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15話 エスケープ!そしてメタモルフォーゼ!

 さてさてさてさて。

 オレ達を殺そうとしていたダッカーを返り討ちにぶち殺したわけだが。


 事情を知らない、というよりかはダッカーの悪行を証明する証拠がない。

 つまり、アイツを殺っちまったのは非常に悪手だったかもしれない。


 そんな俺達がするべきことは何か。


 一つである。


 「おい、逃げるぞ」

 「「え?」」


 二人がそろって同じ表情と声を上げる。


 「逃げるんだよ!殺人者扱いされるぞ!?」

 「いや、実際に殺したのはレイジくんだし……」

 「おうおう、見捨てるのか!?」

 「……たしかに、逃げた方がよさそうだ」


 衛兵もいないような小さな街だ。

 幸い街の外側にいる。今からなら逃げ切れる。


 一応異次元空間にダッカーの死体を放り込んでおく。

 異次元空間なら腐らない。衛生環境も問題なし!


 「はい、証拠隠滅!

 ほら、逃げるんだぜ、イフェル、アウス!」

 「あ、ちょっと!」


 オレは強化力場を用いて全力疾走。

 二人もそれについてきた。


 走り続けること10分。

 街の姿が見えなくなるくらいの距離を走ると、イフェルが死にそうな顔で息切れしていた。


 「レイジ……くん、あなた速すぎるわよ……!」

 「そう、だね…………はぁっ、はぁっ………」

 「わりぃわりい。そんな怒んなよ」

 

 二人が息を整えるのを待って、俺はアウスに一応今回の旅の目的を伝える。


 「アウス。逃げ先、というか目的地はイフェルの実家だ。

 俺はそこにいるカデノコウジさんという人に会いに行く。

 別にアウスは付いて来てくれなくても構わなかったんだが…………。

 もし巻き込んだなら、ごめんな」

 「……いや、僕も付いて行くよ。

 レイジくんの破天荒ぶりは、イフェルだけじゃ止められそうにないからね」

 「そうね。私もそう思うわ。激しく同意するわ」

 「………複雑な気持ちだなぁ」

 

 多少もやもやする気持ちはあるが。


 こうして俺たちの旅のパーティメンバーに、アウスが加わったのだった。


 イフェルの実家への道のり。

 俺はイフェルに迷宮攻略で手に入れた指輪を渡してショトカしようと思った。

 だが、無理だった。

 どうやらこの指輪、一度嵌めたら所有者となり、所有者が死亡するまでは誰がつけても使えなくなるらしい。


 安易につけるんじゃなかったぜ……。

 と後悔もしたが、逆にこの三人で旅ができると思えば、少しワクワクしてきた。

 異次元空間に荷物を放り込めば、楽に移動できるしな。

 テントの代わりにもなるし、怪我をしたときに入れておけば【異空間保存】で傷の悪化を防げるしな。

 

 いやー、便利アイテムがあると旅は楽だなぁ。

 旅をしたいという憧れに付きまとう面倒ごとをすべて取っ払える。

 最高のアイテムを手に入れたかもしれないな、これは!


 「それじゃ、荷物を預かるよ」

 「え、でも………」


 あ、そうだった。

 ダッカーの死体を入れたままだった。

 【異空間保存】で感染症が拡散するとかはないだろうが、ここいらで証拠隠滅しておくか。


 「ちょっと処理してくるわ」

 

 俺はゲートを開けて中に入る。

 

 中に入ると、そこには奇妙な光景が広がっていた。


 「……マジかよ」

 「あぐッ………くそ、痛えええ!」


 体を両断したはずのダッカーが、動いていた。


 「おっす。元気?」

 「ひぃいいぃ!! レイジ!?」

 「なんで生きてんの? お前……ってそうか」


 たぶん、俺がこの空間にダッカーを放り込んだ時、こいつはまだ生きていた。

 そして、【異空間保存】によって死なないようになっている。のだろう。


 「た、助けてくれ………いや、下さい!」

 「いやいや、殺そうとしたのにそれはないだろ」

 「……お、俺だってやりたくてやったわけじゃねえ!」


 死に物狂いでそういうダッカー。

 もうコイツに興味なんてない。さっさと…………。


 と、思ったが。

 こいつの眼、本気だった。

 本気で俺に真意を伝えようとしている

 まあ怪しければゲートから外へボッシュート。そうすれば即死だ。


 話だけでも聞いてやろう。


 「んで、お前がイフェルを襲った理由は?」

 「……俺には病気がちな妹と母親が居たんだ。

 でもなんでか、俺は頑丈な体を持って生まれた。だから冒険者になって、妹と母親を治療費を稼ごうと思ったんだよ!」


 ふむ。悲劇ではあるがありきたりだ。

 それに、自分たちのために他人を不幸にするのは道理が通らない。


 「冒険者の依頼報酬だけじゃ足りなかった。

 だから人を攫ってツルハラヤっていうヤツに引き渡す闇稼業も始めた。

 でも、治療費に届く一歩手前で、二人とも仲良く逝っちまった………。

 途方に暮れる俺に、ツルハラヤは言ったんだ。死者蘇生の魔術を施せる魔術師を知っていると。

 紹介料と施術費用を稼げば、二人を蘇生してくれるって聞いたんだよ」


 ツルハラヤ?鶴原谷、という名前か?

 まあそれはいい。

 死者の蘇生ができるなんて、それは確かに気になる。


 「……すみませんでした。殺されかけてようやく目が覚めた。

 大切な人の死で、頭がおかしくなってた」

 「まあ俺に裁く権利はないからな。

 それに、助けてやろうにもどうすればいいかわからんしな」


 回復薬をぶっかけても千切れた胴体を繋げることはできないだろう。

 だが、もしかしたら助けられる方法があるかもしれない。 


 「……助かるかどうかは知らん。

 お前の意識を保ったままかどうかも知らん。

 だが、もしかしたら助かる方法があるかもしれん。それに賭けられるなら、試してやってもいい」

 「………ほ、本当か?」

 「ああ。だが、成功してもこの空間からはめったに出さない。外では喋らない。

 それを誓えるなら、いいだろう!」

 「………ああ。本来死ぬべき俺が、僅かでも助けてもらえるかもしれないなら………。

 お願いします!試してください!」


 よし。なら、試してやろう。


 指輪の能力に【存在創造】という効果があった。

 指輪を付けて中に入った時にしか、指輪の機能を詳細に確認できない。


 【存在創造】の効果。

 それは、魔力や物体を対象に、その存在を作り変え、創造するというもの。

 つまり、ダッカーの持つ魔力と武器、そしてダッカー自身を素材にその存在を作り替えることが可能なのだ。


 俺はいくらこいつが不遇な目に遭っていたとしても、罪を働いたことは看過できない。

 それを、身をもって体感してもらおう。

 そして、己の罪を忘れないように。


 「さあ、生まれ変わるがいい! ダッカー!!」


 ダッカーの体、武具が発光し、溶け合い、一つとなる。

 光の玉となったダッカー。蠢き、そして光の玉は弾けた。


 中から出てきたのは………。


 かつてのダッカーの姿とは見る影もない。

 イフェルと同等の美少女だった。


 手鏡をダッカーに見せる。すると。

 青い髪の美少女はわなわなと体を震わせ、叫ぶ。


 「な、なんじゃこりゃああ!!!!」

 「あっはははははは!!!」

 「な、な、なんだこれは!!」

 「これからお前には、この部屋の整理をしてもらう。

 あ、ちなみいろんな能力を付与できたみたいだが、オレの許可がなければ使えないからな。

 体の自由も俺が握っている。

 調子に乗ると即座に殺す。それは忘れるなよ」

 「はい。心得ています」


 ダッカーに付与できた能力は、

 【武器生成:大剣】【身体装甲】【魔力操作】【自由召喚】【無限蘇生】だ。

 【武器生成:大剣】の効果は、ダッカーが使っていた大剣を魔力を元に作り出すものだ。

 【身体装甲】は身に着けていた鎧を肉体と一体化させた。常時発動だ。

 【魔力操作】はダッカーの魔力操作技術を能力にした。

 【自由召喚】は【入出自在】を通して、どこにでも召喚できる。

 【無限蘇生】は、たとえ死亡しても異次元空間で蘇生できる。


 そしてダッカーには制約(ルール)を課してある。

 すべてで4つ。

 ・オレからの命令には絶対遵守。

 ・オレに噓は吐けず精神の声が丸聞こえになる。

 ・オレからは制約(ルール)を追加できる。

 ・オレの許可なしで能力を使用できない。


 オレがダッカーに施したのは、いわば戦闘奴隷化。

 オレ達のために戦い、奉仕する。

 ダッカーにはそれで、これまで奴隷に身を墜とさせた者達の償いをしてもらう。


 「じゃ、早速これからお前のこと………どう呼ぼうか」

 

 名前を決めていなかった。

 ダッカーだから…………ダカ子?いや、あんまりかわいくないな。

 五十音順を一字ずらして…………ナヌサ?

 あんまりしっくりこないな。


 変身は確か、英語でメタモルフォーゼって言うんだったか。

 メタ子……? モルコ……?


 フォーゼ。よし、しっくりきた。


 「今日からお前はフォーゼと名乗れ。

 いいな?」

 「はい。わかりました」


 従順な姿勢を見せているが、元がダッカーだと思うと笑いを我慢できなかった。


 「あー、面白!」

 「揶揄わないでくださいよ……」

 「よし、俺のことはマスターと呼べ。いいな?」

 「はい。マスター・レイジ様」

 「よしよし」


 イフェル達にはダカ子改めてフォーゼを紹介しておいた。

 ダッカーの死体はいつのまにか消えていた。

 そして、指輪の機能の説明係らしいと、伝えた。

 

 俺も知らないふりをしておくというワケだ。

 ダッカーはオレに不利な発言はできない。


 まあ真実は俺しか知らないし。

 中身がおっさんの美少女とか面白すぎるが、まあその羞恥心も贖罪の一部だ。


 とりあえずフォーゼに荷物の管理を任せ、オレたちは最低限の手荷物だけにした。


 回復薬、武器等はすぐに取り出せる方がいいからな。


 【入出自在】では、ゲートを開ける過程を踏まなくちゃいけない分、速度を求められる動作とは相性が悪い。


 とまあ。そんなこんなで。

 オレたちの旅は始まった。

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