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剣と魔法の異世界に現代兵器を持ちこんでみた話 ~イマジナリ・ガンスミス~  作者: 矢野 キリナガ
第11章:ハーメルーナ島編
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海底遺跡に異世界で進入する話⑥


 生物なかみ入りのガラス容器が大量に並んでいたフロアを後にした一行は、そこから少し進んだところで、今度はまた別の意味で変わった景色の空間へと足を踏み入れた。


「……何だ、ここは?」


 新たなフロアに入って幾らか周囲を見回した後、思わずそうルヴィスが口にする。


 そのフロアは、綾美からするとサーバールームという言葉が真っ先に思い浮かんだような、縦長の四角い物体が見渡す限り沢山設置されている場所であった。そんな謎の物体はどれもが幾何学的な模様を描く光のラインを発しており、その用途はただ見ただけで判別することは叶わない。


「おや、これはまたおあつらえ向きというか、実にちょうど良い場所へ辿り着きましたわね。――もしかしたら、招かれたのかもしれませんが」


 すると、一人だけここが何なのか理解しているような顔をしながら、コメットが呟いた。


「というと?」


「ここは資料室か情報管理室にあたる部屋だと思いますわ。こちらであれば、何か有益な情報を得られるかもしれません」


 そう言ったところで、コメットは室内に一歩踏み出そうとした後、今も彼の手を握っている半獣の巫女の方をふと向いた。


「えっと……すみませんが、ちょっと調べものをしたいので今は放してもらってもいいですか? 流石に片手で機器の操作はし辛いので……」


「あ、うん。ごめん……」


 彼女にしては珍しくしおらしいというか、やや戸惑ったようにしながら、今まで握り続けていたコメットの手を名残惜しそうに放す。


「まあ、あの丸い魔導器へんなのがあったフロア辺りから全然、モンスターも見かけなくなったからな。ひとまずは大丈夫なんじゃねえの? まあ当然、最低限の警戒はしておくけどよ」


 周辺を見回しながら言ったハンターに、ジェドも頷く。


「だね。ここには例の整備ゴーレムすら見当たらないし、いたとしてもアイツら無害だし。多分、魔導器がいっぱいあるような場所にはエレメンタルスフィアも寄りつかないんじゃないかなあ。知らないけど」


「さて、それではまずこの辺りから……」


 そんな中、早速フロア内に進んでいったコメットは、コンソールらしきものの置かれた箇所にて足を止めると、それに設けられた魔導器を手慣れた手つきで操作しだした。


 直後、液晶モニターを想わせる表示板に何やら大量の文字列が浮かび出す。それは古代言語によるもののようで、コメット以外の者には碌に内容を読み取ることは出来なかった。そんな中、後ろから様子を眺めていた綾美は、レフィリアだった頃の自分であれば、もしかしたら読めたのかもしれないな、なんて考えを内心抱いたりする。


「ふんふん……ああ、なるほど……では、やはり……」


「コメット、何か判ったか?」


 何やら納得が得られたと思しき独り言が幾つか聴こえてきたことでルヴィスが尋ね、その声にちらりとコメットが振り向く。


「はい、ここはどうやら私の予想していた通りの場所で間違いないようです。ですが、もう少し詳しく調べたいので、あとちょっとだけ時間をいただいてもいいですか?」


「まあ、旧文明の代物に関してはコメットに一任する他ないからな。俺たちは周辺の警備をしておくから、コメットは自分の必要と思うだけ調査に専念してくれ」


「ありがとうございます。調べものが済み次第、手に入れた情報を皆さんに報告しますから、それまでどうかお待ちくださいませ」




 ◇




「――皆さん、お待たせしましたわ。これより報告会を致しますので、こちらの方へ集まってください」


 また少し時間が経った後、コメットに声を掛けられたパーティの面々は、彼から呼び出された場所に移動して話を聞く体勢を取った。


「ようし、ようやくこのよく判んねえ場所が何なのかについて聞けるんだな?」


「ここの変な設備についての真相は判ったのー?」


「ええ、ある程度は。ですが、その前に……一つ、大事な話をしておく必要があります」


 そう言うと、コメットは半獣の巫女の方を向いては、その顔をじいっと見つめてきた。


「ん? なあに、コメット。そんな真剣な目で視てきて……」


「私がこの場所で得た、これから語る話はですね……貴方にとってだけは、知らない方が良い内容かもしれません。ですので、これから私達と一緒に話を聞くか否か、先に決めてもらいたいのです」


「えっ、どういう事……?」


 唐突にそんな話を切り出されたことで、当然ながら半獣の巫女は戸惑った表情でコメットを見返す。


「それを事前に説明するのもまた難しいのですが……とりあえず先に言えることは、今から話す内容を貴方は聞かなくても、何の問題もありません。逆に聞いてしまった場合はこれからの生活において、何らかの支障をきたしてしまう恐れがあります。ですので、私としては聞かない方の選択を推奨いたしますわ」


「何よ、それ……。そもそもアタシは、アルテラス様の導きに従って貴方たちをここまで連れてきたのよ? だとすれば、アタシもまたこの場所にて知り得ることを知っておかなければいけないわ」


「そう考えるのも解かりますが……ここの情報が地上へ持ち帰られることを貴方たちの神が許しておくとは限りません。要するに私が今から話すのは、そういった類の内容なのです」


「………………」


 コメットから深刻な面持ちで告げられたことに、半獣の巫女は黙り込んでは、何やら色々と考えを巡らせる。それから数秒ほど間を置いたところで、


「……結構。それでもアタシは今ここで貴方の話を聞くわ。たとえそれを聞いたことでどんな目にあおうと構わない。だってアタシはこの島の巫女。それが巫女としての運命であるなら、全てを受け入れるまで。その為の覚悟なんて、当の昔から出来ているんだから」


 しっかりと彼の瞳を見つめ返し、半獣の巫女は決意をはっきり口にした。


「……分かりました。貴方がそこまで言うのであれば、これ以上とやかくは告げません。貴方も共に同席した上で、情報の共有をすると致しましょう」


その回答にコメットは神妙に頷くと、彼女から他の仲間達も含めてパーティ全員を見回した。


「では改めて、こちらで得られた情報についてお話します」


 ついにそう言った彼に、全員が余計な口を挟むことなく揃って静かに視線を向けた。


「まず私達が今いるこの海底神殿ですが……ここの正体は私も所属していた、メレシュタリカ神を崇拝する宗教組織、リムンドゥス教団の研究機関、《アイリスムーン》の本拠地たる巨大実験施設ですわ」


「…………ッ?!」


 コメットから告げられた内容に、いきなり突拍子も無い話が出てきたとばかりの反応が一斉にして、一同の表情に浮かび上がった。


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