家庭教師アイリス
あれから半年ずっと魔本の本を読み漁った。
この世界に存在するマナは感じ取ることができても魔法として発動するには、サークルに溜められたマナを魔力に変えて消費し形象化させなければならない。自然に存在するマナをそのまま魔法にすることはできず、魔力としてサークル内に加工しなければならない。
そして、魔法の過程で詠唱が存在しており、おそらくそれはイメージによる魔法の安定化に過ぎない。前世の記憶を持ったまま転生した俺ならそのイメージを詠唱よりも具体的にすることができるのではないだろうか。
「酸化現象からおきる火と炎をイメージして、マナがこのイメージを形象化...」
見事に大成功だったが、それを消火する方法を知らなかったため一部が燃えてしまった...
執事のフィルはその匂いをすぐに嗅ぎつけてしまい
「坊っちゃま!何事ですか?!」
結局魔法を使用していたことがバレてしまい、大ごとになる前に消火作業が行われた。魔法を発動することに気が取られていたせいで大事になるところだった。しかも、父親ブレイン・グラントと母親マリア・グラントに魔法を発動させたことがバレてしまった...
「書斎で魔法の本ばかり散らかしていたのは、魔法に興味があったからなのか?」
「あなた、そんなことがあったなんて言ってくれないと!!」
「いや、2歳のメシアに分かるわけがないと思って黙ってたんだよ...確かに今回のことは悪か...」
「天才だわ!!この子はまさしく1000人に1人..いや、全人類に1人レベルよ!!」
「魔法についてはマリアの方が詳しいとはいえ...たしかに普通なら早くても10〜15歳の間にマナを感じ取ることができるはず」
2人の話を盗み聞きしていた俺はその時初めて現実を知った。つまり、俺は8年も早くマナを感じ取り魔法を発動させたということだ。こうなったら隠し通せないな。
〜その後〜
やっぱり呼び出された。
「メシア、いつから文字が読めるようになったんだ?」
今までは流暢に喋らないように可愛らしい姿を見せながら誤魔化してきていたがそうもいかない。
「実は1歳くらいからほとんど...」
「なにっ?!はぁ...まぁ、賢いと変にみられると思う気持ちは分かる。だが、せめて言ってくれても良かったじゃないかぁぁあ(しょぼん)」
「申し訳ございません父上。しかし、魔法や剣、この国のことも興味があり調べるうちに自然と...」
「魔法は知識だけではなくそれを扱う技術も重要だ。もし、フィルが気づかなければ危なかったんだぞ?」
「はい、、今後は気をつけます」
「いや、メシア。お前はグラント家史上最高の天才だ。知らないと思うが、マリアは魔法においては他の追従を許さないほどだ。だが、忙しいこともあるから最初はマリア魔法師団のアイリスに家庭教師をしてもらうことにした。」
「ほ、ほんとうですか?!ありがとうございます!!」
心の底から嬉しく満面の笑みで言ったことから、かなり誇らしかったのか久しぶりに抱きつかれた。
「メシアちゅわ〜ん。やっぱりお前は可愛いなぁ!!」
たすけてぇ〜!!!
自分が2歳だということを忘れていた。
〜1日後〜
家庭教師としてマリア魔法師団からアイリスという女性魔法師がきた。どんな人か楽しみだったが、それは一時の感情だったようだ。
「よぉ。ちびすけ、私が今日からお前の家庭教師をやるアイリスだ。」
「よ、よろしくお願いします..」
赤髪にヤンキー風の態度、まるで炎の象徴みたいな人だ。これから想像以上にしごかれることを知らないメシアだった。
「急にマリアさんに頼まれて来たから、とりあえずマナを感じるとこからやってみっか」
「あのぉ、マナは感じ取ることはできてるんですけど...」
「はぁ?テメェはまだ2歳のガキだろ?嘘つくんじゃねえ。できるもんならやってみろ。」
「わ、わかりましたよ...でも、できてるかどうかわかるんですか?」
「あたいを舐めんじゃないよ。マナを感じ取れる人間にはマナに同調する波長があるんだ。」
「でも、僕は既に感じ取れてるんですけど...」
「いや、そんなはずは...待てよ、もしかしてチビにはマナが見えるのか?」
「はい、そうですけど...これって感じ取れてるんですよね?」
アイリスはあまりの驚きに口を開くことができなかった。動揺するその姿をみてメシアは何故驚いているのか理解できなかった。
マナに同調し感じ取るという行為は感覚を拡張しなければならないが、視覚的にマナを捉えられる力とはマナに祝福された人間にしかあり得ないのである。よって、その人間自体の存在が限りなくマナに近づいているということである。これはメシアが前世で盲目だった頃に自然と身につけた優れた感覚によってもたらされた副作用のようなものだ。生まれた頃からの不自然なほどの感覚の発達により、マナの祝福体といわれる貴重な存在となれたのだ。
しばらくして、アイリスはメシアに説明した。
「初めてマナの祝福体に出会った...さすが魔剣名家グラント侯爵家だな。てことは、これから厳しく教えてあげないとね?メシアさ・ま」
その異様な笑顔にゾクッとした。しかし、その裏には何か意図があるような気がした。