11話 夜が明ける前に
血を飲んで一息する
思っていたよりも飲めましたね
もっと苦いというか…臭いと思ったのですが……
ゴブリンはあの味でしたが、他はどうでしょう?
機会があったら飲んでみますか
それはそれとして
「レベルを上げに行きましょうか」
「え、今からか?」
「えぇ。太陽が出る前に上げられるだけ上げておきたいですね」
日が昇る前に、もっと言えばステータスが下がる前にレベルを上げて進化したいおきたいところ
今のままでは貧弱すぎて、陽光を喰らうと戦闘どころでは無くなってしまう
それでは探索なんて確実に足を引っ張り、とてもだが出来ない
睡眠を犠牲にしてでもここは上げておくべきだろう
それに、夜型ですし
「んー、そう言われればそうだな……」
「夜の方が好調なのですから、上げられるうちに上げておくべきでしょう」
「むむむ……」
「何も一日で進化しよう!とは思ってませんよ。ただ、どうせなら通常状態で戦った方が危険はないでしょう?暗視もありますし、昼間戦うよりも遥かに楽だと思いますよ」
「……確かに」
しきりに頷いているが、私には分かる
ただ言い返せなくて、『私の言い分は分かってる風』にしているだけだと
どうにかこうにか反撃手を探しているんだろうが待つ必要は無い
「……ということなので、行ってきます」
そう言って私は洞窟を飛び出した
去り際に
「あっ!こら待て!」
という声が聞こえた気がした
_________
洞窟を飛び出して数分後
私は森の中に佇んでいた
「さて、魔物を探していくわけですが……」
どこかに、いい感じに経験値を稼げて私より少し弱い程度の、手頃な魔物は居ないですかね?
夜目が効き、夜型といっても、夜の魔物は強いと相場が決まってますからね……
なるべく、弱く多く倒しておきたいところ
「うーむ……」
悩んでいると、茂みから唸り声が聞こえてくる
「「「「グルルル」」」」
「……4匹ですか」
狼のような灰色の四足獣が尾を振りながら近付いてくる
知性か本能か、丁寧に私を囲みながら
「四面楚歌って奴ですかね?」
ただまぁ……そう圧を感じないので、立ち回りに気を付ければ問題ないでしょう
「ガゥ!」
1匹が吠えると残りの3匹が呼応するように同時に襲いかかってくる
私を噛み砕かんとする獣の姿に少しばかりの動揺が走るが、ゴブリンよりも少し早い程度の速度なら大したことは無い
「『怪力』」
迫るAにこちらから向かい、スキルで強化した拳を顎に叩き込む
怯んだAに追撃せず、振り向きざまにBを蹴り飛ばす
地面から少し飛んでいたBはそのまま木の根元に叩き付けられ、動かなくなるのを視界の端に収め、続くCとDの爪と牙の攻撃を立ち上がりかけていたAを踏み台に飛んで躱す
Aは前足が砕けたのか動かず、Bは気絶したのか死んでいるのか、舌を出して横になって倒れている
CとDは戦意を失っておらず、今も唸りながらこちらの隙を伺っている
「……」
爪は伸ばさない。突き刺さった場合に抜く隙を突かれる可能性があるから
『怪力』は時間切れ。あと3分は使えないだろう
だが思考は冴え切っている。私史上、例を見ないほどに
「……すぅ」
呼吸を整え、次の策を考える
タイマンなら正面から向かい打ち、四足獣の苦手とする後退を突きつける
しかし、もう1匹いる状態でそれは少々リスクがある
ならば……
一瞬しゃがみ、立ち上がると同時にCに向かって拾った石を投げ、Dに殴りかかる
運良くCの目に当たったようだ
この大きなチャンスは無駄にできない
後ろに下がり、距離を取り辛いDをクールタイムが終わった『怪力』を使い、鉄拳制裁で仕留める
そのまま、頭を振っているCに乗り、拳を連打
動かなくなったことを確認して、動けないAを始末し、Bの死を確認し、Dの息の根を確実に止める
「ふぅ……討伐完了」
『『ヴァンブラッド』のレベルが2→5に上昇しました』
レベルもそこそこ上がりましたね
血の匂いで増援が来る前に、早く離れるとしますか……
「ガルルルゥ」
「「「グルルル……」」」
……遅かったですね
ばかな……投稿日が遅れ始めている……?