13話 再会
オレにはずっと違和感があった。
イフェルと出会った時のことだ。
なぜ彼女は一人でダンジョンに向かっていたのか。
しかも、万全を期すべき状況で、怪我を負ってまでダンジョンへ向かったのか。
イフェルはきっと、アウスを助けに向かった。
少しでも生きている可能性を信じていたのだ。
だが、オレの説得に冷静になった。
あるいは、諦めた。
そんな事情があったのなら、話してくれればよかったのにと思ったが、それはオレを巻き込むと判断したのだろう。彼女はそういうヤツだ。
ダンジョンクリア後、オレ達は外へ出された。
多分、ダンジョンは攻略されれば強制的に、侵入者を外へ排出するのだろう。
そのことを便利だな、と印象に残っていた。
そして帰宅後、アウスのことをダッカーから聞いた時にオレはそのことを思い出した。
探索に向かおうと決めたのだ。
今にして思えば、オレに抜け駆けしないようにとイフェルが釘を刺したのは、諦めた決意を揺るがないようにしたかったのだろう。
正直、死んでいると思った。
だが、もしかしたら、アウスの遺体だけでも見つけられるかもしれないと思ったからだ。
それがなんと、生きていた!
しかも、オレのライトセイバーに似た、盾を握っていると来た。
彼が回復して、イフェルやダッカー。他のヤツらにその顔を見せたらどんな顔をするか。
しめしめ……喜びに咽び泣くと良い!!
と、オレは企み一人悪い笑みを浮かべたのだった。
フフフ……!
そして朝になった。
もう傷も大丈夫そうなので、アウスを起こす。
そして異空間から街へショトカで移動。
もう既に起きていたイフェルと、共に彼女の実家へ向かおうと、街から出る。
「短い間だったけど、大冒険したみたいだったわ。
それじゃ、行きましょうか」
と、イフェルが歩き出すので、呼び止める。
「その前に、会って欲しいヤツがいるんだよ」
「貴方に知り合いが居たなんてね。誰?」
ここでゲートを作り、アウスを召喚!
「……やぁ、イフェル。久しぶりだね」
イフェルは話さない。
代わりに、大粒の涙が睫毛に溜まっていた。
ここで俺はターンエンド。後は二人の時間だ。
………
……
…
泣き腫らした顔のイフェルを前に、アウスは屈託の無い笑みを浮かべていた。
「これで気兼ねなく冒険できるな!」
「ありがとう……レイジくん」
「助けてくれてありがとう。レイジくん!」
「良いって良いって、気にすんな!」
俺としても、二人が幸せそうでなによりだ。
「……生きてやがったのか、アウス」
野太い声でそう響く。
俺の背後に立っていたのは、ダッカー。
「そうそう。もしかしてと思って助けに行った。
そしたら生きてたんだよ。良かったな!」
だが、ダッカーの顔は歪んでいた。
「んー? お前が犯人なワケ?」
ダッカーの顔から伺えるのは、嫌悪、倦怠だった。
「せっかく奴隷にしがいのある女を見つけたと思ったのによぉ……。余計なことしやがって」
……やっぱりな。
事情は知らないが、アウスは慎重派だろう。
そんなアウスが危険なダンジョンに一人で挑むわけがない。
誰かに唆されたとしか思えない。
「ダッカー!?なんでそんなこと言うの!?」
「……そうか、やっぱり君が……」
アウスは説明してくれた。
アウスは、イフェルに認めてもらうために、ダッカーと二人でダンジョン攻略に向かったと。
だが、ダッカーとは途中ではぐれた。
アウスははぐれたと思わされただけで、違った。
ダッカーは、アウスをダンジョンで殺すつもりだったのだ。