15話 デッドヒート
いや、遅れました
次の展開へのつなぎ方にちょいちょい手間取りまして……
詰んだと察してから私は、ただひたすらに生き残ることに力を注いだ
なるべく速度を慣らすように目を凝らし
魔物の何手先を読めるように思考を働かせ
身体の緊張を捨ててスムーズに動けるように
かつてないほどに集中している
躱す躱す掠る殴り返す掠る躱す躱す
それを繰り返してどれだけ時間が経ったのだろう?
とうの昔に切れてしまった『怪力』を掛け直す隙もないような壮絶な戦い
先程までは何度も喰らっていたが、漸く眼が慣れてきたのか、少しずつ攻撃を読めるようになってきた
次は
爪、牙、爪、爪そして背後に回っての尾!
何度か掠りながらも懸命に殴り返していく
爪を伸ばして出血を狙っても良かったが、もうそんな余裕も無い
相も変わらず魔物は唸り、目を血走らせている
しかし、段々と読まれてきていることを悟っているのか微かに焦りが混じっている気がした
攻撃が徐々に大振りになっていく
動きが少しずつ単調になっていく
今の私にできるのは、避けて、避けて、殴り返すこと
無尽蔵の吸血鬼の異常なスタミナのおかげでここまで耐久できている
だがしかし、それと同時に少しずつ腹が減ってきている気もする…
このまま飢餓で思考が鈍れば死ぬ可能性は大
私が飢えで思考を働かせられなくなるのが先か
魔物が焦って決定的な隙を晒すのが先か
Dead or Aliveの我慢比べ
そんな危機的状況にもかかわらず、私は笑う
笑ってしまう
_______燃えるねぇ
今までに無い地獄、スリル。
血湧き肉躍るとはこのことか
こんな状況がどうしようもなく楽しいと思えてしまう
必要以上に怯えずに、されど死を恐れて。
程よい緊張をしている私の心に応えるように、身体の親和性が増していく……!
躱して逃げて転がって
恥も外聞も捨てさって生きることに集中する
もう私から攻撃を仕掛けることは無いし
反撃の拳を振り上げることもない
ただ牽制用に石を投げるだけ
反撃を捨てて回避に全力を注いだからか、魔物の爪が、牙が、尾が
少しづつ当たらなくなっていく
身体の動作が洗練されていく
飛んで、転がって、跳ねて、捻って、着地する
傍目から見れば不格好ながらも踊っているように見えることだろう
観客が居ないことが残念な程に踊り狂う
それこそが生きる道なのだから
着々と飢えが悪化していくが、それ以上に魔物の疲労が見て取れる
速度も段々と落ち着いていき、私と同じ速さまでになった
あまり時間に余裕がある訳でもない
私はやっとできた隙を抜い、爪を伸ばして魔物に向かい打つように走り出した
…嘘です
執筆サボってクロスオーバーヨミの色んなデッキを作って遊んでました