17話 一つ目の街 リオル
現在開放済みの型は二つ。
・《攻撃重視型》
・《乱撃重視型》
高出力、高火力のロマンと、高速乱撃とさらなる加速。
この二つは正直めちゃくちゃ強い。
手数で圧倒し、防御に回った相手を防御ごと倒す。
最高の組み合わせだ。
だが、問題もある。
それは、狙いをつけるのが非常に難しいという点だ。
高出力高火力の一撃は、手に来る反動を制御しなければならない。
高速乱撃と加速による手数攻撃は、攻撃が続く限り加速する速度を制御しなければならない。
どちらも高度な制御を求められる。
そこで俺は、リティから説明を聞き一つの型を選んだ。
それは、精密重視型だ。
精密重視型は、
《精密重視型》
【特徴】
・攻撃時の精密性、正確性に重きを置く型。
狙った位置を攻撃する際の動きを強くアシストします。
・『ブレードの精密動作性向上』
【効果】
┣狙いを定めた位置に命中するよう、最適な推力を発生させる。
┗反動を抑え、操作性を高める。
・『集中攻撃時身体能力向上』
【効果】
┗狙いを定めた位置に対し攻撃時、身体能力アシスト出力向上。
・『精密攻撃時攻撃補正』
【効果】
┗狙いを定めた位置に攻撃時、動作を補正する。
というのが効果らしい。
これなら、敵の攻撃を狙って弾くときや防御するときに大いに役立つだろう!
道中の魔物で試してみたが、使い勝手は非常に良かった。
スタイルを切り替え、ブレードが青く染まる。
その状態では、手に来るはずの反動が全く来ない。
起動しているかわからなかったくらいだ。
攻撃を弾くために狙いを定めてブレードを振るう。
すると、狙いを定めた位置に吸い込まれるようにブレードが当たる。
しかも、他のスタイルとは異なりあくまで精密攻撃性を重視しているだけ。
デメリットらしいデメリットはない。
そのまま即座に攻撃へ移れる。
しいて言えば、他のスタイルと比べて威力が低いくらいだ。
しかもそのデメリットは、もともと高い威力を持つライトセイバーのおかげで打ち消されている。
現在開放済みのスタイルの中、もっともバランスのいいスタイルだった。
そしてアウスのビームシールドの新機能。
《盾加速攻撃》。
かなり使い勝手の良さそうな機能だった。
その効果は、二つ。
《盾加速攻撃》
・盾に推力を発生させる。
・推力発生中はいかなる攻撃でも耐える。
盾を加速させ、その最中は破壊されない。
という、シンプルかつ応用が効きそうな効果。
盾自体で敵へ突進して体当たりすることや、攻撃を弾く際に使用して、武器や攻撃を跳ね上げさせることで、大きな隙を作れるだろう。
また、盾の形状を工夫して、剣を生やした時。
その剣を振るう際に、速度を持たせることで更なる攻撃力を付与できる。
実際、戦う覚悟を決めたアウスは、俺抜きで魔物を撃破していた。
盾の形状時に《盾加速攻撃》で攻撃を弾く。
そのまま生じた隙を逃さず、剣を生やした盾に《盾加速攻撃》を使って加速して切り裂いていた。
きっとまだまだ使い道は開拓できるだろう。
少し気になったことがある。
オレとアウスが戦ったらどっちが勝つかだ。
今のアウスはダッカー……じゃなくてフォーゼより強い。
アウスは防御が得意のようだ。
しかも、攻撃も筋がいい。
まあ、互いに即死級の攻撃力があるわけで。
試すにせよ、危険なのでやらないが。
とまあそんな感じで。
新たな能力の試しと所感であった。
およそ3日歩き続け、街に着いた!
イフェルはとても疲れているようだった。
俺とアウスは強化力場のお陰であまり疲労は溜まっていない。
とはいえ、流石にふかふかのベッドで寝たい。
異次元空間にベッドを入れておくのはアリかもしれないな!
幸いお金はまだ残っている。
寝具店にでも行こうか。
などと考えながら街の門へ近づく。
衛兵が門にいることや、街が壁に覆われているのを見ると、この辺りは魔物が良く出るのかもな。
「止まれ。身分証明ができる者は居るか?」
「ああ、はい。これを」
「……確認した。お入り下さい」
アウスは冒険者ギルドの登録証を見せて、難なく街に入れた。
にしても、冒険者になるとああして身分証が手に入るのか。
オレ一人で行動する時に有ったら便利そうだ。
「俺も冒険者になろうかな……」
「いいと思う。
もしなるなら三人でパーティを組もう」
「だな」
オレたちが辿り着いたこの街の名前は、リオルというらしい。
魔物の生息地や、他国との国境が近いようで。
冒険者が多く集う街とのことだ。
とはいえこの街に滞在するつもりはない。
食料と薬を買い込んで、明日には出発する予定だ。
みんなには内緒でベッドを買うつもりだ。
異世界の珍味が気になって買おうとしたが、イフェルに「無駄遣いしない!」と言われてしまった。
まあ流石にベッドは言われないだろう。
それと、この街で冒険者登録も済ませてしまおう。
いつまでも身分証明ができないのは、かなり不便になるだろうしな。
冒険者になれば宿代も安くなるみたいだし。
まあオレたちに宿代は必要ないけどな!
異次元空間の中は寒くもなく暑くもなく、って感じだ。
使い方がまだいまいちわからないが、異空間ストレージってのは楽だ。
しかも中で休めるし、宿代は浮くし、戦闘にも使える。
この世界に来て、2個目のチートアイテムだった。
体力の限界みたいだったイフェルは異空間で休むと言っていたし、俺とアウスは二人で冒険者ギルドへ向かったのだった。