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罪を重ねし異世界で被る罰の話⑫


「……ッ! メルティカまで……!」


「いやあ、良いですねえ。その余裕ゼロで焦りまくったゲドゲドの表情。もしスマホがあったら是非、撮影してあげたいくらいです」


 それからシャンマリーも近くへ寄ってきたことで、結果としてカリストロスは六魔将の女性陣三人に取り囲まれてしまう事態となった。


「アハハ! シャンマリーちゃん、それ超ウケるー! 私だったらその情けないカリカリの画像、ゲド君に頼んででっかいポスターとかにしてもらうかなー。そんで魔王城のあちこちに選挙中かってくらい貼りまくったりしちゃうねー」


「ふふっ、それは最高に恥晒しって感じで面白そうですね。魔王様もきっとお喜びになられるかと」


「チッ、ふざけんなよ……!」


 自分を囲んでは好き放題に喋っている女共に対し、カリストロスは残った右腕にFN P90という短機関銃――厳密にはPDWという分類で、人体工学に基づく独特な構造をした、特殊部隊御用達の個人防衛火器――を出現させた。


 手に取ったと同時に、かなりの至近距離から三者全員へ発砲による反撃を試みる。――が、何故かP90はどれだけトリガーを引こうと、うんともすんとも言わず、弾丸が放たれる事はなかった。


「はあッ!? 何で……!」


「あらあら。どうしたの、カリカリくーん。肝心な時に弾切れかな? それとも、銃の故障かなー?」


 どういう訳か、銃が撃てなくなったという状況に困惑しているカリストロスへ、エリジェーヌが追い打ちのように厭らしい笑みで話しかけてくる。


「もしくは、魔力切れですか? ……ああいや、そういえば貴方ってそもそも何かの不調を抱えていたんでしたっけね」


「まあどの道、貴方ご自慢の固有能力イマジナリ・ガンスミスは相性問題で私達には致命傷を与えられませんけど」


「「あははははははッ!!」」


「クソがッ! 馬鹿にしやがって、このアバズレ共――がッ!?」


 全員で笑い者にしてきた三人にカリストロスは言い返そうとするも、エリジェーヌが軽く振り回した大鎌の石突部分で小突かれ、彼はまた地面へと転がり倒された。


「馬鹿を馬鹿にして何が悪いのかなー? んー?」


「さて、でしたら早速、この馬鹿をどのようにいたぶりましょうか? 私は足の爪先から少しずつ細切れにしていくのが良いと思うんですけど」


「おや、何処かのマフィアのやり口みたいで楽しそうですねえ、それ。私の幽糸霊線ファントムワイヤーが役に立ちそうです。――あ、一通り解体したら、それぞれホルマリン入りの水槽に封入して、輪切りのカリストロスにしちゃいましょうか?」


 そんな物騒な内容をニコニコしながら話すシャンマリーの様子に、さしものカリストロスでさえも思わず怖気を走らせる。


「んー、でもその前に私、コイツを火炙りにしてあげたいなー。前にコイツから全身燃やされたもんだから、同じことを同じだけやり返してやりたいんだよねー」


「ああ、そういえばそうでしたね……。でしたら、まずは彼を焼き土下座ならぬ燃やし土下座の刑にして、その後に最低限の治癒を施してからバラバラにしちゃいましょう」


「賛成です。……にしても、酷いですね。絶対にこの男、女性を嬲って気持ち良くなりたいとかいう犯罪者的な変態性癖持ってますよ」


「……まあ、実は似たような事を裏で隠れてやってましたからねえ、彼。私達の姿に変身させたロズェリエ嬢に乱暴して楽しんだりしてましたし」


「うっわ、キモ……。超ドン引きっつーか、マジでサイテーだわコイツ。ついでにまたコイツの体の内側から血の棘生やしまくってハリセンボンにでもしてやろうかなあ」


(コイツら、言いたい放題言いやがって……!でも今は腹を立てている場合じゃない。何とかしてコイツらの前から逃げなければ……)


 地面に転がっている自分を足蹴に井戸端会議のようなノリで拷問の算段をしている女性陣三人に対し、カリストロスは殺意を無理やり押さえ込んでは、逃走する為の手段を必死に模索した。


(でも、どうやって逃げ――そうだ、ロズェリエから渡された緊急離脱用の転移アイテム! アレって確かまだ残ってなかったか……!?)


 すると、ここに来てカリストロスはロズェリエから手製の魔法アイテムを貰っていたことを思い出し、身に着けている軍服のポケットへと手を差し入れた。――しかし、


(な、無いだと!? もう使いきってしまったんだったか……!? そんな筈は……いや、どうだったっけか……くそっ、思い出せない!)


 目当ての品は見つからず、それでもカリストロスは一抹の望みをかけて服についた全てのポケット等を慌てて探しまわった。だが結局、転移アイテムを見つけることは叶わなかった。


「――ん? 何をコイツ、コソコソしながらゴソゴソしてんの?」


「あー、きっとロズェリエ嬢から貰った転移用魔道具でも探しているんでしょう。まあ、それがあったところで既に私が転移封じしてますから意味無いんですけどねー」


「何ッ……!?」


 突如、シャンマリーから告げられた残酷な情報に、カリストロスは動揺しきった顔で彼女を見上げる。


「流石はシャンマリーさん、抜け目ないですね。それじゃコイツが下手に逃げ回らないよう、足首から先は切り取っておくのを提案しますけど」


「うんうん、私もそれが良いと思う。コイツ、どうにかしてこの場から逃げ出せないかってずっと考えてるだろうし、可能性の芽は摘み取っておかないとね」


(拙い拙い拙い! そんな事されたら、本当に逃げ様が無くなってしまう! 畜生、どうしたらいい……マジで奇跡でも起きてくれないと、もうどうしようもな――)


 そうカリストロスが絶望に暮れたその時――突如、彼の目の前の空間に“孔”が空いた。


「……ッ?!」


 空間を波打たせながらいきなり出現した、直径1メートル程のそれは、パッと見るとまるで真っ黒な円であった。


 覗いてみても向こう側が完全に真っ暗で先の様子は一切判らなかったものの、それでも“孔”であるという事だけは何故か一目で認識できた。つまりは、何処か別の場所へと通じている出入り口に他ならない。


「えっ、何これ……? 急になんかその……空間に穴、みたいなのが空いたんだけど……?」


「これ、シャンマリーさんが仕込んだものですか?」


「いえ、あいにく私はこんなもの知らないですが……」


 そしてこの唐突に現れた謎の“孔”については、どうやら六魔将の三人も全く知らないようである。これはもしかしたら、ここから逃げ切るのに利用できるかもしれない。


「……ッ!」


 そう考えたカリストロスは残りの思案を先延ばしにして、ひとまずはこの目の前に空いた“孔”へ逃げ込む為、その場より全力で駆け出した。


「あっ――!」


(ええい、ままよ! よく判らんが、逃げ切れるかもしれないのなら――!)


 そのままの勢いで思い切ってカリストロスは真っ暗な“孔”へと飛び込んでは、先の様子が全く不明な暗闇の中へと侵入していった。


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