アンコ闘争
福井県の八つの町の長が会合を開いた際に雑談で餡子の好みの話題になったところ、漉し餡と粒餡で意見が真っ二つに割れ、来る令和五年一月十五日に福井駅近くの商業施設アオッサで「あんこ選手権」を開催する運びになったそうです。
キノコ・タケノコ戦争よりも激しい戦いになると予想しますが、巷にある餡子を用いた食品で雌雄を決せんと調べたところ、意外な結果を得ました。
1 銀座木村屋のあんぱん:漉し餡(つぶあんぱんは別商品)
2 井村屋のあんまん:粒餡(こしあんまんは別商品)
3 鯛焼き:粒餡が主流
4 大判焼き・今川焼き等:粒餡が優勢
5 どら焼き:漉し餡が優勢
6 人形焼:漉し餡
7 アンパンマン:?
どちらも主流派ではなく、勢力が拮抗しています。ぜんざいは粒餡でしょうけれど、お汁粉は漉し餡です。
クックパッドのレシピでは、漉し餡スイーツが3702品、粒餡スイーツは3477品とほぼ拮抗。
一説には牡丹餅は漉し餡で、お萩は粒餡で作ると言われます。地域差がありますので、絶対ではありません。
私見ではありますが、粒餡は庶民派、漉し餡はやや高級路線という違いがあるかもしれません。
例えば木村屋のアンパンは明治天皇に献上品として皇室へ上がる際に、舌触りの良い漉し餡を詰めた可能性があります。そうすると、粒餡で作るアンパンは献上品とは異なる別のパンという扱いになるでしょう。
あんまんは江戸時代から辻売りされていた菓子です。また、鯛焼きも大判焼きも大衆相手に売りさばく必要がありますから、手間のかかる漉し餡よりは粒餡の方が経費がかからない分、安く提供できます。
こう考えると、どら焼きは和菓子屋で購入する機会が多いですから、漉し餡になるでしょう。
お萩と牡丹餅は、秋に作るお萩は収穫されたばかりの小豆の皮が柔らかいので、粒餡でも滑らかな食感を楽しむことができます。ですが冬を越して皮が固くなった小豆を食べるには漉し餡にした方が滑らかな食感になりますから、春の牡丹餅は漉し餡で作るようになったとも言われます。
このように同じ小豆餡でも、漉し餡と粒餡では互いの勢力が拮抗している理由が何となく理解できるかもしれません。
小豆餡には小倉餡もあります。小倉餡は潰し餡や漉し餡に蜜で煮た大納言を加えた餡子です。こちらを用いた小倉トーストや敷島製パンのサンドロール「小倉&ネオマーガリン」は東海地方と北陸地方でしか販売されていない地域限定品のようです。なお先述のどら焼きに小倉餡を挟むと、粒餡と勘違いされる方もいらっしゃいます。
しかし小豆餡以外にも、白餡、うぐいす餡などもあり、蒸し饅頭では肉まん、アンマンの他にもカレーまんやピザまんなどの新しい具材、大判焼きや鯛焼きにしてもカスタードクリーム、チョコレート、カレーなどが台頭して来ていて、小豆餡の地位が脅かされています。私の地元ではサラダもあります。
まさに餡子の世界は弱肉強食、群雄割拠といった様相ですから、アンコ闘争はこの先も激しい戦いが待っているでしょう。
皆さんはどの餡子が好きですか?
なお、アンパンマンの餡子を公式サイトで調べたところ、粒餡でした。やはり粒餡は庶民の味方でしたね。