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レテ

 キリル達が出かけ、無事監視の目がなくなった所でニックスと二人、扉を開け外に出た。

 目の前に広がる光景に息を飲む。びっくりだな、これ。

「ツリーハウスだな」

「はい。森の中にありますので」

「――だよな。しかし凄い数だな」

 街の建物のほとんどが、木の上に建っているツリーハウスだ。そして、その建物を階段と橋でごちゃごちゃと繋いでる状態。ツリーハウスは自然素材の同じ様な創りで、それが見渡す限り続いている。まるで壊れたジェンガ。うん!確実に迷子になる!クレタスに道案内を頼んで本当に良かった。


 俺たちの泊まっていたツリーハウスは、食堂を兼ねた宿屋の上に作られていた別棟らしく、木に直接打ち付けられた危なっかしい階段を下りる。

「しかしどの木も立派に育ってて、でかいよな」

 よくこんなうねうねとした枝や幹に、上手く板を渡し、道を作ったものだ。

 食堂の前の道は木の上にあるものの、商店街にあたるのか、若干人通りが多くなっていた。向かいには盾のマークが着いたログハウスがあるし、宝飾を売っているのか、ダイヤのようなマークのついた看板が下がる店、武器屋もありそう。ああ、ここでしばらく過ごしたい。……いや過ごしたのか?寝てたけど。


 行きゆく人も多種多様で、オブシディアンでも見たが、髪色や肌の色など、現生では有り得ないファンキーさだ。そして、見つけた。

 お!いるじゃん!俺より小さなおっさんも!横は三倍はありそうだけど。

「ここはドワーフの工房に一番近い宿ですので、ドワーフも良く利用するようですね」

「ほお、ドワーフの工房には宿はないのか?」

「ありますが、やや値段が張るようです」

「なるる……」

 キョロキョロしていると、ニックスに頭に被せてるフードを直される。

「リンネ、いいですか?フードは絶対に取らないように」

「ああ、分かってるよ」

 確かに視線を感じる。周りを見渡してもアジア系の人間はいない。俺が目立つのは本当らしい。

 でも、もしかしたら、と思い出すのはアイリスの事。ずっと気にはなってるのだが、アクセス出来ずにいる。

 ごめん、アイリス。後回しにして。


 ダイフクを幾つか創って気が付いたのだが、ダイフクというデバイスと俺の脳は、常に繋がっている状態になってしまうようだ。

 そう気付いた時には次々に情報が脳に届き、頭がオーバーヒートしてしまいそうだった。だから、仕方なく取り急ぎ使わないデバイスとは通信を切るしかなかった。

 多分、マチューに預けた、ラビスの軍用アンク出できたダイフクは、フィギュア化している事だろう。今はマチューとリュカスを信じるしかない。


 三つのダイフクのうち一つは、先程クレタスに預けた。

 ここの環境に配慮して緑色にした丸餅サイズのそれは、俺が持つとよもぎ餅だが、クレタスのアッシュの入ったチャラい茶髪に乗せて見ると、サイバーなヘッドホンの様だった。……解せない。

 今頃、配置に着く為移動してるに違いない。と、ヨモギにふっと意識を飛ばし、アクセスしてみた。


 目に映る物とは違う景色が頭に浮かぶ。

 高い所を歩いているのか、ツリーハウスの街並みは小さく見え、それを囲む防壁まで見えてくる。なかなかの高さのある、頑丈な木製の防壁の外は見事な森だ。街道が一本、街の南側にあるようだが、門はかなり小さく、出入りする者を拒んでいるようにも見えた。

 顔を上げるとコーナーワイプのように頭の隅に景色が追いやられ、メインに心配そうに顔を覗くニックスが映った。あ、今モニター見てる気分だったわ。

 でも、二つの画像モニターを同時に見ながら歩いている気分で、これはこれで楽しい。


「リンネ?よそ見は危ないですよ」

「ああ、分かってる……っと……あぶね」

 言ったそばから躓いてしまう。至る所に段差があるんだよなぁ……。

 すぐに伸びてくる手に苦笑する。

「気を付けてくださいよ。落ちたら命に関わります」

「分かってるけど。何かさ、階段が歩幅に合わないんだよ。もうちょい子供に親切な造りにしてくんないかなぁ」

 あ、自ら子供って言っちゃった。

「…………さあ、こちらです。急ぎましょう」

 サラッと流したな、ニックス。その通りって事か。

「くそっ!」

 育たないかなぁ、俺。

 せめて思考加速とか、身体強化とか、チートスキルが欲しかったな。


 ツリーハウスの群集から抜けると、人通りも少なくなる。静かな郊外って雰囲気になり、渡す板も狭くなってきた所で、現れた吊り橋。

 右手に水量こそないが、高さのある滝が見えて癒される。橋を渡ると、そこに見えてきたのは、大きな泉だった。


 森の中にポカンとそこだけ丸く切り取られた空間。

 橋の上から見下ろすと、キラキラと太陽の光を鏡のように反射した湖面には、ただ一つ小島があり、その中に白い建物が建っているのが見えた。建物への橋はなく、この橋は湖畔に降りる為のものらしいが。

 吊り橋の先は……なかった。


「ここで行き止まりなんだな。指定場所はあの建造物なんだろ?」

「いえ、木の下です」

 ニックスが木の下を覗き見ながら答える。

「どうやって降りたんだ?」

「コレで」

 ニックスの指さすのは橋桁にしっかりと結ばれたロープ。こぶ付いてるけど。

「ごめん。俺、無理」

 安定感の無いものは信用しないタイプなんだ。

「背負いましょうか?」

 ニックスが嬉しそうに笑う。

「何がそんなに可笑しいんだよ」

「リンネにも不得手な事があるのですね」

「何言ってるんだ。出来ない事だらけじゃん、俺。しかしコレ、どうすっかな」

 ニックスの怪我はまだ完治してない。無理させれば痛みが伴うだろう。そんな事させられるはずもない。出来る事なら俺が抱えたいくらいだ。

 下を覗くと、中々いい感じの枝ぶりの様だ。

 ここレテの凄いとこは全て生の木……生きた木をそのまま建築に使っている所だ。この橋も例外なく活きのいい木の上だ。よし!ありがたく使わせて頂こう。

「俺、こっから行くわ」

「え?」

 指が引っかかれば、降りるのは割と簡単だろう。

 不安定なロープよりは俺は好きだ。

 吊り橋に戻りブラーンとぶら下がり、後は下へと枝や幹に空いた穴を頼りに降りていくだけ。あっという間に地面に足を付ける事が出来た。


 ふぅ、と息を着いたとこで、近くで上を向いている数人の衛兵らしき奴らに声をかけた。

「あ――来たんだが、指定場所はここでいいのか?」

「うおっ!」

「「「!!」」」

「あぁ!?」

 めちゃくちゃ驚かれてこっちがびっくりだ。しかし剣を抜くのが遅いぞ。要人の護衛かと思ったが、違うのか?とか。

 思っている間に囲まれてしまう。

「てめぇ!!何処から現れたぁぁぁぁ!」

「リンネ!!」

 ニックスも降りて来たらしい。なんだか焦りながら兵を割って俺の所まで来ると、庇う様に俺の前に立った。

「なんだろ?一触即発って感じ?」

「リンネ……」

 じりりと俺たちを囲む輪が縮まる。


「待て!!」

 その声に、兵の動きがピタリと止まり、道を開けるように包囲が割れる。

「ん?お前は先程の……」

 ちょっと上官っぽい男が二人、泉の方から慌ててやって来た。見ると、小さな舟があるから、きっと真ん中にある、あの建物からやって来たんだろう。

 他の者達よりも若干落ち着きのある二人は、俺たちを取り囲んでいた兵を制すと、自分達は剣を納めた。

「下がれ!ここはもういい。配置に戻れ」

 一声で周りの奴らが引いて行く。

 いつの間に抜いていたのか、ニックスも剣を納めると、ふぅと息を吐いた。


「なんか……すまない。でもそんなに驚く事ないだろ?」

 俺が謝ると、何故か三人から睨まれた。

「で?何しに来た」

 若い方の男が言う。

 お前らが呼んだんだろ?って思ったが、ここはニックスに任せる事にする。また睨まれたくないからな。

「リンネ様を連れて参りましたが?」

 ニックスがあまりに不機嫌そうに答えるから、ふっと笑ってしまった。しかし……。

「…………え?それが?」

 それ扱いされる俺。

 怪しい者だと疑われたか?……分かったよ。

 フードを後ろに跳ね、邪魔な髪をかきあげ?顔を見せる。

「え?女?」

「子供?」

 ……ふざけるな。

 ムッとした俺の顔を見て二人は顔を見合わせると、今度は顔を突き合わせてなにやら相談し始めた。

「悪魔の様な恐ろしい人だと……」

「冷酷な美しい人だと聞いていたんだが……」

 コソコソやってるが、全部聞こえてるから。

「誰情報だよ。そいつ教育し直した方がいいぞ」

 俺が言うと、キッと睨まれた。

「テラン……あ、あの方を侮辱するな!」

 テランスかよ。

 名前を出さないよう指示を受けているようだし、襲撃の件は知らぬで通すつもりなのだろう。しかしこれでは埒が明かない。

「あ――もういいだろ?帰ろう、ニックス。別に俺はあんたらのボスに会いたいわけでもないし。来いって言われたから来てやったのになぁ。お前らのボスには追い返すくらいなら呼ぶなって伝えといてくれよ」

 はっと二人顔を見合わせる。

「いっいや……追い返してなど!」

「じゃあなっ!」

 俺は後ろを向き、手を振った。

「おっ……おい!待てよ!……ヒッ」

 振り向くと、ニックスが若い兵の手を抑え、その首にナイフを当ててた。

 アホだ。手を出そうとしたんだなこいつ。

「悪かった。そいつを離してくれ」

 年上っぽい奴が近づいてくるも、ニックスのひと睨みで足を止め両手を挙げた。

「案内させてくれ……。頼む」

 俺はニヤる口元を手で隠した。

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