10話 ゲートガーディアン
迷宮を進めていたオレ達。
探索の最中に見つけてしまった扉と、その扉を守護する巨大な鎧。
オレは居ても立っても居られないままに飛び出したわけだ。
「ちょっとレイジくん!?あの魔物は─────」
間合いギリギリまで踏み込むと、巨大な鎧は巨大な剣を引き抜き構えた。
「ワレ ハ ゲートガーディアン!!
シンニュウシャ ヲ ハイジョ スル !!」
「いいねぇそういうの! ワクワクするぜ!!」
鎧の魔物は上段に構えた大剣を振り下ろす。
対するオレは、攻撃重視型を起動させていた。
通常アシストで身体能力をブーストして、大剣を弾き飛ばす。
跳ね上げさせた動きを、ライトセイバーを担ぎ構える動きに繋げた。
よし、これで!!
構えた状態で鎧の魔物へ跳躍する。
すると、
《攻撃対象を検出。ブレードの出力が向上。》
腕を動かし始めると同時に、頼もしい手ごたえを感じる。
それはブレードの出力が上がったことを示していた。
ブレードの光が一層強まり、ブゥン、という重低音がヴゥゥンッ!!と大きくなる。
ブレードが伸長して、表面が荒々しくスパークしている。
高出力状態のまま、鎧の魔物へ強大な一撃を叩き込む!!!
「喰らいやがれ!!!」
「グウウッ!!」
紅光の煌々とした刃が、鎧に命中。
巨大鎧は何度もバウンドしながら吹き飛ばされ、剣を地面に突き立ててようやく止まる。
命中した部分は、しかし大した傷は負っていなかった。
なんでだ。かなり良い一撃だったはずだ。
純粋な疑問が浮かんできたのだが、すぐにリティは答えをくれた。
《お教えします。
あの魔物。ジャイアント・リビングアーマーは、マスターの攻撃が命中する瞬間まではただの鎧でした。
しかし、こちらの攻撃の威力が、致死に足る一撃と彼は判断した。
故に、即座に魔力を纏ったのでしょう。
間一髪でこちらの攻撃を防ぎ、ダメージを最小限に抑えたと思われます》
なるほど。要は舐められていたってわけか。
魔力を纏っていなかったから、ブレードの威力が魔力の膜に分散したってことだな。
《左様にございます。
あの瞬間的時間の中で『防御貫通効果付与』に必要な情報の解析、効果反映は不可能です》
そういうことか。
『防御貫通効果付与』発動には相手が防御している状態じゃなきゃ時間が足りないと。
だが、それなら次は当たるだろうな。
俺はもう一度ライトセイバーを構え、強化アシストに身を包む。
クソデカ鎧も、次は喰らわん!という意思表示なのか、全身に魔力を纏う。
「あの魔物、あなたの一撃を防ぐなんて………」
「まぐれだよ、あんなのはな!」
俺は強化アシストで地面にひびが入るほど強く地面を蹴って跳躍した。
相手が全身に魔力を纏っているのを見て、勝ちを確信した。
《攻撃対象の防御を確認。『防御貫通効果付与』を起動。
防御作用の構造を解析…完了。ブレードの構造を変化させます。》
そして、再び攻撃を検出し威力の高まったブレードは、一層激しくスパークする。
「いくぜ………うおおおおおおお!!!!」
「ウオオオーーー!!!!」
互いの気迫がぶつかった刹那。
次の瞬間には。
ヴゥゥゥン!!!
と、凄まじい威力を伴う赤い光が、鎧に纏われていた魔力の膜を破壊した。
「ナニ!!??」
「ハッハァ! 真っ二つになりやがれ!!」
手ごたえを感じないほど、一瞬で。
高出力の刃は、鎧を容易く両断したのだった。
「グ………ナゼ ダ………」
「残念だったな。偶然にも俺のブレード対策を出来ていたのにな」
こいつは思っただろう。
魔力を纏った。それが攻撃に間に合ったから防げたと。
魔力を纏い、防御する。それは合っていた。
だが、防御する構造を解析させたのが間違いだった。
攻撃を瞬間的に防いだからこそ助かったのだ。
それに気づかれていたら、別の手を考えなきゃいけなかった。
「ワレノ ハイボク ダ………。
ツヨキモノ ヨ トオルガ イイ」
「お前も強かったぜ! 楽しかった!」
「…………」
それを最後に、鎧の魔物は動かなくなった。
ここ最近で一番楽しい戦いだっただけに、名残惜しい。
「………あなた、なんて強さしてるの………?」
イフェルは思う。
あの魔物は、かつて街に出た時に、住民の大半を殺しまわった魔物。
街の警備隊と、冒険者ギルドが協力して戦った末に撃退した魔物だ。
あの戦いで何人が死んだのか。
それを、たった一人で。
イフェルはレイジに、小さな憧れの種を植えられることになった。