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安心する場所

 誰かと手を繋いで歩いてみたい。

 優しく見つめられてみたい……。

 それはお母さんでも、お父さんでも、いつか会えるかもしれない誰かでもいい。

 ……夢でもいいと思ってた。

 でも、それも叶わないから。

 せめてこの小さな子の願いを叶えてあげたいの。

 この子の幸せが私の幸せになりますように。


「代わるぞ、マチュー。そいつ重いだろ?」

「大丈夫、俺は昨日、十分過ぎる程寝たからな」

「だから、もう気にするなって。あの宿はどこよりも安全だから」

「いいじゃん、リュカ。やらせとけよ」

「フィービ。いざという時、こいつが剣を握れないと困るだろ?」

「一応俺も数に入れてはくれるのか?お前らだけで十分だと思うが?」

「ははっ。確かにな、お前、鈍臭ぇから」

「……悪かったな、鈍臭くて」

「はぁ……めんどくせぇ」


 グイッと引っ張られる感覚。……よく寝たわ。

『リリ!良かったぁ』

 おはようアイリス。

『本当に、いてくれて良かった。リリ、大丈夫?』

 大丈夫よ。私、立ち直りは早いのよ。

 抱き寄せられてぽんと、背中を叩かれる。

 やっぱり、ここが一番安定するわね。首に手を回しぎゅってする。

「こら、お前。起きてんだろ?って……締めるなよ」

 あら、失礼。


 周りを見る。また、森?それに……。

 あら、あなた、まだいたの?

「なんか、リュカに懐いてないか?そいつ。変な顔でこっち睨んでるし……ムカつくな!」

 イーッだ!ほっといてちょうだい!

「フィービ、こいつは単に安全を図ってるだけだから」

 さぁ、下ろして!歩くわよ。

「ん?やっと歩く気になったか?ならちょっとまて。何か食わせないと」

 大丈夫よ、お腹すいてないの。さあ、いきましょう!マチュー様。

「あっ!アイリス!そっちは逆だ」

 あら、失礼。

「本当、そいつアホだよな。まぁ、せっかくやる気になってんだ、行こうぜ。腹減ったら何か言うだろうよ」

「フィービ。アイリスはアホじゃない。アイリス、これなら歩きながでも食べれるからね」

 え?フィービ?可愛い名前で呼ばれてるわね、この人。恐ろしく似合わないけど。

 歩き出しながらフィービを睨んでるとマチュー様に赤くてツヤツヤの丸い物を幾つか渡される。これは……リンゴ?ちょっと小粒で可愛いわね。食べるの勿体ないわ。

「宿屋の女主人がアイリスに、と。お手伝いありがとうって言ってたぞ」

 まあ!嬉しい!

「それ、妖精のリンゴじゃないか!ん?まさかお前!サーバ様と話したのか?」

「ああ、お前達が店の旦那に怒られてる間にな。そういや、あの人の声、初めて聞いたかも。なんか……アイリスに雰囲気が似てるよな、あの人」

 あら、そうなの?嬉しいわ。

「バカ言うな!こんなやつとサーバ様が似てるなんて有り得ない!ってか、誰のせいで怒られたとおもってんだよ!」

 どうしたの?フィービちゃん。目くじら立てて。

「お前だよ!お、ま、え。首傾げてんじゃねえよ!」

 え?嘘でしょ……。

「なにショック受けてんだよ。信じらんねぇ」

「似てる……か……。嫌な事を気付かせてくれるよな……」

「リュカ!やめろ、似てねぇから!」

 何だかみんな、仲良しになってるわね。

 そうね、困難を乗り越えて絆は深まってゆくのよ。って……。原因、私じゃないわよね?


『リリ、あのね、私昨日とても楽しかったのよ』

 ええ、私も楽しかったわ。アイリスは優しい子ね。元気づけてくれるの?

『あのね!お父様が言っていたのよ。旅を楽しみなさいって。私、その時は意味が分からなかったのだけど、今ならわかりますの!』

 ふふっ。そうなの?それなら良かったわ!アイリスのお父様ってアイリスの事、とても大切に想ってるのね。

『そうですの?』

 だって、可愛い子には旅をさせよ!って言うじゃない?お父様はアイリスに、沢山の経験をプレゼントしたかったのよ。

『私、お父様に捨てられたかと……良かった……』

 こんな素直で可愛い子を捨てるような親だったら、私が引っ掻いてあげるわ。

 ん?リュカスどうしたの?水飲めって?もう諦めたかと思ってたわ。あなたもしつこいのね。……でも、ありがとう。何故かこの水って飲むと元気が出るの。

『リリ、リンゴも食べて』

 アイリスには何か栄養分が必要なのかしら?

『いえ……でも……』

 ならいいわ。これは可愛いからとっておきましょ。

 そっとカバンに詰める。

 あ……今、ちらりとパンが見えたわ。固いから平気よね。カビなんて怖くないわ。…………ホタル、食べる?

『リリ!?』

 は!そういえばダイフクに何もあげてなかったわ!




「あ……何か、リンネ様の口が動いてるっス」

「え?あ、ホントだ。腹減ったんっすかね?」

「もう二日も寝たまんまですしね。……良かった、このままだと噂を信じた奴らが押しかけてきそうで怖かったんだ」

「噂ってあれッスか?眠る森の美女。王子様のキスでしか目覚めないって言う?」

「……面白いっすね」

「……試してみますか?」

「なら、俺やるっすよ。リンネ様なら全然おっけー!」

「テオ。お前、何新しい扉開こうとしてるんだよ」

「なら、私がやりた……やりましょう。年下にやらせる訳にはいけませんし」

「キリル、興奮して猫が剥がれてるって」

「クレタス、お前も素に戻りかけてるぞ」

「何か、このメンツだし、今更な……テオ、抜け駆けは許さないよ?」

「リンネ様、まつげ長いっすよね。起きてる時は漆黒の瞳がくるくる動いて可愛いけど、こうやって寝てると、ホント、人形みたい。肌、すごく綺麗だし、唇ピンクっすよ……」

「「…………ゴクリ」」


 ……んん?視線を感じる。


「じゃ!いっただっきまーす!」

「「あぁぁッ!!」」


 ゴンッ!


「ん――?なんだよお前ら……」

 なんか叩いた気がするが。

 目を開けると間近に顔を赤らめたキリルとクレタスがいた。

「起きたちゃったか……」

「チッ」

 キリル?今、舌打ちしなかったか?クレタスも何かキャラ変わったような?気のせいか?

「リンネ様、おはようございます。と言っても昼ですが」

「ああ、おはよう!キリル、クレタスも!」

 大きく伸びをして起き上がる。

 木の匂いがする部屋は、8畳くらいのやや大きめのログハウスのようだ。幾つかベッドとハンモックが並んでいるから団体様用なのだろう。大きめの丸テーブルに椅子もちゃんとあるが、窓を閉めているせいか薄暗い。ガラスがないからランプの明かりだけだとこんな感じなんだな。

 ちゃんとしたベッドに寝てたようで身体は驚く程軽くなってるが、首が痛い。

 そうか、テオに……。

 首をさすると目の端に映るテオ。床に転がってるが?

「どうしたんだ?こいつ」

「自業自得なんで、気にする事ないっスよ」

「そっか、どのくらい寝てた?俺」

「はい、まるっと二日程。もう三日目ですね」

「まじか……で?ここはレテなんだろ?どういう状況?」

 コンコン……ココンと、木の扉が叩かれる。

「あ、少々お待ちください。帰って来たようです」

 キリルが簡素な扉を開ける。

 スっと入って来たのはラビスと……。

「ニックス!もう動いて大丈夫なのか?」

 ニックスは俺の声に驚いたようで、急いで後ろ手に扉を閉めた。そして直ぐにアイスブルーの目を細め、俺の無事を確認すると蕩けるような笑顔を見せる。本当にイケメンだよなぁ、こいつ。

 俺はベッドから起き、思わず駆け寄ろうとして……。

「グエッ」

 テオを踏んだ。

「あ、すまん」

 しかし体勢を崩した俺を、軽く引き寄せるニックスの腕はしっかりとしていた。支えられた腕にまだ包帯が巻かれてあるのが見え、怖くなる。

「ニックス……っごめん!まだ痛いだろ?」

「いえ。もう大丈夫ですよ。リンネこそ、もう目が覚めないんじゃないかと……」

 見上げると綺麗な顔を大きな手で顔を覆ってしまう。

「おいおい、泣くなよ。寝過ぎただけだから」

 お前が泣くと俺に移るんだよ。

「リンネ様……ニックスさんも、離してっ!さあ、座ってください。昼飯食べながら話ましょう」

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