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罪を重ねし異世界で被る罰の話⑭


「どうですか? 初めて銃を撃ってみた感想は?」


「ふむ、これは非常に強力且つ便利な武器だな。これなら力なき女子供でも、訓練された屈強な戦士さえ容易く殺すことが出来てしまう」


 ニコニコしながら話しかけてきた少女に、王国騎士団長は硝煙を立ち昇らせる拳銃を見つめながらそう返事する。


「くっそ、ふさけやが――」


 ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ。


「ぎゃあああッ!」


「ふざけているのは、どちらの方だ。この薄汚い魔の物が。――女神様、次はこの……サブマシンガンというのを試してみたいのですが」


「はいはーい、いいですよー。景気よくぶっ放しちゃってくださいねー」


 王国騎士団長は少女への確認後、拳銃からUZIという短機関銃へと持ち替える。因みにその銃は、ムキムキマッチョの某有名俳優兼元州知事が色んな有名映画内でよく使っていた代物である。


 それはさておき、王国騎士団長はUZIの銃口を向けて狙いを定めると、これまた一切の容赦なくカリストロスへ向けて銃撃を行った。


「あがああああッ!!」


「――素晴らしい、そして恐ろしい。このような武器があれば、密集した兵など恰好の的になってしまう。こんなものが魔法どころか魔力すら一切用いぬカラクリ仕掛けなどとは、到底信じられない……!」


 目の前で身体中穴だらけになりながら苦しんでいるカリストロスを余所に、王国騎士団長は感嘆の声を漏らしながら、手中にある銃器の性能を讃えた。


 すると、彼の後ろでその様子を見ていた、次の順番であるグランジルバニアの国王が感心したように声を掛ける。


「凄まじい武器であるな。願わくば我が国もこういった武装を揃えたかったものだ。であれば、魔王軍などに易々と城や国を滅ぼされることもなかったであろう」


「陛下……ええ、私もそう思います。これ程にまで高威力で速射できる携行式の飛び道具があれば、もはや白兵戦を専門とする騎士など不要となりましょう。おそらくですが、戦いの在り方そのものが根本から変化してしまうと思われます」


「うぐっ……」


 国王と騎士団長がそういった会話をしている中、普通の人間ならとっくに致命傷で息絶えている負傷を受けて尚、カリストロスは魔人であるが故に死んではおらず、ただ全身から及ぶ激しい痛みに呻いていた。


「痛いかのう、カリストロス? そりゃあもう痛かろうて。しかしここではお主は死ねん。いくら撃ちまくられてミンチより酷い有様にされようと、あっという間に蘇ってしまうのじゃ」


「なッ……!?」


 愉しそうに語った老人の言葉にカリストロスが驚いていると、その言葉通りに蜂の巣だったカリストロスの体が、まるで逆再生されたかのように忽ち完治してしまった。それでも、体に刻まれた痛みの感覚だけは何故か残ったままであった。


「お主、等活地獄というのを知っておるか? そこに落ちた罪人は極卒によって肉体を斬り刻まれるも、涼風が吹くとまた蘇り、また同じ責め苦を延々受け続けるという。それと同じで、お主は何度も何度も痛めつけられて殺されようと、死という救済によって苦痛から解放されたりはしない。因みに気絶したり気が触れたりといった事もここでは出来んので悪しからずじゃ」


「おまっ、そんなの冗談じゃ――」


 その時、ドカンと一際ひときわ大きな銃声が一発鳴ったかと思うと、ついさっき再生したばかりのカリストロスの体が惨たらしく抉られた。それでも死ぬには至らなかったカリストロスが思わず目を向けると、その先では王国騎士団長がまたもや得物を持ち替えており、今度はモスバーグM500というショットガンを手にしていた。


「あ゛あああああッ!!」


「……っと、これは驚いた。何という衝撃、しかし威力の程は申し分ない……。連射できぬ代わりに一発で弾を広く散らせるとは、狩猟や魔獣の駆除にも役立ちそうだ」


「ふうむ、その“銃”という武器には様々なバリエーションがあるのだな。何ともまた興味深い。構造さえ把握できれば、ドワーフの工廠にでも依頼して製造出来ないだろうものか」


「陛下……誠に残念ですが、我々にはもう守るべき国自体がありませんので……」


「ああ、そうだったな……。そこの下劣な魔人によって、我が王国は滅ぼされてしまったんじゃったな……」


「ぐふっ……ううっ……」


「辛いのう、辛いのう、カリストロス。じゃが、こうでもしなければお主は他人ひとの痛みなんて、これっぽっちも理解せんからなあ」


 体をズタズタにされたことで呻吟しんぎんしているカリストロスに、横から老人がわざとらしいくらい芝居がかった口調で話しかける。というか、煽り立てる。


「陛下、次はこのようなものを試してみようと思います」


「おお、これは何とまた物々しい……! 直ちに使って見せるがよい」


 そんな中、王国騎士団長が喜々として持ち出してきたのは、なんとブローニングM2重機関銃などという、あまりに物騒すぎる代物であった。もはや手で抱えて扱う大きさと重量でない為に地上戦闘用の三脚架で固定されており、細長い銃身の横からは12.7x99mm NATO弾がビッシリ並んだ弾帯が垂れ下がっている。


 有効射程は2000メートルを超え、装甲車さえ破壊可能な90年現役の名銃が目に入った途端、散弾による負傷から復活してすぐカリストロスは焦燥と共に声を上げた。


「ちょっ、待――」


 だが、それを掻き消すようにドパパパと重厚な射撃音が響き渡っては、カリストロスは銃弾の雨に思いきり晒される。さしもの魔人たるカリストロスも重機関銃の連射には耐えきれず、その全身を穴だらけどころか粉々に砕かれた。


「なんと! 魔人の体が一瞬で細切れになったぞ!」


「な、なんて悍ましいに過ぎる兵器だ……! これを城塞に配備するだけで、どのような外敵だろうと寄せ付けずに蹴散らすことが可能でしょう!」


 強力無比なヘビーマシンガンの性能と使い心地に国王と王国騎士団長が圧倒されている中、最上級の蘇生魔法でも復活させられないくらいに見るも絶えない状態へ成り果てたカリストロスが、再度その姿を元通りに復活させていく。それでも、修復されるのはあくまで表面上みためだけで、撃ち込まれるダメージの感覚はそのまま消えずに重なっていくばかりだ。


「ぬぐううっ……」


「ほれ、今さっき挽肉にされた筈なのにもう再生してしまったじゃろう? 悪い意味で不死身になった気分はどうじゃ? そもそも魔人としての肉体が下手に頑丈じゃから、ただの人間みたいにサクッと死ねんのが逆にしんどいのう」


「……ああくそ……調子に乗るのも大概に――」


 カリストロスが悪態を口にしようとした途端、それが言い終わる前にまたも何かが自身の体へ飛んできては炸裂、しかも此度のそれは強烈な火炎を撒き散らした事によって、カリストロスは全身を一瞬で火達磨にさせられた。


「あ゛ぎゃあああああッ!!!!」


「ほほう、その銃が飛ばした弾は破裂して更に燃えるのか」


「左様です、陛下。こちらはグレネードランチャーという武器で、用途に合わせて多種多様な爆発物を撃ち分けられるのだとか」


 カリストロスが松明状態になっている中、その痛々しい光景を微塵も憐れんだりすることなく、彼へ焼夷弾をぶち込んだ王国騎士団長がM79という擲弾発射機を手に語る。


「あー、因みに言い忘れておったが、実はここって冥界でな、時間の概念とか物質的な制約などといったものは存在せんのじゃ。つまり、弾薬が尽きる事もなければ、武器が摩耗したり故障する事もない。増してや、今この場にいる連中は永久に自分の順番を“待つ”ことが出来るぞ。なんせ、亡霊故に疲労も空腹もないからのう。いつまでもいつまでも、お主への憎悪と怨恨を全く薄れさせることなく、復讐の時を待ち続けることが出来る」


 燃えるだけ燃えた後、無惨に焼け焦げた体をちょっとずつ再生させながら、こひゅうと声にならない呼吸音を苦し気にあげるばかりのカリストロスに対し、老人は愉快で溜まらないといった様子で話しかける。


「――さて、ここにいる全員がお主への憂さ晴らしを満足し終えるのに、一体どれ程の時が掛るのであろうなあ」


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