音の天使
ヒューヒュー…山の上に座っている小さい天使が、綺麗な笛の音を鳴らしています。「…綺麗な音色だな。何という楽器なんだ?」同じく小さな神様が話しかけました。「これは、神様!ご機嫌麗しゅうございましゅうか。」天使は背筋を伸ばしてそう言いました。「はは、その文章は正解なのかな?」そう言われた天使は赤くなって、「//っ~!すみません、みての通り田舎者なもので」と謝りました。すると、神様が「はははは!全然問題ない!お前は面白いな!」と言って笑い出しました。そして、そのせいで涙がでている目を拭って「…ふぅ。それで、その楽器の名はなんというんだ?」と聞きました。「…クライナートンです。」神様があまりに笑うので、天使はふてくされて答えました。「へえ、そうなんだなぁ。ちなみに、君の名は?」「…サンセリテ」やはり冷たく言うサンセリテに対して、神様はまるで何も気づいていないかのように「サンセリテ…心からの誠実さ、か。良い名をもらったな。」と優しく語りかけました。「…まあな。じいちゃんが付けてくれたんだ。」天使はまた赤くなって言いました。そして、「…かわいいな、お前は。…子供みたいだ!また来るよ。」神様はそう言って消えてしまいました。後に残された天使はまだ赤くなった顔が治って無いようでした。
神様が来てから一週間後、(!…ど、どうしよう)サンセリテはクライナートンを無くしてしまいました。(あれは…じいちゃんの形見なのに…!)サンセリテは泣きながらクライナートンを探しましたが、あと一週間たっても見つかりませんでした。もう半分諦めかけていましたが、僅かな可能性にかけて探し続けました。その次の日、神様がサンセリテのもとへ訪れました。「…サンセリテ、どうしたんだ。目が赤いぞ。」神様はもうすっかり疲れ果てているサンセリテに話しかけました。「…実は…」サンセリテはもう考える気力も無くなっていたので、嫌いな神様にあったこと全てを話しました。「…そんなことがあったのか…。」神様はそう言って目を閉じ、何かをブツブツと唱えました。すると次の瞬間、サンセリテが飼っている狼が光りました。「…そこの狼をどかしてみてくれ。」サンセリテは神様の言うとおりに狼をどかしました。するとそこには、あのクライナートンが光り輝いていました。(…え。…クライナートン!?)「神様、これは、どういうことでしょうか。私の前に、あの、クライナートンが!」サンセリテはそう叫びました。「ああ、そうだね。君のクライナートンだ。…良かったな」神様は優しく言いました。そして、うう~…とサンセリテが泣くのを優しく、優しく抱きしめました。「…っ神様!神様、ありがとうございました!本当に…本当に!」サンセリテはそう言って神様に礼を言い続けました。
それから二年後、サンセリテは神様の推薦により“音の天使”になりました。そして、今は陽天使と神様と…クライナートンと共に、綺麗な音をこの世界に届けているそうです。