表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/20

14話 圧倒



 ダッカーは、アウスをダンジョンで殺すつもりだったのだ。


 ダッカーはオレを睨み付ける。


 「レイジ。お前さえいなければ。

 イフェルは今頃、どっかの豪商の慰み者だっただろうによぉ……」

 「何を、言って……」

 「まだガキだが、大人なれば良い性奴隷になっただろうな。上玉を売り飛ばして、俺は大金を手にするはずだった」

 

 イフェルの顔が嫌悪、恐怖で染まる。

 アウスの表情は怒りで満ちる。


 「それで、どうするつもりだ?」

 「こんなところで二人も殺しちまったら、俺は大犯罪者だな。

 ……まぁ、俺を捕らえられるやつなんて居ないがな!!!」


 ダッカーは大剣に手を掛け引き抜いた。

 

 だよな。そう来るよな……。


 オレとしても、そう来て欲しかった!


 「お前とは楽しめそうだぜ、ダッカー!」

 「ぶっ殺してやるよ!レイジ!」


 これまでは魔物としか戦ってこなかった。

 人間との戦いは初めてだ!


 とはいえ、初の対人戦闘。

 オレは、ダッカーとの戦いで基本を学ぶことになるだろう。


 ダッカーは大剣と体に魔力を纏わせる。

 オレの知る限りでは、魔力を纏う行為に耐久性、防御力の強化以外の意味はない。

 

 だが、この世界を生きてきたダッカーは、それ以外の魔力を活用する方法を知っているかもしれない。

 

 《お知らせします。

 マスターのおっしゃる通り、魔力をただ纏うだけでは耐久性と防御力強化にしかなりません。

 ですが、纏った魔力を操作することで、攻撃力、運動能力の強化が可能です。

 攻撃を強化する技術を"魔纏戦技(エンチャント・アーツ)"と呼びます。

 武器と肉体に纏った魔力を操作して、攻撃動作を強化する技術です》

 

 やはりな。

 ダッカーはこの世界で生きてきた実力が備わっているが、オレにはリティがいる。

 何も恐れることはない。


 俺はライトセイバーのスイッチをオンし、高出力の光の刀身を発振した。


 「さて、いくぞ」

 「奇妙な剣だが、俺には通じんぞ!」


 ダッカーは土煙をあげるほどの膂力で地を蹴り間合いを詰める。

 オレも強化力場の通常アシストで距離を詰める。

 

 「死にやがれ!!!」


 ダッカーは大剣を上段から振り下ろす。

 オレは大剣目掛けライトセイバーのブレードをぶち当てる。

 魔力を纏う大剣はライトセイバーの威力を散らし、しかし高出力の刃は、大剣を弾く。


 互いの威力が相殺し合い、お互い弾かれる。


 「やるじゃねぇか」

 「お前もな」

 

 やはり、スタイルを使わない一撃の威力は低い。


 だが、攻撃重視型(バスター・スタイル)は外した時の隙が大きい。

 ここは乱撃重視型(ラッシュ・スタイル)を使おう。

 手数で押し、隙を見て攻撃重視型(バスター・スタイル)を叩き込んでやる!


 オレはスタイルを起動する。

 刀身が白色から緑色に変わり、手に来る反動が推力へと変換される。


 「色が変わった…?」

 「あれは、たしか……」


 イフェルは見たことがあるからな。

 アウスにもあとで教えてやろう。

 その代わり、アウスの盾の機能も教えてもらうがな!


 「……っ!」


 加速される刀身から高速の斬撃を繰り出す。


 ダッカーは大剣で防ぐが、即座に間合いを取る。


 高威力の分鈍重な動きとなる大剣。

 高速乱撃とでは、相性が致命的に悪いからだ。


 だが、逃しはしない。

 オレは間合いを詰め続け、ひたすら追い込む。


 「クソッ……どうなってやがる!」


 回避や防御によってライトセイバーの刃がまだ一度も肉体に触れていないのは、ひとえにダッカーの実力だ。


 だが、今オレが選択しているスタイルは、

 乱撃重視型(ラッシュ・スタイル)


 《手数重視の動作を検出。『乱撃時身体能力向上』が起動します。》


 その効果で、攻撃が続けば続く程に、その速度は上昇していく。


 「はっ、速すぎるだろ!?」


 大剣を構える暇も無いダッカー。


 《連続攻撃の動作を検出。『連続攻撃時加速』

 が起動します》


 ついには回避もままならず、絶え間ない乱撃を防ぐために大剣の影に隠れるダッカー。


 「なんなんだよテメェはよ!!」


 相性の悪い相手に、不利な状況。

 そう追い込まれた相手が次にする行動。


 それは、打開すること。

 現状から脱し、仕切り直したいはずだ。


 「邪魔だボケ!!」


 大剣ごと突進をかますダッカー。

 

 今、ヤツは俺の姿が見えていない。

 大剣で身を守り、即座に斬撃や刺突は行えない。

 ただただ盲目に、突進するしかない。


 いわば的。射ってくれと言っているようなもの。


 その隙を、待っていた!


 《乱撃重視型(ラッシュ・スタイル)から攻撃重視型(バスター・スタイル)へ変更します。》


 攻撃タイミングを合わせてくれたリティが、スタイルを攻撃重視型(バスター・スタイル)へ変えてくれた。

 

 力を溜め、そして踏み出した。


 《攻撃動作を検出。

 攻撃重視型(バスター・スタイル)の強化アシストを開始します》


 体がとても軽くなった。羽が生えたようだった。

 そして、構えた動きを補助する力を感じる。


 「うおおぉぉぉーっ!」


 地面とほぼ垂直に飛び、力場による加速が俺に推力の翼を与えた。

 左腰だめに構えたライトセイバーから、頼もしい手応えと共に、力ある獣の唸り声のような重低音が響く。


 猛獣唸る剣を、振るう。


 ヴゥゥゥゥゥン!!!

 

 荒れ狂う高出力の刃が、凄まじい肉体強化により発生した破壊力を伴い、ダッカーを捉えた。

 そして、


 《防御作用の構造、解析済み。

 ブレードの構造を変化させています。》

 

 嵐の如く暴れるエネルギーの奔流が、ダッカーの魔力防御を削り、剥がし、破壊して。


 大剣を切り飛ばす。


 「んなぁっ!?」


 だが、ライトセイバーの威力と速度は衰えない。

 それどころかさらに増す。


 大剣を容易く断つ光の刃は。


 ダッカーを、両断した。


 「ぎゃああぁぁぁぁぁっ!!!」


 体を真っ二つにされたダッカーは痛みで発狂。

 痛いと何度も連呼し、最終的には動かなくなった。


 死んだ。殺した。

 倒したのだ。


 「ふぅ……」


 オレ達を殺そうとしたのだ。

 殺されても文句は言えないだろう。


 にしても、振り返って見ればそこまで強い相手ではなかったなと思う。


 ラッシュで押して圧力を掛け、耐えきれなくなったところをバスターで倒す。

 これはなかなか強いのではないだろうか。


 「うそ、でしょ…」


 後になって聞いた話だが、ダッカーは熟練の冒険者だったらしい。

 それが奴隷商人に闇堕ちとは、恐ろしい話もあるもんだ。

 多分、イフェル以外にも狙われていたヤツは居たのだろう。

 

 

 駆け出しの夢見る冒険者の依頼に参加し、仲良くなって油断させる。

 その後は罠に嵌めて孤立させ、片割れを捕らえて奴隷にする。

 ダッカー、恐ろしい奴だった。

 

 だが、期待していたほど強くはなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ