表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/88

捌く

 硬いパンに挟まれた燻製肉。野菜といい……本当に生き返る食事に久しぶりに出会えた。

 木のテーブルに男ばかり六人、横長いハンバーガーの様なそれにかぶりつく。まるで学校帰りのバーガーショップの様。ってか、なんでみんなこっちばっかみ見てんだよ、食いにくいだろ。

「無心で食べる様子も可愛いですが。リンネ様、そんなに急に食べられて、大丈夫ですか?」

 可愛いって何だよ、キリル。でも確かに起きたてにこれは重い。

「ああ、どうだろう。ま、さっき水飲んだから大丈夫だろう」


 若干チートなアイテム『ステュクスの水』。

 身体に取り込めばその状態をあるべき姿に戻すのではないかと思われる。破損の状態によっては時間がかかるが、ニックスの回復状況から見ても、かなりの速度で作用しているようだ。

 俺がニックスに行ったのはテムを使った止血処理のみ。感染症や、癒着等考えられる不安が何も起きない事からも……まあ、とにかく万能薬。

 これを俺の腹痛に使う事に躊躇いがない訳では無いが、すぐに行動に移したいからここは使っとこうと思う。何か、寝てる間に食ってはいけないものを口にした感があるんだ……。


「それで?報告を頼む。……の前にお前ら、本当に迷惑かけたな。最初に謝っとくよ、すまなかった。ここまで自分に体力がないとは、本当に情けない限りだ。でもさ、無理やりは良くないと思うぞ?」

 俺はしっかりと頭を下げてから、みんなの様子を伺い見た。

「リンネが言って聞くような方なら、強硬手段にでたりしませんよ」

 だよなぁ。ニックスの言う通りだ。あの時の俺は一人で全てをやるつもりでいたんだ。おこがましいにも程がある。

「ああ、そうだよな。ホントごめん」

「謝らないでください。やったのはこいつらですが、許可したのは俺ですから。そもそも俺が不甲斐ないばかりに、迷惑をお掛けしました」

「いや、本当に無事で良かった。さ、この話はここまでにして……」

 みんな飯食い終わってるな?こっからは会議だ。

 俺はそこらに散らばる包み紙をテーブルの端に押しやった。


「ニックス、ここ、レテは俺たちを友好的に受け入れてくれたのか?」

「その事なんですが……。ここに着くなりテランスが、何者かに連行されてしまいまして……」

「え?」

「別に彼がいなくても支障がないと判断したので、勝手に宿を取ってリンネの回復を待っておりました」

 テランス……あいつ、大丈夫か?ま、いっか!

「あいつの雇い主の事、吐かせた後だよな?」

「はい。かなり律儀な奴でして、リンネが寝てる間に今回の事は全て。とは言っても、彼自身が仕事を取って来た訳ではないようで、部下の尻拭いをさせられた、と言ってましたね。まあ、全て無駄になった訳ですが」

「ああ、運悪くラビスの暴走に巻き込まれちゃったしな。全てって、エンキを通してレジスに金積まれたとか?目的は、俺のアンクだろうし、後で聞くから、とりあえず出るか?」

 不穏分子が残る場所に長居はしたくない。レテのボスにはちょっと会ってみたかったけどな。

「そうしたいのはやまやまなのですが……。先程レテの首領の使いってのが来て、代表を出せと言われまして、とりあえず俺と、護衛としてラビスとで指定された場所に行って来たのですが……」

「ほぉ――?」

「どうしてもリンネじゃないと取り次げないと言れてましてね、戻って来たのです。無視も出来ませんし、どうされますか?」

 あ――それって俺の事、知ってるって事だよな?

「一応聞くが、俺達がレテに入る時、目立つ事ようなしてないよな?」

「はい。リンネは目立ちますのでフードを被せて抱えて入りましたし、テランスが捕まった時、一度、関係者の様な者にフードが下ろされましたが、その……女性だと思われた様でして、慌てて顔を赤らめて去って行きました」

 子供の次は女性かよ!この世界にはマッチョな男しかいないのか?

「そのフード下ろしたやつ、ずっと近くにいるんっすよねぇ」

 テオがいやしく包み紙の裏を舐めながら言う。

「テオ、分かるのかよ。流石だな」

 ストーカーか?いや……。

「張られてるのか?」

「はい。ですが、リンネ様個人目当てなのか、オブシディアンの宰相目当てなのかが分からず、とりあえず泳がせています」

「なんで対象が俺限定なんだよ、キリル。まあ、悪くない判断だが」

「私は捌い……シバいて吐かせればいいと言ったんだがな」

「捌く気満々だな、ラビス。お前は最終兵器だ。今はメガネは外すなよ」

「ふふっ、どうでしょうね……」

 おいおい。なんで嬉しそうなんだよ。

「宿屋のねーちゃんが言うにはさ、そいつ首長の犬だそうッスよ。しかもなかなかの役職だって言ってましたねッス」

「何かチャラさが不安定だぞ、クレタス。普通に喋れるんなら使い分けろ、無理するな。しかし、何がしたいんだよ、ここの首長は。見張らせるなら下っ端でいいだろ?……あ――もしかして、見張ってる訳じゃないのかもな」

「と言いますと?」

 ニックスが目を細めて身を乗り出す。


「幾つか確認したいんだけど、俺らを監視してる奴は、そいつだけだよな?」

「そそ、俺ら普通に買い物とかしてるけど、別に見られてる感じ、ないっすね!」

 テオがテーブルについた両腕に頭を乗せ、楽しそうに答える。

「俺の出待ちかよ、気持ちわりぃ」

 思わず出た本音に、向かいに座るキリルの眉間に皺がよる。こいつ、割と顔に出やすいのな。

「分かった、ありがと。あとニックス、首長の使いって奴は、俺一人で来いって言ってなかったか?」

 肘をつき、隣りのニックスの顔を正面から覗くと目をそらされる。図星だな。

「はい……。一人で行かせたくなかったので伏せてましたが……すいません」

「ああ、いいんだ。心配するな。俺らを殺るつもりならレテな入った時点でってやってただろう?その後も、放置してるしな。首長は単に、俺個人に興味があるだけだと思うよ」

「一人では行かせませんよ」

 過保護な奴め。


「まあ、聞いてくれ。多分、首長はそもそも俺らに喧嘩売るつもりなんかなかったんだよ。なのにテランスの部下がやばい仕事を取ってきたんだろう?俺のアンクを奪う事、だ。それはオブシディアンに喧嘩をふっかけるのと一緒だ。だから、テランスが尻拭いとして参加したんだろう」

「尻拭いとは?」

 俺はニックスに、自分の首を跳ねるジェスチャーをして見せた。

「マチューの様子からして、エンキはなるべく戦闘を避けていたように思えるんだ。ニックス、お前を生かしておいたくらいだからな。なのに、あの傭兵、えらく好戦的だったろ?」

「……ああ……なるほど。我々は侮られてたのですね。あの時、我々はテランスに全て消させられる予定だったんですね」

「そうだ。オブシディアンに知られないほど跡形もなくな」

「テランスの奴……さっさとシバ捌いておけば良かった……」

 ラビスが綺麗な顔でまた物騒な事を言ってる。

「はは、確かに俺たちは甘かったんだ。首領もテランスが無傷で帰って来るとは思わなかっただろうよ。だから慌ててテランスを保護したんだと思う。テランスは相当首領のお気に入りのようだな。まぁ、おかげで俺らはここで療養出来てるし、良かったんじゃね?」

「なるほど……。では首領は何故、リンネ様に会いたがってるのでしょうか?出来れば避けたい所でしょうに。まあ、監視はわかりますが……」

 キリルが綺麗にテーブルを片付け、腰をかける。

「そうだよキリル。首領は余程俺に興味があると見える。だが、気になってるその監視の事だかな、奴は多分、首領とは別口だな」

「「え?」」

「後で奴に接触してみろよ。あ――そうだな、保険が欲しいな。俺が、お前の主、に、会いたがってたってそいつに伝えてくれ。で、テオ。お前、こっそり後をつけるんだ。きっとテランスの所に案内してくれるはずだよ」

「テランスですか?」

「ああ、奴はテランスの同僚か、部下だな。テランスが何か喋ったんだろ?奴は律儀だからな、案内出来なかった事、気にしてるだろうし」

「ああ、なるほど……先生の事、テランスの想い人か何かだと思ったんッスね」

 クレタス。何ニヤついてるんだよ!

「かもな。否定できないとこが悲しいが……」

「じゃあ俺は、テランスの居場所突き止めるだけでいいんっすか?」

「テオ、物足りないか?そうだなぁ……せっかくだから、キリルとラビスも一緒にお邪魔してこい。ラビス、さっき行って来た、首領に指定された場所って、覚えてるか?そこにテランスも一緒に来て頂けるといいなぁ、とかぁ?まあ、ちょっと嫌がっちゃうかもだけどぉ」

 ニックスが、ムッと眉を顰める。

「リンネ、何をやるつもりで……」

「保険ですね?」

 キリルがクソ真面目に確認する。

「ああ、保険だ。殺さない程度に頼むぞ、キリル」

「はい。お任せを」

「いやいや、ダメですよ。せっかく何事もなく過ごせてるんですよ?事を荒立てる事はないでしょう」

 隊長のニックスには悪いが、俺はどうしてもレテの首領に会いたくなっていた。だって、この世界に来たばかりの、俺個人に興味を持つなんて、まず有り得ないから。

 多分、首領は俺の知りたがってた答えを知っている。それはこの先、レジスと戦う上で知っておかなきゃいけない事だと思うんだ。

「ふふふ……楽しくなってきましたね……」

 俺の気分を代弁するかのように、ラビスが不敵な笑みを漏らす。

「こら、ラビス!メガネを外すな!」

 ニックスが珍しく苛立ってるな。

「ニックスは俺と来てくれ。本来ならまだ万全じゃないから休ませときたいけど、お前がいないと、俺は……」

「あ、いえ。すいません。気を使わせてしまいましたね……って……リンネ……」

「何かあった時は頼むからな!頼りにしてるよ」

「…………了解しました」

「あ、せんせー!俺は?」

 あ、そうそう。こいつには一番重要な役目を頼まないといけない。

「クレタス、お前にはダイフクを頼む」

「ダイフクですか?」

「ああ。俺さ、この場所から、まだ一歩も外、出てないんだよ」

「あ――それは、わかんないッスね、道」

 物分りがいい。

「退路へのナビを頼む。迷子になりたくないんだ。あと、荷物も頼めるか?」

「了解しました。いいデートスポットを見つけたんっスよ。眺めは最高だけど、人目に付きにくい場所!」

 何に使うつもりだったんだよ、クレタス。

「じゃ、準備して首長に挨拶しに行くとするか!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ