ヒップホップ禁止令について
先日、気になるニュースを見つけました。
東京都千代田区にある麹町中学校のダンス部に対し、学校側から事実上の『ヒップホップ禁止令』が出されたというもの……この決定に対し保護者が抗議文書を提出したり、国会で議論されるなどちょっとした騒動になっているそうです。
しかも世論は生徒たちに同情する意見ばかりかと思いきや、「ヒップホップは不良のやるもの」とか「学校でやるものではない」という意見も多いようです。
私は現在56歳のおっさんですが、今から10数年前……30代後半から40代前半、いわゆる「アラフォー」の時代にヒップホップダンスを習っていました。
元々スポーツクラブのレッスンのひとつとして興味本位で始めました。最初は独特なリズム取りに戸惑いましたが、覚えていくうちにだんだん楽しくなり、しまいにはダンススタジオでレッスンを受けるほどハマってしまいました。
正直、実力的には若い人たちについていけないレベルでしたが、こんな下手くそでも500人くらいの観客の前で踊ったことがあります……ちょっとした学校の全校生徒くらいの人数ですよね。
私は自分の意見を書き込んだりするのが苦手なのでSNSをやっていません。でもヒップホップダンスが好きな私にとって、今回の騒動に対する世間の反応がどうしても看過できなかったのでちょっとエッセイ的な形で自分なりの考えを書いてみることにしました。
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まず私がどうしても看過できなかったのは、このニュースに対する識者、関係者、一般人のコメント……そのほとんどが、
『ヒップホップカルチャー』と『ヒップホップダンス』の区別がついていない!
……ということです。
はっきり言います。
『ヒップホップカルチャー』と『ヒップホップダンス』は【別物】です!
まずはヒップホップカルチャーについて説明します。正直私もそこまで詳しくないですが、1970年代にNYでDJのアフリカ・バンバータが「ラップ」「DJ」「グラフティー」そして「ダンス」をまとめて「ヒップホップ」と命名したのが始まりと言われています。
ちなみにここで言う「ダンス」とは「ブレイキン」つまりブレイクダンスのことで、みなさんがイメージするヒップホップダンスとは違うものです。
これは当時教えてくれたダンスの先生から聞いた話ですが、いわゆる「ダンスバトル」はギャング同士の抗争で「お互い血を流さない方法で勝ち負けを決めよう」というのが始まりだそうです。
ちなみに……今やってる人いるかどうかわかりませんが、ダンスのときズボンの裾を片側だけまくり上げるスタイルが当時流行っていました。その理由は「オレは武器を持ってねーぜ」というアピール……らしいです。
なのでこんな「物騒な文化」は学校内でやるもんじゃないです(笑)! どこかのラッパーが言ってたように学校外で「こっそりとやれ」ばいいんです!
でも……繰り返し言いますがヒップホップ「ダンス」は全くの【別物】です!
ヒップホップダンス……紛らわしいので「ストリートダンス」と呼びますが、このダンスの起源はもちろんヒップホップカルチャーでしょう。
ストリートダンスの世界には「オールドスクール」とか「ニュースクール」というジャンル分けがあります。
オールドスクールとは、おそらく皆さんがイメージしているであろう「不良のダンス」、つまりヒップホップカルチャーの色が強いダンスです。
まぁオールドスクールも「不良のダンス」じゃありませんけどね! 実は私が一番好きなジャンルはこのオールドスクールに分類される「ロックダンス」です。
ロックダンスは……今は諸事情により名前が出せない○○○ー○系の男性アイドルグループがよくダンスのステップに取り入れています。皆さんもきっとテレビなどで目にしているハズですよ!
一方、ニュースクールとは1990年代以降に発生したスタイルで……これはヒップホップカルチャーとは一線を画すものです。
ヒップホップとは名乗ってはいますが、服装は自由でジャラジャラしたアクセサリーは付けない、音楽もラップを使わなかったりします。形(ファッション)よりダンススキルを重視したスタイル……だそうです。
三代目 J SOUL BROTHERSがやって有名になった「ランニングマン」というステップもこのニュースクールに該当します。
今回話題になったダンス部の皆さんがどのジャンルを練習していたのかはわかりませんが、一般的なダンス部のイメージからおそらくニュースクールのヒップホップダンスではないかと思われます。
今では体育の授業でも取り入れられているらしいです。そもそも不健全なダンスを文科省が採用するとは思えません。
ちなみに私はダンスを「スポーツ」そして「運動部」だとは思っていません。どちらかといえばダンス部は演劇部と同じ「文化部」だと思っています。
この令和の時代にヒップホップダンスと聞いて「ジャラジャラしたアクセサリーをつけてFワードだらけのラップで踊る不良のダンス」なんて思っている人はおそらく、よほどの「無知」か脳内が1970年代……ヒップホップカルチャー黎明期から進化していない「生きた化石」なのでしょうね!?
ヒップホップダンスは常に進化し続けています。私が今、若者の前で踊ったら「おっさん、古っ!」ってバカにされるでしょう……でも、それでいいんです!
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とまぁ下手くそな説明で大変申し訳ありませんが……要するに「ヒップホップダンス」と、皆さんが思っている「ヒップホップ」という物は似て非なるものです。
なので「ヒップホップ」と名が付いただけで「そんなのは不良がやるダンス」などと決めつけるのはあまりにも無知で無責任な発言ではないでしょうか? せめて「ダンス」と「カルチャー」の区別くらいは勉強してほしいものです。
最後に……こんな底辺書き手のエッセイもどきなど読まれるはずもないでしょうけど、今回の騒動の元となった麹町中学校のダンス部の皆さんにダンス好きのおっさんが勝手にメッセージを送りたいと思います(笑)。
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人生には「自分の想い通りにならないこと」があります。いえ、むしろ人生の大半は「自分の想い通りにならないこと」だらけです。
それと……トップが変われば体制も変わるのは大人の世界では決して珍しいことではないです。例えば県知事が変わった途端、それまで進められてきた公共工事が突然ストップ……なんてよくある話です。
今回、ダンス部でヒップホップダンスが禁止されたこと、全校生徒の前でダンスを披露できなかったことは、人前で踊ったことがある者としてさぞかし残念だろうと痛感しております。
でも……決してあきらめないでください!!
人生に壁(障害)はつきものですが、越えられる方法は必ずあります!
部活動にこだわる必要はないでしょう。私は教育に関して無知ですが、おそらく部活動は学校側が「予算」を握っている……つまり部として活動することはお金を出してくれる学校に対して「服従」しなければならないわけですよね?
そう考えると逆に「部活動ではない集まり」に対し、学校側は口出しできる立場にありません! 幸いお父さんお母さん方は協力的のようなので、皆さんでお金を出し合えばインストラクターを雇うことだってできるだろうし、練習場所を確保することだって可能でしょう。どうしてもお金が足りないのであればクラファンという手もあります……もちろん返礼は発表会の招待などですよ!
あ、ストリートダンスの練習場所といえば夜の公園や閉店後のショーウインドーの前とかありますけど……治安上の問題があるのでそれだけは絶対に止めてくださいね! ちゃんとしたスタジオか公民館の会議室などを借りてください。
ここで不良のおっさんが入れ知恵しましょう(笑)。ああいう「無知な連中」はヒップホップダンスを「振付」ではなく、おそらく「衣装」と「音楽」だけで判断しているハズです。実は振付って興味ない人には印象に残らないものなんです。
なので衣装と曲を「それっぽくない」物に変更すれば学校で踊ってもバレないと思います! 例えば曲をJポップやアニソン(日本語歌詞)、衣装をスーツなど着て踊ってみるというのはどうでしょう? コスプレで踊っても面白いと思います。
もし誰かが気がついて「それってヒップホップだろ!?」と言われたら「いえ、創作ダンスです!」って堂々と言い返せばいいんですよ! だって創作ダンスって決められたステップや振付けなんてないんでしょ!?
発表の場だって街のイベントに参加したり、自分たちで主催して発表すればいいんです! 自己紹介のとき「どーも! ヒップホップ禁止令で話題になった麹町中学校ダンス部でーす!」って言えば最強の「つかみ」になりますよ(笑)。
困難には必ず乗り越える方法があります! 皆さんは自分たちのやりたいダンスを信じて日々精進してください!
それとネットや有名人の「いかにも専門家っぽい」コメントなんて実は「無知の知ったかぶり」な意見がほとんどだから気にすることはないですよ! あと日和見の「いいね」も……「無知」は「無視」!
……まぁ私もその「無知」な人間のひとりですけどね(笑)。
追記・一部ネットで「あの記事は誤報」という話が出ています。学校側も記事を否定する文書を公開しているとか? もし本当に大手新聞社がフェイクニュースを出していたなら何を信じていいのやら……困ったものです。
まぁ一方の話だけを鵜呑みにするとそれこそ「偏った考え」になってしまうのでこれ以上のコメントは差し控えさせていただきますが、後半の「生徒たちへのメッセージ」はそのまま「現在壁にぶち当たって悩んでいる若者」へのアドバイスとして参考にしていただけたらと思います。
以前ある方が「ウェブはバカと暇人のもの」と言っていましたが……ホント、それな!