9話 紅いんだぁ(歓喜)
ゴブリン達が動かないように目で牽制しながら話し合う
「お互い一匹ずつやりましょう」
「でもぶっつけ本番で戦えんのか?」
鋭い質問がアズラエルから飛んでくる
……それは、うん
「……まぁ、ステータスは恐らく上でしょう」
「まさかのゴリ押し……」
「武器無いですし……魔法の使い方も分からないのでしょう?」
「まぁな」
「そう自慢げに言われても。邪神様はもっと頑張ってくださいよ」
「前世で全く触れて無いから頑張りようも無いんだが!?」
そこは、ほら気合いで
と言い返そうと思ったが、流石にゴブリン達が突っ込んできた
「グギャ!」「グギャグギャ」
「私は右をやりますので」
「俺は左と。了解」
「では、ご武運を」
「また死ぬなよー」
地味に心に刺さることを言われたが、
お互い様だから無問題
それよりもコレを始末しよう
目指すはパーフェクトゲーム
_________
ゴブリンが棍棒を振り回しながら向かってくるのを、俺は静観していた
うーむ、怪我したくねぇ
どうすれば安全に勝てるかな
ボーッと立っていると標的を見失った
「グギャ!」
「おっと」
いつの間にか目の前に来ていたゴブリンが棍棒を振りかぶるが、簡単に回避出来た
声にびっくりして後ろに下がっただけなのだが……
こんなに回避が簡単だとは……
これ、余裕ってやつなのでは?
とはいえ、舐めプを噛ませるほどに強くは無いので
サクッと殺すことにする
「グギャ!」
「ほっ、はっ!せいっ!」
回避とともに拳でがら空きの腹に一撃
ひるんだ所にもう1発
「これでお終い!」
膝を着いたゴブリンの頭を抑え、膝で蹴り飛ばす
「グ……ギャ……」
そう言い残して、俺が担当したゴブリンはピクリとも動かなくなった
「勝った……」
『『アズラエル』のレベルが1→2に上がりました』
勝利の余韻も無く、名前の時の謎アナウンスが聞こえた
レベルが上がったらしい
魔物を倒すと上がるのか……
まぁいいや
ヴァンの方を見てこよう
なお、死体は放置する
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前世よりも軽くなった身体で攻撃を回避しながら考える
随分と疲れに強くなったような気がしますね
これも吸血鬼の力なのでしょうか?
純粋に人間とは身体能力が違うようですね
五感が鋭く、疲労も感じにくいと
再生能力はあるのでしょうか?
いつか試してみたいですね
「グギャ!」
目の前の戦いに集中しろと言わんばかりにゴブリンが叫ぶ
「分かりましたよ」
意外と武人肌なゴブリンさんですねぇ
意識を研いで吸血鬼としての力を思い浮かべる
そう、翼が無くとも、牙で噛みつかなくても、私には鋭利な爪がある
「ちょっと痛いですよー」
「グギャ!?」
振り下ろした瞬間に近づき、右腕に伸びた爪を突き刺し、引き裂く
なるべく傷を抉るような形で
「グギャァ!!」
どうやら魔物にも痛覚はあるようだ
苦しそうに呻いている
まだまだ試しますけどね
満足に扱うことの出来無くなった棍棒など怖くない
そのまま左腕、右脚、左脚と次々に引き裂いていく
「グギャァァ!グギャ!グ……ギャァ……ァ」
もう、ゴブリンは虫の息だ
立ても座れもできなくなり、横になってぐったりとしている
流れる血は紅かった
うみゃー