくよぉ、いきなり姿が見えなくなったから、逃げ出したのかと…………」 

 「お」

 「…………誰だこいつら」


 声の主は金髪に染めた、日本人。

 おいおい、今日はツイてるな。こんなにも同郷の人間に会えるなんて。


 「よ、お疲れさん。アンタも転生者?」

 「おう。お前もか」

 「ああ。ツルハラヤっていうのか。オレはカモト・レイジ。よろしくな!」

 「ほう……お前の武器は?」

 「初期武器の事か? オレはライトセイバーだったよ。アンタは?」

 「オレはビームブラスターだ」


 ビームブラスター!

 俺はてっきり槍や盾、剣だけかと思っていたが、まさか銃があるとは!


 「おお!すげえな!」

 「ふふん、だろ?」


 指輪が強く震えた気がするが、気のせいだろう。

 オレは構わず話を続ける。


 「ツルハラヤ。あんたは…………ん、待てよ………」


 口に出して、ようやく思い出した。

 ダッカーが口にしていた言葉だ。ツルハラヤという名前は。

 ダッカーの妹と母親を蘇生してやると、取引を持ち掛けた男だったはずだ。


 たしか、人攫いを始めたダッカーの、取引先だったはずだ。

 ……おいおい。まさかこんな早くに出会うとはな。


 「ライトセイバーか。槍よりは使いやすそうだな」

 「それはどうだろうな。リナの槍の扱いは見事だった」

 「なあ、レイジ。お前ら二人と行動を共にしたいんだが、いいか?」


 何かを企んでいるのだろうか。

 それとも、単純に異世界人同士で固まりたいのか。

 

 「そ、それは…………」 

 「どうだ?」


 リナが嫌がるそぶりを見せるも、まるで気に留めない。

 こいつら仲間じゃないのか? まるで奴隷と主人みたいだ。


 「魅力的な提案だが……俺達には目的があるんだ。それにアンタを巻き込むわけにはいかない」

 「目的とは?」

 「偶然話を聞いた転生者に会いに行くんだ」

 「そうか。問いただして悪かったな!

 また会えたら、今度は一緒にパーティを組もうぜ!」

 「悪いな。助かる」


 そう言って、オレはそそくさとその場を去る。

 そして尾行し、ツルハラヤを探るはずだった。


 急に周囲の光景が真っ黒に染まり、壁にぶつかった。


 「なんだこれ」

 「そうそう、言い忘れてたけどよ。お前らとは二度と会えそうにない」

 「なんだって?」

 「ここで死ぬからな」


 振り返った瞬間、ビームブラスターを構えたツルハラヤが、その銃口をこちらに向けていた。


 「死ね。そしてライトセイバーを寄越せ!」

 「レイジくん!」


 アウスは即座にビームシールドを展開。

 防御力場の膜がビームブラスターの放つ高速ビーム弾を防ぐ。


 だが、ビームシールドは。


 たった一発のビーム弾で、破壊された。


 「ほう、シールドもあるのか。

 念のために徹甲弾(アーマーピアス)に切り替えておいて正解だったぜ」

 「ばかな………」


 ヤツの放った弾は、攻撃重視型(バスタースタイル)の『防御貫通効果付与』に似た効果を持っているようだ

 どうやらヤツはここでオレ達を殺すつもりらしい。


 「何突っ立ってやがる。リナ。行け」

 「……はい」


 なるほどね。二人の関係はなんとなく把握した。

 あのビーム弾の威力を考えるなら、確かに従うしかないわけだ。


 「ごめんね。レイジくん、アウスくん…………ッ!!」


 凄まじい速度で薙ぎ払われるビームランスをライトセイバーで受け止める。

 鍔ぜり合い、動きが止まる。


 そこを、ツルハラヤはビーム弾で狙ってくる。


 (これは、厄介だな…………)


 おそらくツルハラヤはリナを使い捨てる気だ。

 じゃなきゃ、アイツは自分の銃弾が当たるかもしれない場所に、彼女を送るワケがない。


 というか、あの速度のビーム弾


 「アウス。撤退だ」

 「でも、どうやって!?」

 「俺がこの空間に穴を開ける。その時間を稼いでくれ」

 「……わかったよ、レイジくん!」


 オレはライトセイバーを構える。

 この空間の壁を破壊できれば、外に逃げられるかもしれない。


 「この空間を破壊するのは不可能だぜ?

 俺がこの世界に来て手に入れたアイテムの中で、最も強力だからな!!」

 「そうか」

 「どうするんだ! レイジくん!!」

 「だったら第二の策だ」


 オレはライトセイバーを構えたまま、アウスに近づく。


 「この空間を作っているお前を倒せば、出られるはずだろ?」

 「ハッ! それが無理だってのは分かってんだろ!?」

 

 臨戦態勢を整え、攻撃に移る準備を終えた。

 そのように見せかけた。


 「なわけねーだろ! 撤退だよ!!」 

 

 俺は即座に【入出自在】によるゲートでオレとアウスを包む。

 

 「騙されてやがるぜ!はっはーっ!!」

 「おい何してやがる、追え!」

 「…………はいっ!」


 ゲートに飲み込まれる瞬間、俺はビームランスがぎりぎり届いたため、ブレードで受け止めた。

 そして、ツルハラヤに気づかれないようにリナに言葉を伝える。


 「必ず助ける、待ってろ!」

 「……うん、待ってるよ」


 そして俺達は異次元空間へと脱出したのだった。


 待ってろ、リナ。助けてやるからな。

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