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第5話 船内


 大気圏外に出て、いよいよ宇宙空間へ突入する頃。私は物置から取り出した宇宙空間用スーツを試着していた。


「へえ、意外と軽い」


 スーツは何故かXSからXLサイズまで各3着あった。そこで、自身が使うМサイズだけを個室の収納へしまうことにした。個室は7畳ほど、備え付けでベッドと机があった。他の個室も同様らしい。無機質な白い空間だ。


「さて、この端末に触ってみようかな」


 白衣に着替え広間に戻り、端末のある操縦席へ腰掛けた。


「自動運転システムは行先に設定した星まで自動で操縦してくれる機能。行先は検索して登録ボタンを押しておくこと。検索機能は条件で絞ったり、星の名称を打ち込めばヒットする、と」


 マリーが残した説明書に目を通した。


「まあ、使えば分かるだろう。取り敢えず行先を決めておくか。……水源あり・食料あり・温度−30〜50℃・距離150日未満、とか?」


 私は適当な条件を打ち込んだ。検索ボタンを押すと、ヒットした星が画面をスクロールする程並んだ。


「多いな! この星は……気候が良くない。こっちは空気中に有害物質が含まれているから除外だな。もう少し条件を絞るか」


 一件一件目を通し、暫くして好条件の星を見つけることができた。


「水源、食料あり・温度−10〜40℃・距離約90日・酸素濃度も以前の星と変わらず……最高の物件じゃないか」


 早速この星に登録ボタンを押し、自動運転システムへと切り替えた。手を組んで上に伸び、操縦席を後にした。


「さて、もう一度船内を探索しよう」


 最初に入った部屋は研究室だった。研究室には陳列する薬品・ビーカー・試験管・顕微鏡や量りの他、研究所の一室と変わらぬ造りだった。


「すごい、何でも出来るじゃないか!」


 両手を合わせながら言った。憧れだった宇宙へ自ら旅立てる日があると思わなかったし、これからはひとりで研究に没頭できると思うと心が弾んだ。


 次に入った部屋は物置だった。人1人が通れる程度の間隔で棚が並んでいる。天井ぎりぎりまで物が置いてあり、隅にある脚立で中身の確認が出来た。


「成程。生活雑貨・家電・本・電池・土・植物の種・実験器具、と」


 脚立で一番上にある箱を取ったが、バランスを崩して中身の物を落としてしまった。大して重くもない、黒い物体が複数。改めて見ると、それがハンドガンであることには直ぐ気付けた。


「えっ、は……えっ? 本物?」


 私は狼狽してその銃の周りを動き回った。あるとき決心したように、ひとつを手に取ってみた。先ずは分解して、実弾が入っていれば本物だし、細かいパーツを見れば初心の私でも本物か否かくらい判る筈だ。


間違ってもトリガーだけは引かないようにと慎重になった。順調にパーツを分解していく。この銃のマガジンは着脱式のようで、マガジンキャッチの部分を押すとそれが出てきた。これで本物か否かは明らかとなった。


「本物っぽいなぁ……」


 手にはマガジンからゴロゴロと出てきた実弾が。エアガンなら絶対にない重さ、質感。だが未だ、未だ確証は持てない。


「こっちの銃も本物だろうか」


 私は別の銃に手を伸ばした。また、同じように分解し始める。


「リボルバーか。あれ、こっちには弾が入ってない」


 トリガーに指を引っ掛けてクルクルと回してみる。


「最後の一丁はピストルかな? (いず)れにせよ、これを使う日が来ないよう祈りたい。ただ、確証を得るにも試し撃ちしてみたいな……。とにかく、やんごとなき事情がくるまではしまっておこうかな」


私は元の箱に戻し、棚の一番上へと押し込んだ。

 


 貯水庫を覗いた。貯水庫は言葉の通り、扉を開けると一面に貯水槽が並べられている部屋だった。槽はそれぞれパイプが伸びており、各部屋に繋がる仕組みである。


「ここにある水で5ヶ月分か。多いような少ないような」


 私は白い貯水槽のひとつを叩いて言った。


 キッチンの戸棚にはそのまま食べれるような加工食品・フリーズドライ・乾燥フルーツ等含めて1年分の食品が用意されていた。お陰で戸棚はいっぱいだった。冷蔵庫には缶詰やゼリーがあった。


 また、キッチン入口には固定された長テーブルがあり、ここに物置から出した椅子を何脚か設置する予定である。厨房には、コンロは無いが、調理器具や水道があった。


 菜園室へ訪れると、まだ何も無い空間が広がっていた。食料が尽きる前に土作りをして、種を蒔いて、時折水をやる必要がある。野菜の栽培なんて経験がなくて、上手く育てられるかが課題となっている。案外時間が無いので失敗はできない。


 午後7時頃、冷蔵庫にあったゼリーで腹を満たした。食に拘りは無く、割と少食な為気持ち辛いことはなかった。


時刻はクォーツ時計が壁に掛けてあるので確認ができた。生活リズムが崩れない様にとマリーが置いたらしい。暫くはこの様な生活が続くだろう。


 午後11時現在。紙と万年筆があったので日記をつけることにした。今後はその日あった出来事を書いていこうと思う。これが最初の日になる。


今日は夕飯の後、菜園室で作業をした。プランターと肥料の用意をし、土を空気にさらした。陽の光はLED照明で代用しようと考えている。


土や肥料の種類が豊富であるため、様々な野菜に挑戦出来るだろう。一先ず、私でも育てられそうなものに挑戦しようと思う。

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