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剣と魔法の異世界に現代兵器を持ちこんでみた話 ~イマジナリ・ガンスミス~  作者: 矢野 キリナガ
第11章:ハーメルーナ島編
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狂う聖獣と異世界の森の謎の話②


 アマデスの森にてランボスの群れを発見後、四人は実際にそれらが集っているという湖のある地点が直接視認できる位置まで、静かに身を潜めながら近づいていった。


「――へえ、なるほど。アレが噂のロードランボスってヤツか」


 余裕そうにカリストロスが呟いた視線の先、そこには通常のランボスよりも二回り程大きい体格をした、真っ白な体毛を全身に生やす四脚獣のモンスターがいた。


 その額からは刀剣どころか、もはや馬上槍ランスくらいある長大で立派な一本角が伸びている。また普通のランボスと異なる点として、肩の辺りに薄い青緑色をした翼のような形状の突起が左右一対に生えていた。


 まるで麒麟に一角馬ユニコーン天馬ペガサスの要素を付け足したような、実に欲張りで派手なフォルムは聖獣の王などと呼ばれても遜色ない壮麗な雰囲気を漂わせている。


 そんなロードランボスの姿を直に視てカリストロスは、そういや某人気狩猟ゲームにこれと似たのがいなかったか、なんて感想を内心抱いたりした。因みに奈浪信二カリストロスはそのゲームだと、銃剣のような見た目をした槍の使い手であった。


「確かにまあ、それなりの迫力はあるわな。っても、こっちからしてみれば、逆に的がデカくて当てやすいとしか思わないが」


「あんな巨獣を目にして、よくそんな発言ができるな……。自信があるのは結構だが、だったらなるべく一撃で仕留めろよ? ロードランボスばかりに構っていては、他のランボスらの接近を許してしまうからな」


「アホか、俺がそんなしくじりをする訳――ん?」


 その時、視界の先でロードランボスが急にその場からむくっと起き上がったかと思うと、まだ遠くにて隠れたままであるカリストロス達のいる方へ、何故か首と視線を向けてきた。


 それから数秒後、突然両目を真っ赤に光らせたかと思うと、頭を勢いよく振り上げてはいななくように甲高く咆哮し、そして四人の今いる地点へと真っ直ぐ猛突進してきた。


「ちょっ……、おい! アイツ、明らかにこっちの存在に気づいてやがるぞ!? まだ何もしてないってのに、どうしてバレてやがったんだ!?」


 未だ攻撃準備すら始めていなかったカリストロスからの文句に、


「知るか! それよりアレはもう狙撃不可だ! 作戦を変えるぞ!」


 男魔剣士は怒鳴って返答しながら、急いで迎撃態勢に移行した。


「了解! 私と彼で前に出るから、後衛組は一旦下がって支援準備を! つまりは、奇襲失敗時の作戦B!」


 慌ててうしてるうちにも、ロードランボスは巨体に見合わず凄まじい速度であっという間に距離を詰めており、男魔剣士は茂みから飛び出て身を晒すと共に、その手へ赤い魔剣を出現させた。


「ヴァーミリオンヴァイパーッ!」


 続けて、魔剣を振り抜いては、水流のような魔力斬撃を賺さず繰り出す。これで少しでも傷を負わせられれば、あとは呪いの解放により、如何に巨大なモンスターであろうと一撃で葬りされるというもの。


 そうして、真っ向から突っ込んでくるロードランボスにその攻撃は思いきり当たった。――のだが、まるでレインコートに掛かった水滴のように軽く弾かれてしまい、その身に一切の傷を刻むことは叶わなかった。


「何ッ!?」


 その結果に驚かされたのも束の間、眼前に迫ったロードランボスの頭角による突撃を男魔剣士はどうにか魔剣でなす。重い衝撃を流しつつ、受け止めた反動を利用して後ろへ大きく下がった。


「ちいッ……! 流石は聖獣の王、呪力を使った技には耐性があるってのか!?」


 するといきなり暴れ出したロードランボスに感化されたのか、大人しく休んでいた筈である他のランボス達も、その全てが同様かつ唐突に凶暴化しだし、自分達の主に続く形で一斉に駆け込んできた。


 地響きじみた足音を立てて突っ走ってくる、一体一体が重戦車のようなランボスの群れに対し、


「貴方達の相手はこっちよ! ――燧星投戟ッ!」


 別方向から女騎兵が大声と共に魔力を込めて、手にした槍を一本投擲。高めの放物線を描いて投げられた槍は、暴走するランボスの群れの少し手前で地面に突き刺さると、一瞬の閃光を放って着弾点から周囲数メートルの大地を爆ぜさせた。


 それにより発生した轟音と激しく撒き散らされた土砂に、ランボスの群れは反射的に進路を迂回。加えて、その爆発を起こした当人である女騎兵を攻撃対象に定め、五体全てのランボスが彼女を蹂躙しようと襲い掛かって来る。


 そうやって目論見通り、敵対心ヘイトの誘導に成功した女騎兵は、左腕の小盾ヒーターからすぐにまた別の槍を作り出すと、迫りくるランボスの群れの迎撃に取り掛かった。


(さあ、来てみなさい……!)


 容赦なく続けざまに飛びかかってきたランボスを前に、まず女騎兵は闘牛士の如き鮮やかさでその合間を擦り抜けては、怒涛の猛攻をほんの少しも掠ることなく躱しきった。


 逆に突進を避けられたランボスらは、ムキになって更に激しく追いかけてくるものの、それすら彼女はまたもや踊り跳ねるように完全回避し、合わせてついでに槍で刺し返すといった余裕まで見せつけた。攻撃が当たらないだけでなく傷まで負わされたことで、よりランボスは彼女への怒りを募らせていく。


(流石は古代の武器の力。ちょっと前まではランボスなんて一体でもきつかったのに、今じゃ複数相手にしても一人だけで立ち回れる……! あの銀カマキリと戦うのに比べたら、このくらい!)


 そう思いながら、女騎兵はもはや翻弄するようにランボスの群れを往なし続けた。実はやろうと思えば、もっと積極的に攻め込むことも出来る。しかし彼女はあえて避けの方に専念し、攻撃は控えめにして時折りチクチクつつくくらいに留めていた。


 それには勿論、理由があるのだが――すると、度重なる挑発行為いやがらせにより女騎兵へ集中して群がっていたランボスの群れへ、突然あらぬ方向から赤い光の線が何本も飛んできては、そしてすぐに通り過ぎていった。


 直後、全部で五体いたランボスのうち四体が急所をどれも正確に穿たれ、そのまま即死しては地面へ倒れ込んでしまう。それは紛れもなく、離れた位置からカリストロスの撃ち放った魔導式拳銃ガンドルフィンによる援護射撃であった。またその結果は、女騎兵の予め望んでいたものでもあった。


「ナイス、カリスト! 期待通りよ! しかも、わざと一匹残すだなんて、気でも利かせてくれたつもりかしら?」


 小さく不敵な笑みを浮かべて言った女騎兵に、撃ち漏らしたのか、それともあえて撃たなかったのか、何にせよ一体だけ残ったランボスは仲間の急死にこれ以上無く激昂すると、彼女を撥ね飛ばそうと暴れ狂いながら突っ込んでくる。


 それに対し、女騎兵はこれまでの動き方から一転して、真正面から迎え撃つ態勢を取ると、


「魁星天衝――ッ!」


 ランボスの攻撃が届くより先に、首の付け根を槍の突き上げで深く抉り抜き、以前なら敵わなかった筈である聖獣を鋭い一撃の下に葬り去った。


 そうして五体いた通常のランボスが全て倒された一方で、


「くッ……!」


 未だ攻めあぐむ状況の続いている、ロードランボスからの執拗な猛攻を受けている男魔剣士へと改めて意識を向けた。


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